740 アサイン(役割)されます
◆◇◆◇◆
私達は、ベクターをどんどん押し込んでいく。
いよいよ惑星ルルアの衛星軌道まで、迫っていた。
そろそろプレイヤーの間でもベクターが目指しているのが私達の地球であることも噂されていて、沢山の人が集まった。なんとプレイヤー10万人の大軍勢である。こんなに集まったのは、ユニレウス攻略以来だろうか?
私は、自分の戦艦マザーグースのブリッジから惑星ルルア衛星軌道に集まったに戦艦や空母、個人個人の機体が放つ綺羅星の如き光――その壮観な光景を眺めていた。
ソロらしきバーサスフレームを眺める。
「以前は私もああして、プレイヤーの戦艦とかに一人でコバンザメみたいについて行ってたよなぁ」
今は戦艦の艦長である。むっふん。
ちなみにマザーグースの近くは大人気である。乗組員は大人気配信者だらけだし、一番安全な場所って言われてる。ほんとにぃ?
なんて疑心暗鬼していると、ARにウィンドウが開いた。
『やあ、スウくん』
開いた通信ウィンドウ。そこには、
「あー、ユーグレノゾア」
ハワイの伝統的な太鼓、イプをちゃかぽこ鳴らしながら現れたのは連理演算器の一人。
この前暗殺されたユーグレノゾアだった。
『生きとったんかワレ』。まあ、連理演算器は本体が破壊されない限りしなないらしいけど。
『今回は、俺の担当する領域なんだけども、俺の優秀な部下が軒並みいなくなっちゃっててね。そこで君たちプレイヤーに指揮も任せることにしたんだ。今回は参加プレイヤーも多いし、指揮もプレイヤーが良いと思うんだ』
どういうこと?
首を傾げていると、なんかARに文字が出た。
『役割を申請します。総大将申請中、副将申請中、各将申請中』
そうしてウィンドウが私の視界に映ったのは、
◤奪還イベント『ルルアの宇宙。輝く勇士たち』を開始します◢
なんか、クエスト名がいつもとセンスが違う――なるほど、今回はユーグレノゾアのセンスなのかな?
じゃあいつものあのちょっと場違いなクエスト名のセンスは、クナウティアさんのセンスだったのか・・・。
『プレイヤースウに、総大将のアサインが申請されました。
受理しますか?
⇨はい
いいえ
――のこり時間2:58』
「あ、わたし小将の申請が来ました」
「わたしは中将だぞー勝ったぞー」
そんな声がアリスとリッカから聞こえけど、私はそれどころではない。
「いやいやいや、なんでやねん! 総大将はビブレオビブレの人とか軍関連の人にやらせるべきでしょ!?」
私の叫びにアリスとリッカが「ぐるん」と首を巡らす。
「えっ」
「まじで!? 総大将!?」
二人が駆け寄ってきて私のウィンドウを覗き込んだ。
「流石スウさんです!」
「マジか、スウが10万人の中から、総大将に選ばれたか」
「いやいやいや、人選ミスだって。これは断るべき――」
『今回は自由気ままなプレイヤー達に、ちゃんと言うことを聞かせられるのが重要なのさ。なら、君が一番だ』
「えー」
リッカが「だとよ。スウにしかできないだろ」と笑った。
「うーん」
まあ、じゃあ。
『はい』をタッチ。どうなっても知らないからなー?
『スウ様、総大将役割受理、有難うございます』
私は、自分の胸に貼る『無責任艦長』という名札を作りはじめる。そうしていると、表示された文字がゆっくりと消えて――周りに何十というウィンドウが開かれた。
『おっ、作戦会議か?』
『誰が総大将? なるほど、スウかあ』
『スウさん、この度副官に選ばれましたハギモトです』
「あっ、よろしくお願いします」
「アリス、少将ですー!」
「リッカ、中将だぞー」
まあ、ウィンドウに役割でてるから宣言しなくてもいいんだけど。
『さて、ではスウさんはこういう場所が苦手だと思いますので、わたくしが進行してもよろしいですか?』
情報クランを名乗るビブリオビブレの副クランマスターハギモトさんだ。
プレイヤーが多いときにビブリオビブレの人は、ほんと頼りになる。
彼が進行役を申し出てくれるらしい。凄く有り難い。
「はい、お願いします」
『では、役割を割り振るにも大まかな作戦が無いと無理です。まずは大まかな作戦を決めましょう』
「ですね、皆さんなにかありますか?」
『やはりここは基本的な立体横隊で迎え撃つべきでは?』
『だな、それが一番手堅い』
『しかし、敵の方が僅かに戦力が多いぞ。普通の陣形では厳しいかもしれない』
「なるほど」
私は呟いて、戦闘宙域として予想されるマップを眺める。
何も無い空間もあるし、嘗て採掘に使われていた大きな小惑星、その周りにあった採掘ステーションの残骸のデブリ帯もある。
「では、こうしましょう。基本的に立体3列横隊――その代わり、車懸りを使いましょう」
『車懸り!? ――う、上杉謙信の!?』
ウィンドウの向こうの人物達が、一斉にざわついた。
前にダーマスが失敗な使い方してたけど、ちゃんと使えば強い。




