761 世紀末されます
振り返ると、鉄パイプを持ったボロボロの服にボサボサの髪、伸び放題の髭。
「――っち、なにか防具でも着てやがるのか!!」
「え、貴方・・・誰?」
「おい、お前ら、コイツを捕まえて売るぞ」
う、売る!?
――いきなり何言ってんのコイツ!?
辺りから彼の仲間らしい人たちがウジャウジャでてくる。ワラワラとか可愛い感じじゃない。ウジャウジャ20人くらい。
拳銃や、アサルトライフル。電気銃みたいなのを持ってるのもいる。
なんじゃこりゃ。
「アニマノイドか? レプリカントか? 生身の人間っぽいぞ、上玉とは言えねぇが、いい身体してやがる。貴族に玩具として、高値で売れるだろう」
うわー。この一言で、この世界がどういう世界なのか一発で理解できたー!
なんという素晴らしい説明セリフを吐くんだこの人!
でも、なんで生身だって見分けられ――ああ、目が違う。
この人たち、瞳が歯車みたいだ・・・・命理ちゃんの瞳に似てる――そういえば、命理ちゃんのボディって、ベクターの技術で作られてるんだっけ・・・?
なるほど。
とりあえず、逃げよ。
私が浮き上がると、相手が慌てだす。
「逃がすな!!」
「と、飛びやがった!!」
「晩飯代が逃げる!!」
銃を撃ってきた人までいた。
でも、雪花が弾いてくれる。
一応念動力でも、バリアを張っておいた。
夢も希望もない世界だな、ここ。
どうしてこうなった。何を間違った。
・・・・彼ら、どう見ても地球人の子孫だし。
でも、私達の地球でも、小さな範囲だと、かつてはとっても平和だった場所が様変わりしてしまっている地区もある。
――いや今は、この世界の歴史を気にしている場合じゃない・・・。
私は目的を早く終わらせて、この危険な世界を離れないと。
というわけで、バイバイ。
私はルジェルナに教えてもらった、この街の中央にある、基地へ向かう。しかし、中央に有るって教えてもらったけど、三次元空間で中央なのね・・・都市のど真ん中の空に浮いている。
にしても・・・・私は思いっきり上空まで飛んでみた。
――やっぱりだ。
地表どころか、遠くに見える海の中からも伸びてるビル――恐らく海の底も街なのだろう。
「この惑星、多分エキュメノポリスだ」
エキュメノポリスとは、惑星全体を都市が覆い尽くしているタイプの惑星の事を言うんだけど。これ、人口とんでもない事になってそうだなあ。
1つの街の範囲がわかりにくいったら仕方ない。一応壁で区切られてるからなんとかわかるけど。
あと、空になんかぼんやり浮かんでる真っ白な・・・惑星?
双子惑星なんだろうか?
白む惑星の周りを、なんか巨大な装置が囲んでいる。
「とにかく、あの建物にVR訓練施設はあるんだよね?」
私は浮遊している、明らかな軍事施設に近づいていく。浮いている軍事施設から撃たれたりしないか、ちょっと心配・・・。
あ・・・・駄目っぽい。近づいたら機関銃とかがこっちに向きは決めた。
人間がコントロールしてるものではないっぽいから、AIとかかな。・・・・なんにしてもこのまま近づいて侵入は不味いっぽい。
「さて、どうやって侵入するか――侵入経路としてよくあるのは・・・・」
内部に協力者を作る。
物資に紛れ込む。
誰か人物に成り代わる。
穴などを掘って、侵入経路を作る。
人の注意を何処かに向けて、人の意識に穴を開ける――たとえば騒ぎを起こして紛れ込む。
・・・・など。
「内部に協力者を作るのは無理だろう、今からベクターの知り合い――それも軍関係者を作って裏切ってもらうなど至難の技だよね」
というかコミュ障の自分には絶対無理だろう――たちどころに却下。
物資に紛れ込む・・・・誰が何処から物資を運び込むのかも分からない。
誰か人物に成り代わる・・・誰に・・・?
穴をほって、侵入経路を作る――あの施設はお空の上。
唯一出来そうなのは、騒ぎを起こす・・・・これは制限時間が出来そうで怖いなあ。
「――まてよ?」
閃きかけた時――飛んでいる護送車らしきモノのが目に入った。
護送車といっても、犯罪者を乗せるようなバスだ。
それが飛んで走っている。
「あれ、アリスが私の機体に持ってきた変な人形?」
護送車に乗せられている小学生くらいの女の子が抱いている人形――それは〝浮かれたモモンガが、横から殴られて白目を剥いているような人形〟だった。
「まって・・・・あんなバカなセンスの人形が、この世界にもあるの?」
いや、流石に偶然にしてもおかしい。あんな珍妙なセンスの人形が、まるで文化の違う別の世界線にも有るとか、そんな。
なら、あの人形は2000年代初頭――つまり私達の時代から持ち込まれた物のはずだ――じゃあ、あの子は私達の地球から攫われてきた女の子!?
―――いつの間に!?
私は知らない事だったけど、既にこういう被害もでているの!?
(助けなきゃ!!)
思う前に身体は動いていた。
さっきのスラムの人間から、生身の人間がどうなるかは訊いた。
あの女の子は生身のはず。
放おってはおけない。
私は、空飛ぶバスへ近づく。
そしてドアを叩いた。
ぎょっとした表情になった運転手――眼が歯車っぽいから多分アンドロイドかデータノイド?
「な、何だ貴様!!」
バスの中から、籠もった声が聴こえてきた。
護送されている地球人の女の子たちが、一斉に私を視る。
3人もいた。――しかも、みんな小さな女の子じゃないか。
私は運転手に向かって、自分の顔を指し示した。
――ほら、生身の女だぞ、どうすんの?




