732 悪あがきをします
「あ、アルカナくん! リイム側にいる? ――いないか・・・・湘南のトンビと遊んでるのかぁ」
湘南か・・・駄目だ、もう当てがない。
仕方なく、通常脱出装置のレバーを引こうとした瞬間
「えっ、今アルカナくんが、移動中? 配信見てたの!? リイムの方に向かってくれてる!? あ、ありがとう!!」
って、――ルジェルナがコックピットを狙って撃ってきた!
私にはもうなにもできな――
「あっ、そうだ!」
私はフェアリーテイルを変形させる。
『悪あがきを―――』
相手の弾丸は、コックピットの代わりに、変形によって現れた人型形態のフェアリーさんの頭を吹き飛ばした。
再び相手が、フェアリーさんが背中に背負う形になったコックピットを狙って撃ってくる。
これじゃ下手に通常脱出もできない・・・・。
『やめろ、貴様!!』
『やめなさい!!』
リッカと、アリスが絶叫している。だけどルジェルナを発見できないようだ。弾丸の射線から位置を予測しているみたいだけど、ルジェルナはすぐに移動してしまう。
何度も飛んでくる弾丸を、私はフェアリーさんの手足を動かしてフェアリーテイルをわずかに回転させて、ギリギリ弾丸を躱す。
『手足が邪魔ね。潰してしまいましょう』
『やめろ!!』
『やめてぇぇぇぇぇぇ!!』
リッカとアリスが叫ぶ中、ルジェルナが、フェリーさんの手足を吹き飛ばしていく。
やがて胴体だけになって、ほとんど微動だにできなくなるフェアリーさん。
だけど、まだ変形はできる。コックピットの位置は変えられる。
すると、リッカが『そうだ』と言って、フェアリーさんの胴体を持って逃げ出す。
な、なるほど!
『逃がさないわよ!』
『させるか・・・・! 一旦戦艦に退――!!』
ムシャリッカ・ゼロから伝わってくる振動――
『――っ、ロケットエンジンに被弾した!! なんなんだよ、コイツの命中力は!!』
返ってきたのは、ルジェルナの冷たい声。
『そんなに必死に逃げたら、動きが読め読めよ』
わたしは二人に叫ぶ。
「――リッカ、アリス! 二人だけでも逃げて!! 私を置いていけば、アイツは私を狙ってくるから、二人は逃げられる!」
『黙れスウ!! 私とアリスが、お前をおいて逃げられると思うのか!!』
『スウさんが死んだりしたら、わたしはもう生きていけません!!』
「でも、ちゃんとコピーは」
『ふざけるなよ!? お前!!』
『二度と、そんな事言わないで下さい!!』
「ご、ごめん」
『リッカ、スウさんを頼みます――わたしが、時間を稼ぎます!! 散!!』
アリスが合体状態から分離して、ルミライト・ダーリン・インフィニティの後方――ルジェルナに立ちはだかる。
『アリス、お前、視えない相手にどうするつもりだ――!!』
『大丈夫です。盾になるだけです』
『無駄よ、無駄』
「えっ」
私達の進行方向に現れるAUⅢ。
回り込まれていた・・・・! アクティブアクターの性能が、完全にバーサスフレームを上回っている!
AUⅢが、ルミライト・ダーリン・インフィニティの持つフェアリーテイルへ銃口を向けた。
まずい、このままじゃ本当に殺される・・・!
どうする!? ――倉庫の中に隠れる!? ワンチャン誰かがネックレスを拾って出してくれる!? だけどもし誰も出してくれなかったら、私は時のない空間で、永遠に・・・。
『〈炸薬波動銃〉』
リッカが私のコックピットを庇って、抱いて、AUⅢに背中を向けた。
AUⅢの指が引き金を引く。
『〖必中〗』
一撃で砕ける、ルミライト・ダーリン・インフィニティのシールド。
嘘・・・・サンライト・ショーグン・ゼロよりはシールドが弱いとは言え、盾役機のシールドなのに!
AUⅢが再び〈炸薬波動銃〉を構える。
リッカは成すすべが無いのか、私を庇ったままだ。
このままじゃリッカを巻き添えにしちゃう!
その時だった、ノイズ混じりの通信が聴こえてきた。
『*スウを殺すのは私達だから*』
『*私達なの*』
え・・・? この声。
ルジェルナの背後から光線。
『――背後を狙うとは、勇者ではないですわね』
飛んでくる、豚のような金銀の機体。
『――ずいぶん改造されてますけれど、アクティブアクター? どうなってますの』
『*スウ、今の内に脱出を*』
『*今の内に脱出するの*』
そ、そうだ、今のうちに!
アルカナくん間に合って!
『けれど、二人程度、この不可避の終焉のルジェルナの相手じゃないですわ。〖必中〗』
ルジェルナの狙撃がこっちに飛んでくる!!
『〖次元防壁〗』
ルミライト・ダーリン・インフィニティのバリアを一撃で破った〈炸薬波動銃〉の弾丸を弾き飛ばす、〖次元防壁〗。
「さ、流石、滅茶苦茶な防御力を誇る〖次元防壁〗」
『なっ!? 』
ルジェルナの驚愕。
通話状態のままのスマホからアルカナくんの声。
「リイムが見えた!?」
スマホの向こうで叫ぶアルカナくんの声が聞こえる。
ものすごい罵声で、リイムを呼んでる。
リイムが、アルカナくんに気づいたらしい。
(よし!)
私はアルカナくんに頼み事をして、通常脱出レバーを引いた。




