759 決意します
「じゃあ、誰かが乗り込むしかないんですね」
私だな。
「まさか貴女が行く気ですの?」
「多分、私が一番生存率高いと思うんですよね。というかそのVR訓練、私でないとクリアできない感じがします」
「なるほど、つまりこちらの人間を卒業してVR訓練場をクリアしたのは、貴女ですのね」
「ま、まあ」
「なら妥当ではありますわね。わたくしも貴女がクリアしたというVR訓練に挑戦してみようかしら」
「あと、私が〖協力〗を使わないと駄目なのに、〈奇跡〉みたいな記憶の糸がないタイプの印石だったら困るし――」
「記憶の糸?」
「いえ、なんでもないです」
〖サイコメトリー〗の仕様は黙ってよう。
「あちらの宇宙に行くなら尋常の方法では不可能ですわよ。わたくしたちが持っている転移装置、わたくしとシャーリーの転移、つまり2回分を差し上げてもよろしいですけれど。誰か1人が、行って帰ってくる分しかないですわよ」
いや、帰ってくるだけなら。
「帰ってくるだけなら、私のペットというか息子のリイムがアポートは、時を超えても引き寄せられ――」
「多分、その方法では帰ってこれないですわ」
「えっ・・・?」
「以前わたくしが貴女を仕留めたと思った時、そのリイムちゃんの〖アポート〗で、貴方がたの地球に引き寄せれたのでしょう? ――だから私に撃たれた時。逃げられたそうですわね?」
「は、はい。当たりです。――怖かったですが」
「怖かったのでしたら、それは良かったですわ」
良くないです。
「でもそれは、恐らくこの銀河と繋がった過去だから引き寄せられるのですわ」
「そ、そうなんですか・・・?」
「貴女が行くなら言っておきますけれど、宇宙連合にも似たスキルを持つ方がいましたの。しかし彼は銀河連合の宇宙から、宇宙連合の宇宙へは物を引き寄せられなかった。なぜなら時が繋がっていないから」
「じゃあ、リイムの〖アポート〗じゃ・・・」
「恐らく、引き寄せられませんわ」
「そ・・・そうですか・・・・これは実験することもできないし」
「それに、わたくしと貴女が初めて戦った時、リイムちゃんが引き寄せたのは、モニターで見ていた貴女ですのよね?」
「はい」
「では、見えない貴女を引き寄せるなら、どの貴女になるのかしら。連続する時間の何年何月何日何時何分何秒――どの貴女を引き寄せると言うんですの?」
「・・・・たしかに」
というかリイムが対象を見ながらでないと引き寄せられないのって、こういうのが原因だったのかな・・・?
「という訳で、リイムちゃんのスキルに期待するのはお止しなさい」
「分かりました・・・・じゃあ〖仲間〗という仲間にしたMoBを召喚するスキルも?」
「それは、恐らく発動すらしないですわね」
「・・・・なるほど」
ルジェルナが腕輪を撫でると、〈時空倉庫の鍵〉の空間の歪みが現れた。
私の〈時空倉庫の鍵〉と同じ物だ。もうゲットしたのか、流石速い。
「持ってお往きなさい。これがわたくしたちがあちらに帰るための装置ですわ――良いですわね? シャーリー」
「も・・・もうどうせ戻れない。構わない」
私はルジェルナから腕輪を2つ受け取った。
というかシャーリー、自分が帰る装置をルジェルナに預けてるとか・・・・どんだけルジェルナを信用してるの。
もはや一心同体って感じ?
ルジェルナは私に腕輪を投げて渡すと、伸びをする。
「そうだ、〈時空倉庫の鍵・大〉に入ってもらって、クレイジーギーグスのみんなで行くとか・・・・」
「だから時空系は無理だと言ってるじゃないですの・・・。これも差し上げますわわたくしの使っていたベクター世界版の〈時空倉庫の鍵〉ですわ」
ルジェルナが投げてよこしたのは、指輪。
こっちの〈時空倉庫の鍵〉は腕輪なのに、向こうでは指輪かぁ。
「あ、ありがとう!」
私は、荷物を幾つか移動しようと、指輪を発動させようとするけど、
「あれ? 作動しない?」
「だから時空系は――スウさんは、結構おバカさんですの?」
言われて、ちょっと頬が熱くなった。
「それはベクターの世界でないと開きませんわ。わたくしの使っていた道具が幾つか入ってます。それも差し上げますわ。もう取り出せないですし」
「わ、私のもあげる」
シャーリーも指輪を渡してくれた。投げたりせず手渡し。ちっこくて柔らかい手だった。
「さて、シャーリー行きますわよ」
「じゃ・・・じゃあ、い・・・いくか」
「どこに行くんですか?」
「勲功ポイントを貯めに、ですわよ」
「えっ、2人も勲功ポイントを稼ぐんですか!? バーサスフレームを買うとか!?」
「き・・・・機体は、こっちのバーサスフレームより、私達のAUⅢの方が強い」
「問題は補給ですのよ、補給。――武器はこちらの規格に統一しましたし、エンジンも光崩壊エンジンというのに換装しましたので、推進剤なども必要ですわ」
「な、なるほどです」
「軍所属ではなく、ストライダーというのを選ばせて頂いたので、仕方ありませんわ」
言いながら、ルジェルナはシャーリーを引き連れて部屋を出ていった。
私は受け取った腕輪を握りしめた。
「じゃあ・・・私も行こうか・・・ベクターの世界へ」




