竜帝と妃たちの晩餐会
メイリィ「私の出番がまだ来ません。どうなっているのでしょうか」
キーシャ&たま『おねーちゃんっ♡♡♡♡♡♡♡♡』
メイリィ「ぐはっ」
※ヒロイン戦闘不能(状態異常:神弟萌え×2)のため、
まだまだヒロインの出番は・・・来ないぞっ☆
その晩餐会会場の席に座るのは、ひとりの男と、ふたりの女性。
ひとりの男は、笑みすらも浮かべない、
無表情だが、とても美しい顔の男。
珍しい銀色の竜角に、深い藍色の髪、
竜皇族の皇族に多い金色の切れ長の瞳を持つ。
ふたりの女性は、それぞれエルフ族と獣人族である。
エルフ族の女性は、エルフ族特有の長い耳を持つが、
碧眼に珍しい紫がかった銀色のロングヘアーだ。
そして獣人族の女性は、猫耳しっぽに白い髪を
頭の後ろでギブソンタッグに編み込んでおり、
瞳は彼女の祖国に多い銀色である。
普段は口数も少ない男が、不意に口を開く。
「第3妃、第4妃」
呼ばれた女性ふたりは、驚きつつも彼を見やる。
「私は、玉座を降りようと思う」
そう告げられると、ふたりは互いに顔を合わせて、困惑した表情を浮かべる。
しかしその反応にも、男は表情を変えない。
「玉座を降りて、どうするおつもりで?」
エルフ族の第3妃が問う。
「・・・半身の元に、隠居する」
「・・・そうですか・・・お言葉ですが、よろしいでしょうか」
普段は頷くだけで終わる妃たちだが、
第3妃が言葉を続ける。
珍しいこともあるものだ、と、男・・・竜帝は珍しく自身の妃を見やる。
「何だ」
「今、玉座をほっぽいて、帝位をディラン殿下に受け渡し、
メイリィちゃんが新たな皇后となれば、
苦労するのはメイリィちゃんです。
史上初の、竜族以外の皇后。それも、属国出身の姫。
これは恐らく、竜帝国全体を揺るがします」
「そうだな」
竜帝は、その事実だけはわかっていた。
「恐れながら、陛下は。長年、わかっていて放置していた、
自らの側近の後始末を、ようやくされたそうですね」
「あぁ、だから、責任を取って退位する」
「その理由はなんでしょう?」
「あれは、私が竜帝であり続ける意味だったから。
私のために、何もかも失ったあれへの、償いだと思ったから。
あれを失えば、私はひとりでは生きられない。
ある意味、半身と同等の役割を果たしていたのは、
結局は、あれしかいなかった・・・
もう・・・何も竜帝の玉座に座る意味がない。
あれは・・・二度と、自分や、その母親のような犠牲者を出さないために、
私がこの竜帝国を導いていくことを・・・望んだ・・・
けれど・・・あれを失った私には・・・無理だ」
「側近がひとり抜けた穴に入り込もうとするものたちは、
きっとすぐに押し寄せるでしょう。
そんなタイミングでディラン殿下に全てを押し付ければ、
またさらに、新たな派閥が、横槍を入れてくるでしょう」
「ディルには・・・力がある。
私にはない、本物の半身がちゃんとその傍らに、いるから。
半身に赦してもらえず、代替え品を用意してもダメで、
失ってからやっと、その役割を、代わりに果たしていた存在を知った・・・」
「確かに、ディラン殿下に適うものなどこの竜帝国にはいないでしょうね。
・・・彼の婚約者たちを除いて。
けれど、やっと安定にこじつけた竜帝の地盤を、
側近がひとり抜けた穴を埋め、今は固める時です」
「そう言うやり方もあるな。だが・・・」
「それは、本当に、彼が望んだことですか?
