742 始まります
アリスがリッカを見て苦笑いすると、リッカが目をつむって腕を組んで唸る。
「でもアレだな、今回の作戦には、最大の欠点が一つあるな」
「えっ、なになに」
私にも孫氏にもわからない欠点?
私が慌てて尋ねると、リッカが私の顔を指差した。
「スウが戦わない」
「あっ、それはそうですね。最強戦力が引きこもってしまっては・・・」
「え、それは・・・・」
『敵勢力と接触します!』
接敵準備の報告が入った。
「じゃあ行ってくるぞ!」
「行ってきます!」
2人は割り振られた軍の方面に向うようだ。
私は二人に手を振って、命令のためにウィンドウを開いた。
戦艦がいっぱい▲で表示された。
こんなこと思ってたら怒られるかもだけど、立体ボードゲームみたい。
「スウ総大将、敵先頭――右舷、25万キロ向こうです」
コハクさんに言われれ、椅子に身を預けて、まだ星しか視えない宇宙を眺めた。
やがて左側で幾筋もの光の線が交わり始めた。
「始まった」
左で起こる光の線。
パッ パッ パッ
あの光の向こうで、激戦が行われているんだ。
私はその光をしばらく見つめていた。
ちなみに、まだ車懸りにはしていない。いまは普通の立体鶴翼陣だ。
幾筋も幾筋も、光の応酬――そこで、ふと違和感。
「―――ん?」
なんだろう。
こっちから パッ こっちから パッ あっちから パッ
こっちから パッ こっちから パッ こっちから パッ
おかしい、相手の攻撃が薄い。幾らこっちの人数が左側に多いと言っても、あっちからの攻撃が少なすぎる。
これ、敵も戦力を偏重させてる? て言う事は、敵はデブリ帯が本命?
だけど、左に遮蔽はないよ・・・・? どうやって左での衝突を凌ぐつもり? ――左側が瞬く間に殲滅されて、後ろか横を取られるよ?
すると、私の前にいた女性通信士さんがこちらを振り返る。
「スウ総大将に、ウェンター大将から、緊急入電!!」
「つないで!」
なんだ。現場では、なにが起こってるんだ!?
『スウさん、不味い! 敵勢力がデブリや小惑星と共に進軍してきた! さらに恐らくルルアで量産したであろう大量の無人機!!』
敵の数が多いと思ったら、やっぱり無人機で人数不利を補ってきたか。これは予想通りだ。
でも、
「それって、相手がデブリや小惑星を盾にしてるって事ですか!?」
『そうなんだ! そのせいで中々大きな衝突が起こせない! ――うわっ、右舷消火!』
あっ、これアイリスがソルダートの決勝でやってたやるだ!
な、なるほど、どうする・・・。
私は図形を、頭の中でこねくり回す。
横線が縦になったり横になったり・・・・、
「じゃあ――左舷ゆっくりと後退! こちらに敵の小惑星隊を引き込んで! ――そしたら右舷の小惑星を持ってない奴らと、左舷の小惑星を持ってる奴らの間を――リッカの軍に突破させて! ちょん切って! 敵の陣が切れたらリッカは右舷を攻めて、左舷は予定通りヴィックが攻めて!」
敵も横陣だ。
横陣は端から攻める物だけど、端がないなら作ればいい!
敵は前回の敗戦で、結構な戦力を失った。相手は補給が別の時間軸から運んでこないといけないからなかなか補給ができないらしい。だからこっちと戦力差がある。そこを攻める!
あ、ちなみに私は撃墜されたけど、全体ではこっちが勝ったんだよ・・・・勝ったんだからね――ほんと撃墜されてすいません。
私は戦場の動きを3D画面を回して確認しながら――あれ? 右側の敵の一部が急に消えた? 誰かが広範囲攻撃でもした?
「それから、恐らく熱武器が通用しないのがいると思うから、みんなに伝えて! 特に無人機!」
恐らくルルアには黒体工場があったはず。それなら敵の機体にも黒体が塗られ始めてるはず。
そこからしばらく、私の描いた絵の通りの展開になっていく。
よし、これなら――
「スウ総大将!! 右舷の端に突然敵が現れました!!」
「え!?」
「視認もできず、レーダーにも映らないようです!!」
「レーダーは前からあまりあてにならないからわかるけど、視認ができない!?」
私は眩しいくらいに光る、ルルアがある星系の恒星を見た。
あれが有るから、視認はできると思う。
「機体に光を吸収する素材を塗っているようです!」
「真・黒色無双でも塗ってたの!?」
宇宙で潜水艦みたいなことしないで!?
黒体でも、見えるのに。
「スウ総大将、右側が敵精鋭部隊に急襲を受けています! このままでは手薄な右側が食い破られます!!」
こっちの右端が瓦解し始めてる!
「右舷もちこたえられない!?」
「駄目です! 救援要請!!」
どうするどうする・・・どうするどうするどうする。
根性論で耐えてとか言うのは私の役目じゃない。私はの役目は、根性なんかなくても、誰でも勝てる方法を考えるのが役目だ。
何か、何か手は・・・・。
「くそっ・・・・永遠の勝者ぁ!」
私みたいな小娘じゃ、相手にならないのかよ!




