竜帝陛下の課題
※現在から約2年ほど前のお話です※
そこら辺解説しておらずに申し訳ありません<(_ _)>
「・・・シャクヤ、そう言えば、先日・・・
ディルがお前のところの末娘と結婚したいと言ってきたのだけど」
「・・・げほっ、ぐほっ・・・はぁ・・・?」
竜帝国で開かれている式典の晩餐会にて、
竜帝は、毎度のことながら、
妃を同行させることなく、
ツェイロンの国王夫妻であるシャクヤとリィリエを隣の席に拘束し、
いつものように談笑にふけっていた。
尤も、リィリエはそんな夫たちの間を邪魔することもなく、
他の王妃や貴族たちとの交流を楽しんでいるため、不在である。
このシャクヤだけの特別対応に、
さすがに他の属国からも苦言が来るのだが、
ほぼリィリエの根回しと、命知らずのごく一握りの犠牲によって、
この絵面は守られていた。
何故なら、シャクヤがいた方が、幾分かましだからである。
一応、他の属国の王族も、竜帝に近い席を設けてもらっているものの、
一番近くにいるのはほぼシャクヤである。
昔、属国の王のひとりが、それに苦言を呈したら、
危うく竜帝陛下のブリザードが吹き荒れ、
事情をすぐさまその王妃に話したリィリエの功績で、
その王はすぐさま王妃に回収されて行ったらしい。
その後も、命知らずな竜帝国の貴族がしゃしゃり出たこともあるのだが、
いずれも失脚や社交界から締め出されると言った始末。
それならば、竜帝が少しでも機嫌のよくなる、
仲の良いシャクヤを隣の席に置いておいた方が、
ましなのである。
因みに、本日はツェイロンの王太子・シンシャ、
王女・ユーリィも来ており、
皇太子・ディルの相手をしている。
近隣の属国の王太子・姫や貴族も来ているが、
そのほとんどが、ためらうことなく、
第3皇子・レオハルトに群がっている。
少なくともディルよりは・・・愛想がよく、
そして、話しかけやすい。
シンシャ目当てで近づくものもいるが、
ディルの放つ覇気に耐え切れず、ほぼ逃げ出し、
それを見てユーリィが失笑。
ディル目当てで近づこうものなら、
竜帝そのものと言っていいほどのブリザードが吹き荒れる。
上手くシンシャが逃がしても、
また寄ってくる者は、その尊い犠牲になる。
さすがにそんな者を更に助けるシンシャではなかった。
こうして、ディルをシャクヤの子女に任せて、
自身はお気に入りのシャクヤと談笑にふけっている竜帝だったが、
その竜帝の思いもよらぬ話に、シャクヤが思いっきりむせたのだ。
「んな・・・何故だ・・・」
「知らない」
「・・・お前な・・・」
シャクヤが困ったように竜帝を見やるが、
竜帝の美しい表情はピクリとも動かず、
ただシャクヤをじっと見つめている。
「婚約者は、本国と属国の中から、一定数選ぶ。
人族の姫もひとり娶らせる決まりだ」
大抵は、竜族、人族、獣人族、エルフ族の4種族から選ばれる。
尤も、最初はそのように娶った竜帝自身も、
紆余曲折あって、もうひとりだけ竜族の妃を娶ったが、
既に処刑されており、この世にはいない。
こういった例外がなければ、
人族なら人族の属国の中から、獣人族なら獣人族の属国の中から選ばれる。
「だから、そうしようと思う」
「・・・まぁ、竜帝がそう決めたのなら、
属国の王である俺がとやかく言う権利はない・・・が」
「・・・が・・・?」
と、首を傾げる竜帝の表情は、相変わらず無表情である。
「おほんっ。ひとまず・・・ウチのメイリィの将来の義理の父となるお前がだ」
「あぁ、戸籍上はな」
確かにその通りなのだが。
「円満な夫婦生活を送れていないのなら、
ウチの末姫のメイリィを嫁にやるわけにはいかない」
「・・・竜帝の命に逆らうということか」
本来、しがない属国の王が言われたら、
生死の覚悟をしなければならない圧を感じるのだが、
シャクヤと竜帝の間には、そのような圧も緊張感もない。
「・・・いや・・・ウチの王家から、ひとり姫を出すことは認めよう。
元々・・・人族なら人族で、人族の王国から候補を出して、
お前が選ぶのが本来の方法だ」
「あぁ」
「お前がしっかりと円満な夫婦生活を送れると証明できるのなら、
その命令通り、ウチから姫をひとりだす」
「その末娘では?」
「それは本人の適性や、希望なども考慮して、選ぶ。
我らが竜帝国の妃となる姫だ。簡単に指名を承諾するわけにはいかない」
※あくまでも、親バカの流れに身を任せ、くじ引きで選んだひとのセリフです
「・・・わかった・・・私は、シャクヤが認めた娘ならば、
婚約者として、将来の妃として迎え入れる」
「あぁ」
※このひと↑このひとが親バカに身を委ねてくじ引きで選んだひとです
「その前に、夫婦円満を示してくれ。
そうでなければ、ウチの国からは、嫁げる姫はいないと回答する」
「・・・そうか・・・」
「少なくとも、公の場に妃も連れて来ない、
妃に会いもしない、子の名前も放ったらかしの
今のお前には、ウチの姫は任せられない」
「・・・わかった・・・夫婦円満・・・を、すればいいのか」
「あぁ、そうだ」
シャクヤが頷くと、竜帝は何か考えているような間を置いて、
またシャクヤに話しかける。
「シャクヤ、今日は一日中、お前の顔だけを見ていたい」
「まずは妃の顔を見ることから始めろ」
そんなやり取りを見ながら、席に戻ってきたリィリエが苦笑する。




