竜帝陛下の夫婦円満
式典が無事終了したその翌日、
竜帝は、第3妃と第4妃を玉座の間に呼んだ。
「第3妃、第4妃、面を上げよ」
『はい』
滅多に顔を合わせることもない、
エルフ族の第3妃と獣人族の第4妃が並んで平伏していた顔を上げる。
「お前たちには、私と夫婦円満をやってもらう」
「は・・・?」
普段は何を言われても、竜帝がずっと無言でも、
涼し気に聞き流す第3妃が、呆けたような声を上げた。
「私と夫婦円満をやってもらう」
「いえ、聞こえなかったのではありません」
何故か再度告げた竜帝に、第3妃が口を開く。
「恐れながら、申し上げてもよろしいでしょうか、陛下」
「あぁ、許す」
「陛下と夫婦円満とは、一体どのようなことをするのでしょうか」
今まで、夫婦円満などと言う言葉は、
当代の竜帝には、全く以って似つかわしくないものだった。
何せ、既に皇后が出家、寵姫が殺害され、そして新たに入った妃は処刑された。
よって、残っているのは、側妃の第3妃と第4妃だけである。
その後、今のところ竜帝は新たな妃を迎えることはなかった。
「夫婦円満だ」
「具体的に、何をなさるのでしょうか」
「夫婦円満をすればいい」
「恐れながら、申し上げます」
「何だ、第3妃」
「夫婦円満とは、夫婦が仲睦まじく生活を送る言葉を意味します。
具体的に何をやる・・・と言うことを示す言葉ではありません」
「では、具体的に何をするのだ」
「・・・いえ、こちらが質問しているのですが」
ユリアなのこめかみに、青筋が浮かぶ。
しかし、竜帝は構うことなく続ける。
「夫婦円満なことをすればいい」
「・・・」
第3妃と竜帝の視線がぶつかり合う。
そこに、第4妃が声を上げる。
「恐れながら、陛下」
「何だ、第4妃」
「その前に、ことを起こすためには、
全て理由がなくては意味を成しません。
竜帝陛下がそのような発案に至ったわけを、
お聞きしてもよろしいでしょうか」
「あぁ・・・シャクヤが・・・」
※シャクヤ=ツェイロン王、メイリィ父、親バカ
「夫婦円満をしろと言ってきた」
「聡明なシャクヤ王のことです。
具体的に、何を、と仰っておられたか、
お聞きしてもよろしいでしょうか」
彼女たちは竜帝が彼女らに全く構わないため、
後宮にこもっていることが多い。
しかし、一旦は王妃に召し上げられ、
寵姫として扱われた人族の妃の兄王のことは、
さすがに噂に漏れ聞いており、
竜帝が特に気に入っていることも、把握していた。
「公の場に妃を連れて来ないと言っていた」
「つまり、私か第3妃さまのどちらかが、同行すればよろしいので?」
「あぁ、そうだ。どちらがいい」
と、竜帝が問うと、第3妃と第4妃が顔を見合わせる。
「陛下・・・私は、あまりひとの多いところは苦手です」
と、第3妃が告げる。
「何故だ」
「トラウマだからです」
「ネコならいいのか?」
と言って、竜帝は猫耳しっぽの獣人族である、第4妃を見やる。
「では、私がお受けします。
であれば、第3妃さまが表に立たれる必要はないでしょう」
第4妃が冷静に告げると、第3妃は驚いたように第4妃を見やる。
本来ならば、我先にと競い合うのが妃かもしれないが、
彼女たちはどちらも、目立たず、競わず、穏便に、閉じこもっていた。
だからこそ、今も彼女たちが役目のために産んだ
子どもたちと共に、今もこの竜帝国城で生き延びている。
今更、我先に、とはならない。
第4妃は、第3妃の言葉を受け、彼女の代わりに、と申し出たのである。
「わかった。では、そのように」
「ですが、陛下」
「何だ」
「いきなり公の場に出ても、
聡明なシャクヤ王のことです。
すぐに夫婦円満の仮面をつけていることくらい、
軽くお見通しなさるでしょう」
「うむ、確かにシャクヤは、聡明だ」
竜帝が頷く。
※竜帝は基本的に、シャクヤへの誉め言葉には頷くぞっ☆
「私の故国の王族は、一夫多妻制です。
夫は妻たちとの仲を深め、王室内での争いを防ぐため、
晩餐時は、毎日妃たち全員と食卓を囲みます。
なので、夫婦円満となる・・・案ですが、
これならば、今日からでも簡単に始められると思います」
「・・・わかった。それが、夫婦円満か。
では、今夜の晩餐から、私と共に食卓を囲め。第3妃、第4妃」
こうして、社交に出ない第3妃も加わって、
竜帝は妃たちと晩餐を囲むことになった。




