689 出現します
どうする? ――よし。
「流れがないなら、起こせば良いんだよ!! ――いけ、コンパクトミサイル!!」
私は、真下のコロニーの壁を絨毯爆撃。
よし、爆風で粒子の流れが起きた。
『なるほどね。流れを起こせばいいのね。音子ちょっと飛行形態になって』
『ん? なんや? ――涼子、飛行形態や』
音子さんのボンバーヘッドが飛行形態になると、命理ちゃんが、その機首を抱えて――団扇みたいに振り回し始めた!
中にいる音子さん大絶叫。
『ギャーーー!! 君何するんやぁぁぁ!!』
『飛行機は揚力が凄いから、団扇に便利ね。大丈夫、機首を持ってるから、あんまり揺れないわ』
『アホみたいに揺れとるわ!! 「ミンチより酷く」なりそうやわ!!』
『頑張って』
『やめろっちゅうとんねーーーん!』
『でも、あんまり、上手くモヤが晴れないわ』
『空気がないんやから、当たり前やろが!! 君、粒子を混ぜとるだけや!』
『なるほど』
『意味ないから、やめろちゅうとんねん!!』
『でもなんで爆弾だと、ちょっと晴れたのかしら?』
「火薬からはガスが発生するからね。――命理ちゃん、そろそろ止めてあげなよ・・・・音子さん吐いてるよ・・・」
通信ウィンドウの向こうで、音子さんがナイアガラしてた。
ミンチより酷い。――女子として。
でも、ゲロインが出る作品は名作。
命理ちゃんがようやく音子さんを解放。
『釈放された・・・・シャバの空気は酸っぱいな』
涙なしには語れなかった。
『やけど、もっと中央のモヤを晴らしたいな・・・』
『じゃあ――』
フラッと命理ちゃんが前に出る。
『――当機がバリアを張るから、そこにミサイルをぶつけて』
「えっ、大丈夫なの!?」
『ここから真っ直ぐ奥に進むから、そこにミサイルを撃って』
「いやっ、でもっ!」
『本人が大丈夫ゆーとるんやから大丈夫やろ』
音子さんは言うけど、ミサイルだよ!? 殺傷のレベルじゃないんだよ!?
「命理ちゃんが、怪我したらどうするの!?」
命理ちゃんは、私の心配を他所に平然と言った。
『準備万端よ、撃って』
そんな言葉に、音子さん、またたく間に反応。
『よっしゃ――死ねやぁぁぁ!!』
「――音子さん!?」
恨み骨髄の声で、音子さんがミサイルを放つ。
凄まじい爆風が、何度も起きる。
大分、霧が晴れてきたけど、今度は火薬のガスで曇ってきてない――?
『音子、そろそろ』
『往生さらせぇ!!』
「やめーい!!」
私は、ボンバーヘッドを強ボタンキック。
なんとかミサイルが止んだ。
「と、とりあえず大分、モヤが晴れたんで」
アンティキティラが、結構見える。
狙撃開始。
「当てにくいなぁ」
すると命理ちゃんだ。
『当機に任せて』
命理ちゃん、アンティキティラに真っ直ぐ飛んで――
『真空回帰剣!!』
一刀で「ずんばらり」真空回帰剣は、コアとか本体とかガン無視でアンティキティラを真っ二つにした。
こうして天球図も撃墜され、私たちは8体目のボスに向かうのだった。
「と、飛べない!!」
『こっちも、まともに動けません!!』
『重力が強すぎる!!』
『てか、内部にいいるウチ等にまでダメージが入ってくるレベルで、重力が強いやん!』
8体目は予想通り〈狂乱〉ミダスだった。
ミダス自体は余裕のはずだった――だけど、ヤツが居た巨大惑星の重力があまりにも強くてまともに動けない。さらに大気も薄くて、ジェットモードだと上手く飛べない。
以前ダイヤモンドを採掘しに行った、恒星が冷えた惑星を酷くしたみたいな状態だ。
『マイマスター時間がありません。〖壊劫〗発動までの時間が、もう30分もありません』
「うそっ、本当に時間がない・・・!」
このままじゃ、この銀河が滅びる。
すると、命理ちゃんが呟いた。
『もう時間がないのね。・・・・―――スウ、あとは宜しくね』
「え」
『カリギュレイター。〝全力戦闘〟モード!』
命理ちゃんの言葉に、私は物凄く、嫌な予感がした。
わからないけど、なにか――なにか、凄くまずいことが起きるような・・・。
『早く!! ――そう! ・・・・カリギュレイター、ありがとう』
命理ちゃんが、全力を出す。
すると、とんでもない速度で彼女が超重力惑星を飛び回る――しばしの攻防の後、真空回帰剣でミダスを真っ二つにした。
まともに動けた命理ちゃんにとって、ミダス程度は敵にはならなかった。
ミダスを真っ二つにすると、命理ちゃんは地面に静かに着地。しかし力が入らないかのように、真空回帰剣を取り落とした。地面を転がった剣の虚無が消えた。
命理ちゃんは、真空回帰剣を、〝もう要らないかの様に〟、持ち上げることもなく棒立ちのまま、私を見た。
そうして、一言、口ずさむ・・・
『ありがとう』
モニター越しの命理ちゃんが、嬉しそうに微笑んだ。
命理ちゃんの瞳が、ゆっくり遠くを見た。まるでどこか未来を見ているような瞳。そこにある何かを掴み取ったかのように、指を握ると、命理ちゃんは眠るようにまぶたを閉じた。
彼女はゆっくりと、灰色の地面に崩れ去った。
「い、命理ちゃん!?」
『命理、君大丈夫か!!』
『命理ちゃん!?』
『おい、命理!』
「どうしたんだろう・・・? オーバーヒート?」
『寝たんでしょうか・・・?』
『でも、胸騒ぎがするぞ』
音子さんが命理ちゃんを、バーサスフレームの手で掬い上げる。
『命理、起きーや! ・・・・あかん、コイツ返事せーへん。――スウ、ウチは命理を連れて銀河連合基地に戻るわ!』
「うん、音子さんお願い!!」
『―――スウ、アリス、リッカ。後は任せたで、命理の宇宙、救ったってや!』
「はい!」
「わかりました!」
「応!」
音子さんは赤道付近に移動して、ロケット噴射で、なんとか超重力惑星を脱出。
私たちは、ミダス撃破で出現した赤いゲートに向き直る。
「この赤いゲートが、90層のラスボスに繋がるゲートなんだね」
『ですね・・・』
『よし、急ぐぞ』
「うん!」




