733 泣かせます
◆◇◆◇◆
一旦、死んだふりをしよう。
いや、倒れて息を止めるとかではないよ?
「ルジェルナ!」
『おや、生身ででてくるとは、いい度胸ですわ。今すぐ殺してあげます』
『*スウ、なにやってる!*』
『*前に出ては駄目なの!*』
『砕け散りなさい〖必中〗』
〈炸薬波動銃〉の弾丸が私に向かって飛んできた。
周りを見回すと、景色がコックピット内じゃなかった。
「大丈夫ですか!? 涼姫様!!」
「コケェェェ!」(ママァァァ!)
気づくと、私の家にいた。
「うん、大丈夫。私、生きてるよ」
私は、ヘッドギアとパイロットスーツを着けたままの自分の体を触る。
着てるパイロットスーツは雪花だ。
「あと、頭さえ潰されなきゃ死なないし」
「涼姫様!! よかった!! ――でも、覚悟ガンギマリは止めてください!」
「コケェ!(言うことが人間じゃないんだよぉ!)」
アルカナくんが私に抱きついてくる。
リイムも抱きつくように、体を寄せてきた。
二人とも困惑してるけど。
というかもう二人共、抱きつくと云うか、しがみついてくるという様相だ。
二人共、涙を零してる。
「涼姫様・・・本当によかった・・・」
「今日はリイムが事務所にいなかったからね・・・・引き寄せてもらえない所だった。危なかったよ」
アルカナ君も、青い顔のまま安堵のため息。
リイムも震えている。
リビングの二人の後ろには、モニターの中に月の裏側の様子。
『これであの危険なパイロットは死んだわね――死の恐怖を植え付けられて、もう二度とわたくし達の前に現れないことでしょう』
フェアリーテイルがコックピットだけになってしまった。
あのフェアリーさんは、スワローさんを改造したものだ。
だから、ずっと、ずっと――VRにこもっていた頃からずっと乗り続けてきた。
私の愛機――相棒。
それが、本当にバラバラになった。
ああ・・・さようならスワローさん・・・・本当に、今までありがとう。
モニターからルジェルナの声がする。
『ではわたくしの用事はこれで終わり。蛾さん、ごきげんよう』
『まて貴様――スウを、よくも―――ッ!』
『リッカ深追いは駄目です!!』
『*・・・スウが死んだの・・・撤退するわ*』
『*・・・スウが死んだわ・・・撤退するの*』
ルジェルナも撤退したようだ。
アリスとリッカは無事だ・・・良かった。
「リイム、〖アポート〗ありがとう」
私がアテナから脱出した時と同じだ。
「コケ!(ママ、あんまり無茶しないでね・・・?)」
「ごめんごめん」
「コケ(生きていてくれたからいいよ)」
「そうだ主様、敵も撤退したことですし、アリスさんとリッカさんにも無事を知らせてあげては? あと配信を見ている視聴者も心配していると思うので」
アリスとリッカの配信を点けると、二人共泣いていた。
『ス、スウ・・・・っ、す、すまん、守りきれなかった、守りきれなかったよ・・・本当にすまない・・・』
『なぜ前に出たのですかスウさん...ウ、ウゥゥゥ...。ウウ、ゥゥゥ...そうだ! 〖時空回帰〗!!』
やば! 二人とも私が死んだと思ってる!
しかもアリスなんか、〖時空回帰〗を使おうとしてる!!
もう10秒経ってるって!!
リッカが鼻声で歯を食いしばり、アリスはしゃくりげから深呼吸を始めた。
私は二人に通信ウィンドウを――開こうとしたけど無理だ。
そういえば前にアイビーさんが、この地球とフェイテルリンクに通信をつなぐのは大変だって言ってたし。
私は起動しているパソコンで――丁度アリスの配信が点いている!
急いでコメントを打ち込んだ。
❝モデレイター(スウ):アリス、大丈夫、生きてるよ!❞
❝モデレイター(スウ):リッカ、大丈夫、生きてるよ。❞
すると、二人の配信のコメントに❝スウが生きてるよ❞って知らせるコメントが大量に流れ出した。
ややあって、コメントに二人が気づく。
『でも、きっともう10秒――スウさんが、生きてる!?』
『スウ、生きてるのか!?』
そして私のコメントを見つけるために、コメント欄をスクロールし始めた。
私は自分の配信にも、無事な旨を書き込んだ。
一斉に流れ出す、安堵のコメント。
私はアリスとリッカの配信に、同じコメントを打ち込んでいく。
❝❝モデレイター(スウ):リイムが〖アポート〗で引き寄せてくれたんだ❞❞
『は、はは、い、いきてた・・・。はは・・・・はははははは・・・・。流石スウだ・・・さスウだ・・・本当にさスウだ・・・』
『生きてたんですね!? 本当ですね!? 安心させるために嘘吐いたりしてませんね!?』
❝❝モデレイター(スウ):もちろんだよ。私は案外しぶといんだぜ❞❞
『そうですか・・・本当によかった。本当によかったよぉぉぉ』
アリスが大泣き。でっかい涙の粒を何個も流して、大口開けてしゃくりあげている。
け、化粧がボロボロになってるから、目の周り真っ黒ですよモデルさん・・・。
❝❝モデレイター(スウ):二人共、本当にごめん。心配かけて❞❞
『いや、生きていたんだからいい』
『本当に、生きてて偉いです。生きててくれてありがとうです』
「ははは・・・そうだ、配信に姿を見せて安心させてあげたい・・・けど、イルさんドローン壊れたのかなあ」
そこでスマホが震えた。見ると、
チグ:スズっち生きてるか!?
カレン:いきてるよな!? 配信コメで言ってたのは嘘じゃないよな!?
みかん:大丈夫!? 配信でなんか大変な事になってたけど!!
グループチャット、『爽波昼's』に心配するメッセージが来てた。
スウ:心配かけてごめん、ありがとう、大丈夫。リイムが助けてくれた。
チグ:でかしたリイムちゃん!
カレン:リイムちゃんもよくやった!
みかん:本当によかった・・・。
親友が温かい。
こんなにも沢山、私を心配してくれる人がいるんだ・・・。
はは・・・私の仲間って増えたんだなあ――そんな場違いな感慨を憶えていると、
「コケッ(ママ、これ。イルさんドローンだよ)」
「えっ」
振り返ると、リイムがイルさんドローンの羽をくちばしで咥えていた。
「おおおおおお! イルさんも救ってくれたの!?」
ただ、イルさんの本体であるフェアリーテイルが破壊されてしまったのでイルさんの反応がない。
でも、配信カメラは生きてるようで。
そういえば私の配信をよく見ると、事務所が映っている。
壁際に寄って、配信に姿を現す。
すると一斉に安堵のコメントが流れた。
❝雪花着てる!❞
❝間違いなく、さっきのスウたんだ!❞
❝よかった復活判定入ってない!❞
❝モデレイター(アリス):ほ、本当によかったです!❞
❝モデレイター(リッカ):う、うむ・・・本当によく生きててくれた❞
「ご心配お掛けしました」
にしても・・・・フェアリーテイル、買い直さないと駄目かあ。
あのルジェルナって人もなんとかしないと、地球が大変なことになると思うし。
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ここまで付いてきてきてくれた皆さんに。本当にありがとうございます。
そして・・・。
評価、ブクマありが――ではなく。(いえ、ありがたいんですが)
この作品をここまで読んでくださった方なら・・・・もしかして作品ではなく、私――毘沙門子子をフォローしておいて下さると・・・。




