688 重います
『こちら撃破できました!』
『こっちもだ、スウとVRで戦った時みたいに袋小路に追い詰めた!』
『こっちもです』
『あー・・・あの恐怖映像か、アーカイブで見たで。ほんと、スウがモノノケやった』
「音子さんまで・・・・なんでモノノケを推してるんですか」
『ええやん。カッコイイモンスターもおるんやし。な、涼子。アンタ、ちょっと脱ぎな』
「なにやっとんじゃ貴様!!」
『別に配信してないんやから、ええやん。すごいでこれ、リスナーが作ってくれたんやけど、完璧にスウのプロポーションを再現しとるんや。配信で見えない部分は、ウチがスウと風呂入った時の記憶を頼りにして、ケツの割れ目まで再現――』
「今すぐ、別のAIにしろ!!」
『なんでやねん』
「お前がなんでだ! いい加減にしないと、こっちこそ、アンタのケツの穴から指突っ込んで奥歯ガタガタ謂わせるぞ!?」
プリティ・ギルティちゃんのマネだ。どうだ、怖いだろう。
『なんやその嬉しいサービス』
「モノノケはお前だ!!」
私はモノノケを言葉のナイフで斬りつけ、暖簾を腕で押してる感覚を味わいつつ、〈粒子加速・ヨーヨー〉を巻き上げて〈励起剣〉を抜いてアンティキティラを一閃。
アンティキティラが宇宙を転がると、天球図みたいなのが波紋から出てきた。
よし、第3段階!
『というか、スウさんと命理ちゃんがいると、物凄い楽ですね』
『やなぁ、初攻略の時、マジで大変やったのに。数千人が涙目で、一回失敗したのになぁ』
『で、マイルズさんが必死に頑張って、なんとか攻略したんですよねぇ。そして第二章「潜伏」が開始しました』
『思ったんやけど、あの「潜伏」の意味って、スウがVRに隠れてるって意味やったんやないの?』
『えっ? ・・・あっ! それかもしれません!』
「なわけ」
私は言うけど、アリスの興奮が止まらない
『いえ、一章が「胎動」――スウさんがVR訓練を始めたという意味。――二章が「潜伏」、スウさんがVRから出てこない。――そして三章が「それはきっと、奇跡の始まり」スウさんが命理さんと出会うことで、奇跡が始まった! しかもスウさんの一番強力なスキルは〖奇跡〗! ――そして四章、最終章・・・・「おはようをしに行くんだ」――スウさんの活躍で、100層に到達してアイリスさんを人間に戻す。――完全にリンクしてます!』
『つまり〝フェイテルリンク・レジェンディア〟って、レジェンドであるスウにリンクして星と運命を掛けるという意味やったんか・・・』
すると命理ちゃんまで、
『きっと、そうね。フェイテルリンクをコントロールしてるのが、あのシュネなのだもの。アイツは、1100年前、当機が星団帝国の残党に捕まる前日「ボクが必ず、レジェンドを君の元へ届けるから――待ってて」そんな風に言っていたわ――当時は意味がわからなかったけれど・・・・全て知っていたのね、アイツ』
納得しちゃった。
でもそうか、シュネちゃんはループを繰り返してるから・・・・シュネちゃんは私が死ぬ度そのルートを捨てて繰り返してきたって言ってた・・・・ありえるのか。
――衝撃の事実だ。
「ま、まあ、それはともかく。アンティキラだよ。あとは、2段階と同じことを繰り返せば良いね。今回は天球図の破壊を待つ必要もないし」
そんなことを思っていたら――アンティキティラがくるくる回りながら、大きな円筒型のコロニーの残骸に入った。
「えっ!? ――あそこで戦えと!?」
さらに狭いんじゃ・・・。
私がマジかぁと思っていると、アリスが尋ねてくる。
『わ、わたしたちは、天球図を追えばいいですか?』
「お願い!」
『はい!』
『こっちは任せろ!』
私と音子さんと命理ちゃんは、アンティキティラを追って、コロニーの中へ。
「せまッ」
――というかグチャグチャ。ビルやら線路やら標識なんかが宙に浮いて、ひしめき合ってる。
そんな中をアンティキティラが螺旋を描きながら、こっちに近づいたり、遠ざかったり。コロニーから出るつもりは無いらしい。
なんかアンティキティラは、「この残骸をどうする? 戦えるか?」って笑ってるみたいだ。
「よし、とりあえず、じゃあまず」
『掃除やな』
『そうね』
「イルさん、〈臨界黒体放射〉!」
『涼子、〈臨界黒体放射〉!』
『〈臨界励起放射〉!』
3人で斜め縦列に並んで、光線を放つ。
残骸が、ガンマ線バーストみたいなレザーを食らって蒸発する。
すると、気化したコロニーの残骸で、コロニー内が真っ白になった。
私たちは縦列のまま、しばし呆然。
最初に口を開いたのは、音子さんだった。
『なあ――これ』
命理ちゃんも、呆然と口を開く。
『まずいわ』
私も大慌て。
「ヤバい! ――こ、ここ空気も重力もないから――粒子が霧散しない・・・・!」
コロニー内が真っ白で、アンティキティラが見えないし、弾幕が煙の中からいきなり飛び出す!
『君、やっちまったなぁ!!』
「音子さんもでしょ!!」
『大惨事だわ。こういう現象が起きるのを予想するのは、スウの役目だわ』
「私だってたまには予想できないし! というか宇宙に詳しい命理ちゃんが、私に丸投げしないで!?」
『当機は、宇宙に詳しくても、物理に詳しくないわ』
私たちは弾幕を躱しながら、みんなで責任を押し付け合う。
すると、アリスの心配する声。
『あの・・・・何があったんですか?』
『どうした、大丈夫か?』
リッカも心配気。
『スウがポカしたんや! コロニー内で残骸を蒸発させたんや』
『えっと?』
『ここ無重力やろ、対流もないし』
『――あー! それで五里霧中ですか?』
すると命理ちゃんがため息を吐く。
『あーあ。レーダー関連も滅茶苦茶だわ。スウのせいで』
「命理ちゃん!?」
『なにやってんだ・・・』
リッカに呆れられた。
「リッカだって、こんなことになるって予想できないでしょ!」
『スウともあろう者が・・・』
「私への信頼が重い!!」




