734 ベクター最強の4人
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「ル・・・ルジェルナ、お・・・おかえり」
ルジェルナが戦艦に帰還して、AUⅢから低重力の格納庫の床に降りると、カーリーヘアをボブカットにした少女がルジェルナに「おかえり」を告げた。
ルジェルナが汗に濡れた金髪を払いながら、カーリーヘアの女の子に微笑み挨拶を返す。
「ただいま、シャーイー」
「シャ・・・シャーイーじゃない。私の名前は・・・シャーリー。憶えて」
「だって恥ずかしがり屋の貴女に、ピッタリなのですもの。シャーイーって」
「と・・・友達の名前くらい、言い間違えては、い・・・いけない」
「そうね、わたくしが悪かったわ、シャイ」
「さ・・・さっきより、悪化した」
ルジェルナが、震える小動物のような少女を抱きしめる。そうして無重力の中、宙に浮かんでダンスするように廻る。
「貴女が悪いのよ、そんなに愛らしいから。つい虐めてしまいたくなるの」
「そ・・・そうやって被害者に罪の意識を抱かせるのは、ガ・・・ガスライティングという、悪いこと」
そこへ二人の様子を見ていた、銀髪をポニーテールにした男性がやってきて大きな声を出す。
「貴様らァ!! 作戦行動中だぞ!! 何をじゃれ合っているッ!!」
ルジェルナが、叫んだ男性を嫌そうに見た。
「出た・・・コーレルリヒ。・・・・ほんと煩いのが来た。女の子にはね、こういうスキンシップが大事なのよ。パフォーマンスに関わるの」
するとコーレと呼ばれた男がたじろいだ。
「そ、そうなのか・・・? す、済まなかった」
そんなコーレルリヒの隣に微重力を飛んできた、小柄な少年が苦笑する。
「いや、素直ですか。作戦行動中とはいえ待機ですからね。じゃれるのも良いじゃないですか? それよりルジェルナ、シャワー浴びないんですか? いつも汗もかかないのに直行するじゃないですか」
ルジェルナが金髪をかきあげる。
「そうね、少し汗をかいたし、入ってこようかしら」
「へぇ・・・・目標の危険パイロットは、ルジェルナに汗をかかせるような相手だったんですか?」
「ええ、少しやる相手だったわ」
「銀河連合のメカでルジェルナに汗をかかせる相手なんて、何年ぶりですか?」
「憶えてないわ」
「もちろん仕留めてきたんですよね?」
「当然よ。しっかりと死の恐怖を焼き付けてきてあげたわ――コピーは作られるでしょうけれど、あれなら二度と戦場に出られないでしょうね。気弱そうでしたし」
「なるほど・・・・だと、良いですが」
「じゃあシャイ、一緒にシャワーを浴びましょう」
「こ・・・断る。お前とシャワーを浴びると、大変なことになる」
「全身を隅々まで奇麗にしてあげますわ」
「こ・・・断る――や・・・やめ、はなせ、離せ!!」
ルジェルナが、シャーリーを肩に担いでシャワールームに向かう。
「大丈夫かな、あれ。余計疲れたりしないですか」
「ん? いやスコルよ、風呂はくつろぐ場所だろう」
「――えっ、まあ・・・うん、そうですね」
シャワーを浴び終わった上がった二人、ドアイアーで、ルジェルナがシャーリーの後ろから、シャーリーの髪を乾かす。
されるがままにされながら、シャーリーが静かに尋ねる。
「あ・・・相手、つ・・・強かった?」
しばしの沈黙。シャーリーがどうしたのだろうと思っていると、ルジェルナがポツリと呟いた。
「強かったですわ――」
ルジェルナは静かに続ける。
「――正直、化け物じみていました。・・・・戦闘機の胴体で弾丸をパリィしたんですのよ・・・」
「な・・・なにそれ、・・・反則。――で・・・でも、ル・・・ルジェルナの方が強い」
「当然ですわ。わたくしが負けたりする物ですか――わたくし以上の天才などいませんわ」
「と・・・当然だった。当たり前の然りだった」
「1=1くらい当然ですわ」
「こ・・・恒真命題」
「数学の証明に使っても、宜しくてよ?」
シャーリーがニヤリとする。
「わ・・・私達、宇宙連合が最強の証明に使える」
「けれど、気を付けてくださいまし。・・・もしあのスウというパイロットが死の恐怖に呑まれず、わたくしたちの前に再び立ちふさがったなら・・・・シャーリーは戦ってはいけませんわ」
「ファースト勇者のルジェルナ程じゃないけど・・・。わ・・・私もセカンド勇者」
「それでも・・・ですわ。あれと戦って生き残れるのは・・・恐らく、わたくしだけですわ」
シャーリーが、ルジェルナを振り返る。
「でも、ルジェルナが危ない時は、わ・・・わたしも」
「そんなことには、なりませんわ。させませんわ。わたくしを信じてくださいまし」
しばし、シャーリーとルジェルナの瞳が交差する。
「わ・・・分かった。信じる」
「いいこいいこ、ですわ」
ルジェルナが、シャーリーの髪を撫でていると、コーレルリヒがシャワー室の扉の前で大声を出す。
「おい、ルジェルナ、シャリガキ、いつまで髪を整えている!! 〝ひよっこ〟共を鍛えるため模擬戦をするぞ!!」
「うわ・・・また来た」
「わ・・・私はシャリガキじゃない・・・シャーリー。――私はそんなお寿司のご飯みたいな名前じゃない」
「乙女が髪を乾かすのは、時間が掛るんですわよ!」
ルジェルナが文句を返すと、コーレルリヒが怒鳴り返す。
「黙れッ!! 長い髪をしているからいけないのだ! 短く切ってしまえ!!」
プシュッ っという炭酸ジュースを開封した時のような音がして、扉が開いてシャーリーが出てくる。
そして、コーレルリヒにジト目を向ける。
「さ・・・最低。こ・・・この男、女の命を切れって言った」
「な・・・・なに・・・髪は女の命なのか!? ――そ、それは・・・すまない。・・・失言だった」
コーレルリヒがたじろぐと、後ろでスコルがツッコミの仕草をしていた。
「――いや、素直ですか」




