745 アイステイル行きます
◆◇sight:鈴咲 涼姫◇◆
「入れ――ゾーン!!」
❝やっちまえスウたん!❞
あっ、凄い。いつもより深い!
いらない情報がうっすら影のように残ったりしない。
『Ai’sにお任せ下さい、マイマスター』
なるほど、これがAi’sの力か!
『駄目だ、豪傑隊で押さえられない!』
『なんなんだこいつは! 範囲兵器の火薬庫か!?』
「臨界黒体放射、一斉掃射」
❝・・・砲門の数よ❞
「いけ、大型クラスター爆弾」
❝やべぇ数の小型爆弾が飛んでったぞ・・・・これ、ルルアの衛星軌道に宇宙船停められなくならん?❞
「宇宙用・燃料気化索薬」
❝なんかロープに並んだ燃料気化爆弾が・・・一斉に爆発した!!❞
❝燃料気化爆弾って粉塵爆発なのに、なんで宇宙で使えるんだよ!❞
❝知るか超科学の産物なぞ!❞
『それ以上やらせんっ!』
「この声は、羽瀬川 ナズン?」
『その巨大な機体、今度こそ強力な機体だな? ――頂いた! コピーだ、アウェイクン!!』
AUⅢの姿をしたアウェイクンの目が怪しく光った。
そしてアウェイクンがコピーしたのは、アイステイルだった。
「・・・・」
❝・・・・❞
『なに!? その巨大な機体は別腹なのか!? ――ぐわっ、何だこの機体は!? 前のクズ機体よりさらに操縦が困難だぞ!?』
『マイマスタァ! アイツ、またあんなこと言ってます!』
イルさんが泣きついてくる。
そしてナズンを振り返り、いけないお指を立てて『F*ck you!! F*ck you!!』とか言ってる。
バラが咲くからやめときなー。
それより、私より先に、ナズンにアイステイルを使われるのはシャクだな。
私はアイステイルと、ビスカムアルバムのドッキングを切り離――。
『今回は、他の機体が無いわけではない! その巨大な方を頂いてやる! コピーだ、アウェイクンッ!』
またもアウェイクンの目が光った。
『よし、今度こそ頂いたぞ!!』
私はアイステイルと、ビスカムアルバムのドッキングを切り離した。
『これさえ貰えば――!』
「ビスカムアルバムには、弱点が有ってね」
『弱点!?』
「多対一を、想定しすぎて、一対一に滅茶苦茶弱いんだよ」
❝多対一は、一対一が増えてるだけなのに、どういうことだよ❞
❝弱い、弱いとは言っていない❞
私はアイステイルの加速を生かし――え、速!?。
時間があんまりなかったんで、慣熟訓練とはいかなかったけど、かなり練習しておいたけど、全力出すとこんなに速いのか。
とにかく、一気にビスカムアルバムの懐に入った。
「〈臨界・励起翼〉!」
ビスカムアルバム相手だと、相手がでっかすぎるんで、いきなり〈臨界・励起翼〉で真っ二つにした。
『おのれ、女ァァァァァァ!!』
ん?
赤いAUⅢが近づいてくる。
急いでビスカムアルバムに戻――あっミサイルがいっぱい飛んできた!
これ、思考誘導ミサイル?
『あの時は世話になった』
「――あの時? どの時? ――あっ、あの星雲のコロニーにいた?」
『そうだ』
「よく生きてたなぁ」
というか貴方、喋れたんだ?
昔の機体は銀河連合と通信できなかったのかな?
『悪運は強い方でな――さてあの時は2対1だったが、今回は1対1だ。あの時のようには、――なに!?』
私は「『踏み込みが足りん!』」とか叫びながら、ミサイルを切り払っていく。
「――悪いけど、最新鋭機貰っちゃったんだ」
私は、アイステイルを低速めにして、斬ったミサイルを蹴りながら結構ジグザグに飛んでいると、謎のエースが驚愕した。
完全ではないけど、慣性を和らげてくれるからこんな動きができる。
『宇宙で、なぜそんな動きができる!?』
「慣性ダンパー、完成していたのだ」
『どういう理屈だ、その装置は!?』
「私が聞きたい」
❝慣性ダンパー、ほしいよなぁ❞
❝16世代機めっちゃ期待してる。運営はよ❞
赤いAUⅢが、私の後ろについてくる。奇しくもドッグファイトだ。
『だがこちらも、最新鋭のAUⅣだ』
ああ、それAUⅢじゃないんだ?
『簡単には負けんぞ!』
❝どっちも最新鋭だけど、バーサスフレームの方がずっと弱いんだよねぇ❞
こっちが弱いと言っても、使いよう。
私はぐんぐん加速する。
『加速では、お前の機体とAUⅣはさほど変わらんぞ』
ほんと、アクティブアクターは高性能だな。
量産機が、最高の加速を持つ私専用のアイステイルと変わらない加速とか。
「だけどこっちには慣性ダンパーがある」
ドッグファイトでは、速度やらも大事だけど、何より相手の内径の中に入ること。
「アイステイルに、宇宙でのドッグファイトで勝てる機体は、ないよ!」
赤いAUⅣが後ろから撃ってくるけど、私は慣性ダンパーを切ったり点けたりして左右に移動。
❝煽ってるみたいw❞
こう機体を横倒しにして、推力偏向ノズルを使い、〝右に滑る~、止まる、左に滑る~、止まる〟を、繰り返す。
『宇宙空間でなんという動きを! だが、そのゆっくり停止する瞬間が狙い目――』
〝右に滑る~、右に滑る~〟
『ちぃ!』
「同じ動きばっかするわけ無いじゃん」
そうして相手の内径へ入り――背後を取って、エンジンを爆散してあげた。
『くそっ、またしてもぉ・・・・!!』
◆◇Sight:永遠の勝者◇◆
オーレリアは頭上に映し出される、戦場の大まかな様子を眺める。
通信士が背後を振り返り、上官を仰ぎ見た。
「第5中隊壊滅――第6中隊、敵の旗艦を止められません! ――」
オーレリアが戦場の様子を睨んだ。
「なるほど、左舷も食い破られ始めている・・・か。あの中をよくぞ。――よほど、勇敢な将と兵の精鋭がいるらしい――ついに兵站を攻撃し始めたか!」
「――オーレリア少将!」
振り向く通信士の眼に驚くべき光景が映った――いつもは静かな少将が、歯ぎしりをしていたのだ。
「〝魔王〟め」
ブリッジに「魔王?」「魔王とは?」というざわめきが広がった。
「・・・・撤退だ――これ以上、無駄な被害を出すな!」
「し、しかし!」
「まだ損耗はそれほど酷くありませんが!?」
「我々はまだ戦えます!!」
通信士はオーレリアの口からでた命令――まだ余裕だと言い募ろうとするが、
「撤退だ! 早くしろ!」
オーレリアが言葉を曲げることはなかった。




