銀色の竜と白銀の姫
昔々、腐敗しながら毒素を放つ闇色の竜がおりました。
竜は毒や呪いに耐性があり、体の中で無害な物質に変えることができる、
特殊なスキルをもっておりました。
それゆえに、竜は毒や呪いを肩代わりさせるために利用され、
段々と心を病んでいきました。
そしてその心の闇は、ため込んだ毒素を放出し、
鱗を腐らせ、そして腐敗をもたらしました。
人間も、同族である竜すらも嫌うその闇色の鱗の竜は、
腐敗竜と呼ばれ、竜眼山と呼ばれる
不毛の山の麓で囲まれた盆地で、ひとり寂しく過ごしていました。
けれど、腐敗竜を恐れ、その呪いから身を守ろうと、
神龍を崇める神龍の子孫たちによって追い出されてしまいます。
行くところがない腐敗竜は、
竜眼山を越えて、銀色の竜の国へと辿り着きました。
銀色の竜の国の人間もまた、
腐敗竜を恐れました。
けれど、たったひとり、
腐敗竜を恐れず、手を差し伸べた姫がおりまた。
雪のような白い髪は、光に反射して
きらきらと銀色のように輝き、
その瞳は銀の鱗のようにキレイな銀色の瞳。
彼女は何の恐れもなく、腐敗竜に触れました。
触れればたちまち身に纏う呪いと毒素で相手を、
触れたものを蝕んでしまう恐ろしいその体に。
しかし、姫の手は温かく、
いつしか纏っていた呪いと毒素を祓い、
そして腐敗した闇色の鱗がはがれ、
銀色の美しい輝きの鱗を取り戻しました。
そして輝きが戻ったとき、不思議なことが起こりました。
決して緑を付けない不毛の山だった竜眼山が
緑に覆われ、銀龍が腐敗した毒素で焼いた大地は、
瞬く間に緑に覆われ、花が咲き乱れました。
そのことを知った、銀色の竜の国の王は、
銀色の鱗の竜に謝罪し、
自身の国のシンボルである銀色の竜に、
彼の故郷と呼べる場所、居場所を、
彼と、白銀の姫のための地として与え、
そこにふたりの国・銀色の竜の公国が誕生しました。
竜眼山の麓の小さな公国には、
草花が溢れ、のどかな田園が広がります。
いつしか、姫を慕う者たちが移り住み、
小さいながらも、平和な日々を過ごしたのだと言います。
銀色の竜と姫は生涯仲睦まじく過ごしたと言いますが、
夫婦喧嘩をした際は、姫が竜眼山をへこませたとか、
その度に銀色の竜が泣いて赦しを乞いていたとか、
何だか微笑ましい話も残っています。