今、あなたが進んで竜帝国の地盤を揺るがすことをすれば、
ディラン殿下ならうまく片付けるかもしれませんが、
それにはまた、あなたの時と同じように、膨大な年月がかかります。
その間に、また、同じような犠牲者が増えます。
それに、失ったのなら、補充すればいいでしょう」
「だが、あれの代わりは、いない。私には他には、もう、半身しかいない」
「私たちは側妃と言う立場。
ようやく安定した帝国内を無駄に混乱させたくはありませんので、
今更表立って動くつもりはありません。
だから、私たちの息子を貸し出します。
それを代わりにすればよろしいのです」
「あれの代わりになると?」
「少なくとも、あなたが持ちえなかったものを、
あの子たちはちゃんと持っていますよ。
今までは使う場所も、活かす場所もなかった。
あなたは、ちっとも目を向けなかったから。
あなたは、シャクヤ陛下に言われた通り、
皇太子のディラン殿下には目を向けました。
しかし、同時に他の息子たちは妃に放りっぱなし。
イルゼ殿下など、ディラン殿下が拾い上げなければ、
今頃、生きていられたかどうかもわかりません。
もしかしたら、ディラン殿下への反乱時に、
神輿として担がれ、共に処刑されていたかもしれません」
「そうだな・・・それは理解できる。
私も、あれは共に処刑されるのだろうと思っていた」
「もし、あなたの予想通りになっていたのなら、
きっと、シャクヤ陛下に二度と口を利いてもらえなくなりましたよ」
「・・・どうして」
「ですから、私たちの息子を使うことを覚えてください」
「よくわからない」
「あの子は、少し感情の行くままに動くきらいがありますが、
今はアナちゃんとディラン殿下が傍にいれば、大丈夫です。
あなたに足りないものを、補ってくれます。
カイ殿下はまだ少し幼いですが、頭はいいですし、
大人のお姉さんに恋をして、男だと知って愕然としたりと
感情豊かに育ちました。そして、ディラン殿下もまた、
あの子たちと出会って・・・変わりました。
だから、あの子たちをお傍においてください。
あなたが今、勝手に玉座を放り出して、シャクヤ陛下の元に行っても、
追い返されるのが関の山です」
「なんで・・・?」
「シャクヤ陛下の末の愛娘のメイリィちゃんが苦労する・・・
自身が名付け親になった皇太子がやっと自身の大切なものを
手にし、変わりつつあるのに、更なる苦難を押し付ける。
彼ら彼女らが苦しめば、シャクヤ陛下も悲しまれます。
かつて、シャクヤ陛下は、ディラン殿下がメイリィちゃんを
婚約者にしたいと申し出た時、それをシャクヤ陛下にお話されましたね」
「あぁ、そうだけど」
「その時、なんと言われたのでしたっけ?」
竜帝はきょとんの首を傾げる。
普段、表に出ない第3妃は、
もっぱら社交界担当の第4妃に目を向ける。
「家庭円満もまともにできない陛下に、
末娘はやらん、と仰っていましたね」
と、第4妃が薄く微笑む。
「最初に、家庭円満がやりたいと、仏頂面で陛下が仰ったときは、
どんな天変地異の前触れかと思いました」
と、第3妃。
「まぁ、祖国の風習を真似、王が妃たちと晩餐を囲む・・・
と言う風習を提案し、実践いたしましたよね」
と、獣人族の王国から嫁いできた第4妃。
「それでも、陛下は口ひとつ開かない日なんて日常茶飯事」
「私たちはお互いに、あまり交流がなかったけれど・・・
この意味の解らない茶番にうんざりして、
いつの間にか愚痴り合っていました」
「今ではすっかり仲良くなったわね、ソシエ」
「えぇ、ユリアナ」
第3妃・ユリアナと第4妃・ソシエは、
互いの名を呼び合い、顔を合わせて微笑み合う。
そんな様子を、竜帝は不思議そうに見つめていた。
次回・・・波乱の予感っ!!
メイリィ「私の出番・・・」
ポチ「むおおぉっふぃぃぃぃっっ♡♡♡♡♡♡♡♡」
メイリィ「もっふぃもっふぃ~~~っ!!!(泣)」




