760 出発します
アイビーさんに出発の日程を告げると「クナウティア旗下全員で送り出す」とか言い出した。
私のファンも、配信に詰めかけたり、プレイヤーとして式典にやって来たり。
単身ベクターの世界に行くということで、私の仲間もみんな集まってくれた。
惑星フェロウバーグの真昼、クリストアギュイユから出発することになったんだけど、外には、クナウティア艦隊の艦が大量に浮いている。
ストリーマーズのみんなや音子さんも、ヒナさんもいる。
「スウ、絶対帰ってくるんやで!」
「スウちゃん、待ってるわよ!」
ストリーマーズのみなさんも、こちらを心配そうに見てくれてる。
コハクさん、リあンさん、オックスさん、さくらくんも声を掛けてきた。
「スウさん、無茶しないで下さいね」
「帰ってくるのよ?」
「安全マージンは十分取るんだぞ」
「スウさん・・・」
「スウねえちゃん!」
「スウさん! 向こうで死んだら、復活難しいって――死んじゃいやですよ!?」
綺怜くん、綺雪ちゃん。
「コケ・・・!」
リイム。
頭と背中にケロりんと、ドラ子が乗っている。
「鈴咲様」
アルカナくん。
「スズっち!」
「スズ・・・」
「スズっちさん」
「スズっち待っとるで」
チグ、カレン、フーリ、みかん。
「死ぬなよ」
「君ならできるよ」
「待ってるぜ」
「もう一度、元気な顔をみせるんだ」
笠木くん、十十くん、茅野くん、本郷くん。
「行ってらっしゃいまし」
「返ってくるんだぞー!」
「帰ってきてくださいね」
西園寺さん、黒田さん、御子柴さん。
「スウ副社長」
「スウの姉御」
江東 桂利さん、甘利さん。
「スっちー! 帰ってくるんだよ!!」
「本当に頑張ってね」
「スウちゃんが失敗するわけ・・・ないよね」
プリティ・ギルティちゃん、香ナイトさん、鳳ヘプバーンさん。
ユーもいる。
私が見ると。そっぽ向かれた。
あまりにも無茶するんで、ちょっと怒ったらしい。
遠くで、マイルズ、アレックスさん、ヴィック、マリさん、柏木さんが敬礼してこちらを見ている。
私は胸に手を当てて、お辞儀をした。
マイルズも「お前が行くしかないとは・・・」と悔しそうだった。
他人に譲渡できない印石だったら困るからね。
リッカが私に寄ってきて、小太刀を差し出す。
「わたしの愛刀だ、持ってけ。――だけど貸すだけだ。家宝だからな、必ず返せ」
「分かったよ。必ず持って帰ってくる」
「うむ」
私が腰に小太刀を差すと、リッカが、腕を組んで何度も頷いた。
最後にアリスが、私に寄ってきた。
「スウさん・・・これクラスのみんなからの寄せ書きとお守りです――絶対帰って来て下さいね」
「そっか・・・・クラスのみんなも」
私が手帳とお守りを受け取ると、アリスが抱きついてきた。
「敵陣に乗り込んで、周りに味方が居ない・・・・凄く危険だって訊きました。だけど、必ず――必ず帰ってきて下さい」
「うん、絶対帰ってくるよ。約束する!」
アリスがちょっと泣いている。
私はアリスの背中を軽く叩いて撫でた。
私はみんなを見回す。
私の友達や仲間・・・・増えたなあ。
「では、そろそろ」
アイビーさんが私へ歩いてきた。
「はい!」
私は用意された部屋の中央に向かう。
安全確保のために台座にカプセルがあって、私はそこから転移して、ここに戻って来る。
このカプセルには、空気以外の物を入れてはいけないという事になっているそう。
常時カプセルを警備する兵を置いて、数人掛かりで監視。私の帰還の安全を、絶対に確保してくれるって言ってた。
今回はバーサスフレームは持っていけない。
「プレイヤー、スウに敬礼!!」
兵士さんや集まったプレイヤー、私の仲間たちが一斉に敬礼した。
私は答礼を返す。
やがて腕を下ろすと――カプセルに入る。
カプセルに入ると、最後に、脇の下のホルスターに入れている頼りの相棒ニューゲーム1110を取り出して、スライドを引く。薬室に弾丸を送り込んで、弾丸が準備状態なのを確認。マガジンを抜いて一発追加。
よし。
私はホルスターに相棒を戻すと、顔を挙げてみんなに手を振って、みんなの顔を見ながら、腕輪を作動させた。
視界が切り替わった。
衝撃とかはなかった。ただ静かに視界が切り替わった。
「ここが、ベクターの世界?」
未来的な都市だ。丸いデザインの建物が多かったり、浮いた建物があったり、車も空を飛んでいる。
ただ、銀河連合ほど整然としていない。雑然としている。
壁にはよく分からないポスターが一杯。
ポスターの上にポスターが貼られ、上のポスターもボロボロで字も判別できない。
それから、地上が汚い。ゴミだらけだし、路地裏を見れば下水みたいな水が、パイプから吐き出されて、それが路地裏の地面に当たり前に垂れ流し。
悪臭が凄い。
ヘドロの匂いとか、卵の腐ったような匂いもするし・・・・これ、どこかで硫化水素が発生してないか・・・?
〖毒無効〗で良かった。
私は一応、雪花のヘッドギアを展開しておく。
まあ、ほど近くに人間がいるから大丈夫だろうけど。・・・・いや、この世界ホモ・サピエンスはいないんだっけ? データノイド?
でも、なにかヤバ気な薬でもやってるのか、シャッターにもたれたままタバコみたいなのを持って微動だにしない。
レプリカントかアニマノイドなんだろうか?
機械の身体用のドラックとかあるのかな?
私は、さらに周辺から情報を得ようとする。
空に浮いた建物はなんだか貴族の宮殿みたいな感じだけど、私の今立っている地上は、スラムという感じ。
なんだろう、地上はサイバーパンクっぽい世界かも。
「とりあえず、ルジェルナとシャリーから貰った〈時空倉庫の鍵byベクター〉の中身を確認しよう」
私が貰った指輪を作動させると――後ろから後頭部辺りに衝撃が来た。
えっ!?




