神龍の答え
その日、私たちは、決して皇太子宮から出るな、
・・・そうディルに言われました。
もちろん、ミフェイさまとルディくんも一緒なのです。
ルゼくんたち近衛騎士たちは、いつも以上にピリピリしています。
キーシャくんは相変わらずかわいらしくもっふぃたちと
もふぃもふぃしていましたが・・・
そして、ディルが外出したその翌日のことでした・・・
「あぁ、全て片付いた」
と、開口一番に、そう言われたとです。
え・・・待って。
私、ヒロイン。主人公。主役!!
ヒロインが引き籠ってた間に、何チート決めて全部片づけてんですかぁ―――っ!!!
物語性!あなたは物語性と言うものを・・・!
・・・あぁ・・・そう言えば、いろいろとずれていたっけ。
まさかの、ヒロインが何もやっていないうちに、
最強の婚約者が全部片づけてきました。
もう、小説のタイトルこれにしたらどぅっすかね。
え・・・?ダメ・・・?
ヒロインなら働け?活躍しろ?
だからその活躍シーンが、まさかのディル独り勝ちで終わったんですよぉっ!!
・・・と、ひと通りツッコミ終わったところで、
ディルが連れてきた少年に、私たちは目を剥きました。
「あぁ―――っ!!キーシャくんの偽物―――っ!!!」
「誰が偽物だっ!!」
私とルゼくんを監禁しようとした、
白い髪に薄い紫色の瞳・・・恐らく、私の叔母の忘れ形見であるあの少年でした。
「・・・おい」
しかし、ディルに睨まれ、すっかり委縮していました。
一方、キーシャくんはとことこと近づいていきます。
ディルが止めないので、危険はないのでしょう。
「ディルお兄ちゃん、これ、どこで見つけたの?なんかすっごい、腐食してる!」
腐食・・・とは、どう言うことでしょう?
「そう言うな。お前の弟だ」
やっぱり・・・私の叔母の・・・
「・・・そうなの?」
キーシャくんはきょとんと首を傾げます。
「コイツは、ある男に育てられた。
自分が神龍であると誤認させられてな」
「全然神龍じゃないよ?すごい強い竜の力、感じるけど!
空間魔法は・・・あ、やっぱり使えるんだね」
と、キーシャくんがすらすら述べます。
見ただけでわかるとは・・・神龍チート、パネェっすね。
そしてやはり、空間魔法が使えるんですね。
それで私とルゼくんを期せずして攫った・・・と言うことでしょうか。
すごい強い竜の力って、キーシャくんも言っていますし。
「そうだ・・・半端に得た力は、
その、お前が言う、腐食をもたらしたんだろう。
お前は・・・どうしたい。
お前の弟だ。そして・・・お前の母を殺した男の、子だ。
また、メイリィとルゼを監禁し、ルゼを傷つけた」
な・・・何ですと・・・?
メイファ妃は・・・殺された・・・?
そしてその子は、メイファ妃と、その殺した男の・・・子?
「じゃぁ、ぼくのものになる?」
それは一体、どう言う意味なのでしょう・・・?
「お前の好きにするといい」
とは言っても・・・何だかその身の上を知ると、不憫な気が・・・
「では、神龍がお前に名を与えよう」
そう、キーシャくんが述べた途端、
キーシャくんが白く光り輝きます。
「うぅ・・・っ」
白い髪の少年は、苦しむように床にうずくまります。
私はとっさに動こうとしましたが、ルゼくんに止められてしまいました。
「・・・たま・・・!!」
それは、昔シンシャ兄さまが言い出した、
“ねこ”と言えば“たま”理論でしょうか・・・?
その子・・・猫耳しっぽ萌えでもなんでもないのですが・・・
そして、その名が紡がれた時、
その少年・・・いや・・・たま?は、
もうひとりのキーシャくんのように、
小さな・・・12歳ほどの姿になっていました。
そして、その瞳は薄い紫から、金色に変わっています。
「うん、たまは今日から、ぼくのペット。
神龍に従う竜。これで無理矢理取り込んだ、
竜の血肉も君の体になじむよ」
竜の血肉とは・・・はて・・・?
疑問に思っていると、ディルがキーシャくんに
どう言うことかと聞いていました。
「神龍っぽくしたくて、竜の血肉を与えたんじゃないのかなぁ・・・
そう言うこと、するにんげんも、昔はいたよぉ?
でも、竜たちはそれは外道だって嫌っていたけど。
にんげんを、無理矢理半分魔物にして、
すごい力はもらえるけど、すぐに腐って死ぬの。
でも、たまは完全に肉体を造り変えて、魔物にして、
ぼくのぺっとにしたから平気」
衝撃の事実です。
「・・・お前は、コイツを助けた・・・それで、良かったのか」
「・・・うん!ぼく、お兄ちゃんばっかりだから、弟が欲しかったの!」
し・・・神龍の考えることは、人知を超えているようです。
しかも・・・それで姿まで弟に変えて・・・
あれ・・・では、ルゼくんは弟でも良かったのでは・・・?
「お姉ちゃん」
「ん?」
「ルゼお兄ちゃんはお兄ちゃんなの」
何だかよくわかりませんが・・・
キーシャくんなりに、こだわりがあるようなのです。
「ほら、たま、おいで」
キーシャくんがたまをなでなでしています。
「・・・なんで・・・」
たまは不思議そうにキーシャくんを見上げています。
「弟、だから好き!ディルお兄ちゃんが言ってた!」
どうやらそのとんでも理論は、
ディル由来だったようです。
「私にとっても、従弟・・・ですよね。
お姉ちゃんって呼んでいいのですよ」
と、たまを見降ろすと、とても不思議そうな目をしていました。
「・・・おれ、あんたをきずつけた・・・違うか?
それに、そのじゃりゅうも」
「ルゼくんのこと、邪竜じゃなくって、
ちゃんと“お兄ちゃん”って呼べば許します」
「・・・お兄ちゃん?」
「はい!ルゼくんはどうですか?」
「俺は兄上に従順なら問題ない」
わぁ―――。相変わらずのお兄ちゃん大好き理論ですね。
「心配ない」
それってどう言う意味でしょうか。
何故かひと睨みでたまを大人しくさせていましたし・・・
ともかく、たまは私たちのかわいい弟に加わりました。
「あの、ちょっと、待って」
あれ、ミフェイさまが手を挙げました。
「何だ」
ディルが答えます。
「その・・・あの男は、どうなったの?」
あの男・・・?
「あぁ・・・ひととおり、拷問して父の・・・竜帝陛下の御前に、捨てた」
・・・あの、サラッと何を恐ろしいことを・・・?
てか、誰ですか?その男って。
メイリィ「ひ・・・ヒロインって・・・ヒロインって一体何なんですかぁ―――――っっ!!!
誰か教えてください~~~~っ(泣)」
ディル「あぁ、もちろん、俺の愛するメイリィのことだ!
メイリィのため、メイリィが活躍する隙も無いほど、
すぱっと早々に片付けてきたぞっ!褒めてくれ!」(キラッ)
メイリィ「・・・真なるヤンデレは活躍する隙も与えてくれない・・・ですと!?」




