皇太子殿下と第4皇子殿下
脱字投入しました(/・ω・)/
それは・・・突然・・・やってきた・・・
「お前が・・・第4皇子か・・・?」
あまりの恐怖に、体が言うことをきかない。
震えが止まらない。
「第4皇子」
「はいいぃぃっ!!」
あ、返事してしまった。
「そうか、第4皇子か・・・」
「は・・・ははは・・・ははう・・・ぇ・・・」
まだ幼さの残る白い髪に銀色の瞳をした竜族の
小さな男の子が、ベッドの脇で震えていた。
そして、恐ろしさで腰の抜けた第4皇子のもとに、
真っすぐ手を伸ばしてきた。
「あああああぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」
ぐわしゃり・・・っ!!!
第4皇子の頭の上に、ディルの掌が押し付けられた。
「ぎゃああああああああぁぁぁぁ――――――っ!!!」
その叫び声に、何事かと近衛騎士たちが飛び込んで来る。
しかし、彼らは、第4皇子の頭を押さえつけるその少年の顔を見て、
身をこわばらせる。
「こ・・・皇太子殿下・・・このような、夜分に・・・」
「貴様ら・・・邪魔をする気か・・・っ!」
ディルは第4皇子の頭に掌を左右に揺らしながら押し付けたまま、
近衛騎士隊に覇気を放ち、叫ぶ。
「出ていくがいい・・・アルダ」
ディルが名を呼ぶと、すかさずアルダが顕現する。
「んな・・・っ!こいつは・・・」
「皇太子殿下の・・・っ」
「一旦・・・退却だ・・・!」
近衛騎士たちは、第4皇子の期待虚しく、
部屋から出て行ってしまう。
あぁ・・・どうせ自分は末の皇子で、
母親も末席の第4妃。
どうせ期待もされていないから、
近衛騎士たちにも捨てられ、
この場で・・・“皇太子”に殺されるのだと、
第4皇子はその小さな体で、幼心で覚悟した。
「第4皇子」
「は・・・はひっ」
「貴様、名はあるか」
「えと・・・か・・・かい」
「・・・エトカカイ、か」
「ち・・・ちが・・・っ」
「エトカカイ、では、兄上だけが許された、
弟の呼び名を授けてやろう・・・」(くわっ)
「ひぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ――――っ!!!」
「ウチの息子に何してんのよっ!!」
その瞬間、皇太子の頭に、本が投げられ、アルダが即座に斬り捨てる。
「あああああぁぁぁぁぁぁ―――――!!!
ちょっと、アンタたち・・・何してんの!それ、禁書なのに!」
突然現れた、白猫耳しっぽの女性が絶叫してくる。
「ちょっと・・・責任、とってくれるのよね!?
それ、国宝級の禁書よ!?アンタ、名前は!」
「あ・・・アルダ・・・です」
さすがのアルダも、何やらとんでもない気迫を纏ってやってくる女性に、
思わず名乗ってしまう。
「高くつくわよ?」
「勝手に投げてきたのはお前だろう。だから、お前が弁償しろ」
悪びれもなく、皇太子が告げる。
「んな・・・っ!大体、夜分に私の息子を襲いに来たのは、アンタらでしょう!?
いくら皇太子殿下が相手でも、私は息子を守るわ!それが母親だから!」
「・・・母親・・・?いや・・・違う」
「違わないわ」
「弟を守るのは、兄の権利だ」(くわっ)
「・・・」
愛息子の頭を手で押さえつけ、コワモテで告げる皇太子を、
猫耳しっぽの女性は暫く無言で彼を見やった。
「あなた、何をしに来たの?」
「うむ、なでなでをしに来た」
「・・・それはなでなでじゃないわ」
「いや、なでなでだ」
「私が手本を見せるから、息子返して」
「いや、エトカカイは俺の弟だ」
「いや、誰だよそれ!!その子は“カイ”!変な名をつけるなぁ―――っ!」
「・・・エトカカイだ」
「ちげーよ」
「・・・エトカカイ・・・」
「んなわきゃねーだろ」
「・・・エトカカイではないのか?」
「“カイ”だっつってんだろ」
「わかった」
「よし」
女性は腕を組んで男前に頷く。
「では、兄だけに許された弟の呼び名を付けよう」
「そもそも、カイ以外に呼び方なんてないわ」
「は・・・っ!?そんなことはない!
俺は兄上として、その権利がある!」
「じゃぁ、何て呼ぶ気よ」
「・・・うん・・・“カ”か“イ”が妥当なところか」
「名前分解すればいいわけじゃないのよ?」
「・・・違うのか」
「ちげーよ」
「では、俺はどうしたらいい、アルダ」
「・・・えっとぉ・・・俺にも・・・ちょっと」
まさかの頼みの綱であるアルダにも、ここはどうしようもなかった。
「では、女、どう呼べばいい」
「・・・ソシエ“さま”と呼びなさい」
「ソシエサマか」
「・・・名前は“ソシエ”、よ」
「ではソシエ」
「学ばねーな」
「違うのか」
「もうそれでえーわ」
「では、ソシエ、どうすればいい」
「・・・あんたねぇ・・・そうね・・・いや、“カイ”じゃダメなのかよ」
「兄上は、兄上にだけ許された“弟”の名で、呼ばねばならない」
「いや、それは誰が言ったんだ」
「誰だったか」
と、皇太子がアルダに目を向ける。
「いつの間にかそうなっていましたね」
アルダにもわからなかった。
「じゃぁ、この中から適当に選びなさい」
―ユウ―
―ルゥ―
―ムー―
「・・・では、ルゥにする」
「えぇ、いいわ。これからはルゥって呼びなさい。カイ、わかった?」
「え・・・あ・・・うん・・・母上」
「それじゃ、後は正しいなでなでの方法ね」
「正しい、なでなで・・・?」
「ほら、こうよ」
ソシエは皇太子であるディルに歩み寄る。
アルダも、ソシエは口が悪くとも、
敵意がないことをわかっていたので、手を出さない。
ソシエはディルの頭に手を伸ばすと、
優しく、角の間を撫で、
そして側頭部も優しく撫でる。
「こうよ、わかった?ほら、カイも来て」
母の手招きに、カイも恐る恐る近づく。
「・・・ルゥ」
ディルは謎の愛称で、カイを呼ぶ。
そして、ソシエが撫でてくれたように、
優しく、角の間や、側頭部を撫でるのだった。
この時から、ディルは何故かソシエに一目置いているのだが、
その真実を知る者は・・・ほとんどいない。
ソシエ「そう言えば、イザナくんは愛称で呼ばない理由を・・・言ってごらんなさい?」
ディル「・・・兄上だけに与えられた弟名を
要求したら・・・すごい怒られた・・・ぐすっ」
ソシエ「さすがはイザナくんでしょ?アンタまで手中に収めるとは。
でも、怒られて泣きべそかくところはあーしゃんに似たわよね~」
ディル「・・・あーしゃんって誰だ!?」
※竜帝陛下の愛称
※因みに、キーシャには、イザナに怒られた後に出会ったので、
愛称は特に無いということで、そのまま呼んでいます。




