狂った竜皇子
メイリィ「ヒロインなのに・・・私、特に活躍していないんですが・・・。
・・・ヒロインって・・・一体何なんですかね?
今回の語り手、私ですらないですし・・・
ねぇ、今回の語り手さぁん・・・?ご存じですかァ・・・?」
今回の語り手さん「ひいいぃぃぃっっ!!やっぱこの子恐い!何か恐い!
闇よりも深い何かを背負ってる―――――っ!!!」
※ある意味ヒロイン魂だぞっ☆
※誤字修正しました<(_ _)>
竜帝が座す玉座の前に捨てられるように
ただ、横たわっていた・・・
突然やってきた竜帝が産んだその皇子は、
愛しい姫の産んだ、憎き皇子だった。
竜帝・・・主とは、幼少の頃よりともにあった。
竜帝は乳母兄弟と言う仲だった。
竜帝は、先代竜帝の、17番目の皇子。
皇位継承権など、無いに等しい、名前もないいらない皇子。
ただ、第17皇子と呼ばれた。
そして主の母親である妃にも、名前がなかった。
当代竜帝は、代々の慣習をやぶり、多くの妃を迎えた。
彼女は第24妃と名付けられた。
だから、彼女もまた、主を第17皇子と呼んだ。
母と主の母親は、それぞれ別々の人族の小国の出身であった。
主の母親は大国に侵略された小国の巫女の末裔だ。
その国で大切に守られていた巫女を奪い、愛妾として大国の王に捧げられ、
ただひたすらに、その夜の相手をさせられた。
その類まれなる美貌を持つが故に・・・
そして王の愛妾として生きながらえた亡国の姫が産んだ娘は、
当時の、好色な宗主国の竜帝に捧げられたのだ。
王は知っていた。
彼女たちが体に抱える、とあるものの存在を。
そしてそれを再び黒く穢し、己の欲望を満たすための道具にした。
好色帝への貢物として献上された妃とともに、
彼女と同じ境遇を持った乳母である母は、
献身的に妃を支え、俺たちふたりに愛情を与えて育てた。
だが、そんな母の献身的な支えとは裏腹に、日に日に弱っていく妃。
俺たちと違って、鱗など無いはずなのに、
黒ずんだ鱗のようなものを、全身が覆いながら、
苦しみながら、妃は死んだ。
そして、母は言った。
「あぁ・・・やっと・・・やっと役目から・・・解放される・・・」
「母さん・・・?」
「だから・・・死んで・・・あの憎い竜帝も、竜皇族も、
第17皇子も・・・ルキ・・・あなたと・・・一緒に」
「・・・母さん・・・?何を言って・・・」
母は、俺に与えた名を呼んだ。
「母さんはね、この日のために生かされて、
竜皇族を滅ぼすために、ずっと、ずっと生きてきたの。
でも・・・やっと終わるわ・・・これで、私も、
私の家族も、祖国も・・・救われるの・・・」
「どういう・・・こと?」
「・・・教えてあげる。母さんが、何のために生きてきたのか・・・
あの憎き侵略国に祖国を奪われ、家族を国民を人質に取られて・・・
あの侵略国の欲望のために・・・ここに、第24妃さまと一緒に、
ここに、貢ぎあげられたの・・・」
「・・・欲望・・・?」
「強大な力を持ち、富も、権力も、民も国も・・・全てを手に入れた
強大な竜帝国・・・けれど、その力はもはや、腐敗した・・・
だからこそ、今が好機と・・・この、竜帝国の竜皇族を滅ぼすため、
私はね・・・全てを・・・捨てて、ここまで必死に・・・耐えてきた・・・
だから・・・ルキ・・・お願い・・・死んで・・・ね?」
「な・・・何で・・・母さんが・・・俺を・・・っ」
「・・・あなたも・・・そうだからよ・・・憎き・・・竜皇族・・・
竜帝が腐敗しなければ、祖国は、侵略国の欲望に巻き込まれることはなかった!
道具にするために、都合のいい捨て駒にされるために、
国も家族も、人質に取られて、辱めを受けることも・・・なかった・・・」
「何を・・・言ってるの・・・?竜皇族・・・?
