762 安心させます
「いや、お前も生身か――逃げ出したのか? 自分から捕まりに来るとは殊勝な奴だ」
「こんな世界に放り出されても、生きていけません――さっきも変な人達に捕まりそうになりました」
運転手が何かボタンを押して――多分、オートパイロットにした?
こっちに来る。そしてドアを開けた。
私はドアの窓からは視えないように隠しておいたニューゲーム1110を持ち上げ、運転手のこめかみに押し付ける。
「動くな、両手を頭の後ろで組め――チップはこの位置だな?」
カードの挿入口が見える。
「な――っ、貴様!?」
「余計な口を利かず、運転席に戻れ」
運転手は大人しく手を頭の後ろで組んで、座席に戻る。
中に、仲間は居そうにないね。一人で護送か、まあ犯罪者を運んでるわけでもないしなあ。
「〖サイコメトリー〗」
私は運転手の記憶の糸を切って、今の出来事を忘れさせる。
切ってから、私は銃を仕舞って、空いてる座席に着いた。
「お、お姉ちゃんいま・・・」
「しっ」
隣の女の子が私に話しかけようとしてきたけど、私は口に人差し指を当てて静かにして貰う。
「なんだ、ドアが空いてやがる。運転も勝手にオートになってるし、故障か?」
運転手が座席横のレバーを引いてドアを締めた。
そうしてあくびをする。オートパイロットのまま行くつもりらしい。
3人か・・・この人数ならなんとかできるかな。必要なら〈時空倉庫の鍵・大〉に入って貰――って、使えないんだって。
この護送車、私の目的の軍事施設に向かってるな。
ラッキーだ。
とりあえずシャーリーとルジェルナに貰った〈時空倉庫の鍵byベクター〉の中身を調べておこう。
「これはどっちだっけ――シャーリーのか・・・薬が多いなぁ。あ、胃薬」
胃、弱そうだったもんね。
でも、ケーキがホールごと入ってる。
「ルジェルナのは、アクセサリー、イヤホン、花粉症用の目薬、手鏡――ん? この手鏡タッチパネルになって・・・・ちがう、これは・・・周囲の情報を取得できるレーダーかな?」
スパイ装備みたいな手鏡だな。私はタッチパネルを操作。
うん、周囲の地図が出た。人物らしき点も出る。
まぁ、私には〖マッピング〗があるけど。
あ、なんか丸い――これってAI端末?
起動してみる。
『おはようございます、ルジェルナ様・・・・じゃない? 貴方誰ですか?』
「ルジェルナの知り合いなんだけど、質問していい?」
『はい、なんでしょう?』
「この手鏡ってGPS? 使用者の現在位置がバレて追跡されたりする?」
『いいえ、使用者の位置はバレません。それが誰かにバレたら困りませんか? 相手にカウンターされます』
なるほど・・・・確かに。というわけで軍事施設に無事侵入。
AIくんにはしばらく眠っていてもらおう。
倉庫みたいな場所で、護送車から降ろされた。
アサルトライフルを構えた運転手が私達に向き直る。
「着いたぞ、お前たちはこれからここのエライさんのペットとして――」
だけど、そこには誰も居ない。
私は音もなく飛んで、運転手の頭上。女の子たちも念動力で上だ。
〖サイコメトリー〗で運転手の記憶の糸を切って、〝何を運んできたか、何をしていたか〟全部忘れてもらう。
「――。あ、あれ? 俺は・・・なんでこんな場所に・・・・? 銃なんか持って・・・どうした」
私は子供を〖念動力〗で抱えたまま飛んで、その場を離れて、格納庫を出た。
その後、無人の部屋に入る。
女の子たち三人はみんな静かにしてくれている。
でもすごい緊張した表情。小学生くらいだ・・・・絶対に守らなきゃ。
「お、お姉ちゃんだれ?」
「ここ、どこなの?」
「こわいよぉ」
私はしゃがんで三人に目線をあわせて、告げる。
「お姉ちゃんは、みんなと同じ地球人だよ」
三人が泣きそうな顔になってる。
「な、泣かないで・・・声が聞こえると、怖い人達がまた来ちゃうから」
私が言うと三人は歯を食いしばったり、口を手で抑えたり、ぬいぐるみに顔をうずめたりして嗚咽を我慢したり、聴こえないようにした。
「大丈夫。お姉ちゃんが、絶ッ対――3人を連れて帰るからね」
だけど、帰りの分の〈転移用腕輪〉は、私の分しかない・・・・なんとかして3人の分も手に入れないと。
嗚咽を必死に我慢する三人を安心させるため、私は名乗る。
「みんなスウって知ってる?」
「えっ? 知って――あっ!」
「ああっ!」
「嘘ぉ!」
3人が私の顔をみてちょっとビックリする。
「大きな声は出さないでね。私、スウだよ」
女の子が、ピーンと指を伸ばした手で口元を押さえて、ぴょんぴょん飛び跳ねたり。
奥様がしそうな手で、口元を押さえたり。
ぬいぐるみで口元を押さえて、真ん丸な目で私の顔を凝視したり。
三者三様に驚いて、顔を紅潮させた。
私は彼女たちに、自信の笑みを、優しく向ける。
「ね。もう大丈夫でしょ?」
3人がシンクロするような動きで、何度も頷いた。
良かった、私の知名度が高くて。
初めて知名度を上げといて良かったと思ったよ。
「じゃあ行こっか」