俺は・・・母さんの・・・子で・・・それに・・・辱め?」
「そうね・・・ルキは、母さんの子・・・だけど・・・
第24妃さまを抱いたその日に・・・私を辱めた竜帝の子・・・
妃として迎えられなかったがゆえに・・・あなたは皇子としては
数えられなかった・・・けど・・・あなたも、第17皇子と、同じ・・・
私の・・・憎き・・・復讐相手・・・」
「え・・・俺が・・・主さまと・・・同じ?」
「だから・・・死にましょう・・・この・・・邪竜の・・・血で」
母は、その手に、毒々しい色の血が入った、壺を持っていた。
「なに・・・それ・・・」
「これは・・・第24妃さまが代々受け継いできた・・・
邪竜の血・・・体の一部に抱えた・・・
人族では決して受け継ぐはずのない・・・
黒い竜の・・・鱗・・・黒鱗・・・
死ねばその体は、腐敗した鱗がその血に溶け、
そして、神龍の血を受け継ぐ竜皇族すら苦しめる毒となる・・・」
「毒・・・?」
「大丈夫・・・ルキには・・・痛い、苦しい思いをさせない・・・
この毒は使わない・・・だから・・・母さんが・・・この手で・・・」
そう言うと、母は壺を傍らに置き、そして、俺の首に手をかけた。
「あぁ・・・愛してるわ・・・ルキ・・・
そして、あの竜帝と同じ血を受け継いだあなたが・・・
ずっとずっと、何より・・・憎かった・・・」
「や・・・くる・・・し・・・やめ・・・かあさ・・・っ」
母が首に伸ばした手が、徐々にきつくしまる。
この・・・ままじゃ・・・
「・・・ルキ!」
その時、主の声が響き、
母の手が、俺の首からするりと・・・抜けた。
そして、横に倒れ伏した母は、ぐったりと・・・動かなくなった。
俺の前に立っていたのは・・・
闇のような双剣を持った、銀色の竜角を持った、主の姿。
「あ・・・るじ・・・?」
だけど、その口から紡がれた言葉は、どこか、
今まで知っている主のものとは、違う気がした。
「・・・憎い・・・憎い・・・」
「何を・・・言っているの・・・?」
ただ、一点を・・・母さんが見せた、
邪竜の血が入ったその壺の中身を、見つめていた。
「全部・・・憎い・・・憎い・・・
全てを受け入れ、真なる姿を取り戻してくれた我が半身と成した
この鱗を再び黒く染めあげ、血毒として利用するか!
全部・・・憎い・・・憎い・・・人間が・・・っ!」
主の、今まで見たこともない憎悪に満ちた双眸が、俺を見た。
「お前・・・誰だ・・・主、は・・・主を返せ!」
「殺す・・・全部・・・殺す・・・
これまで受けてきた辱め・・・全て・・・消す」
「何を言って・・・やめて、やめて・・・主!」
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
主が握りしめた、その闇色の剣が俺に向かって振り下ろされた。
尻もちをついて、目を閉じた・・・
だが、いつまでたっても、その衝撃は来ない。
何かが、頭上に、落ちてきた。
恐る恐る目を開けて、見上げると・・・
ぼろぼろと涙をこぼしながら、憎悪の目で見降ろす、
主と、俺の知らない何かの顔が、重なっていた。
「あるじ・・・」
「る・・・き・・・」
最後に俺の名を呼び、そして呆然としながら、俺に背を向け、
主は、何処へと消えていった。
放心状態の俺は、暫く、動けなかった。
だが、今にもこと切れそうな、か細い声が聞こえた。
「・・・ね・・・ごめん・・・ね・・・るき・・・」
「母さん・・・?」
「ほんと・・・は、しって・・・たの・・・だまされ・・・てるって・・・
くに・・・も、こくみんも・・・かぞく・・・も・・・
もう・・・みんな・・・いない・・・わたしは・・・ひとり・・・ぼっち・・・
かえる・・・ばしょも・・・ない・・・」
「母さん!母さんはひとりじゃない!俺が・・・俺がいる!」
「ごめん・・・ね、わたし・・・は、あい・・・せない・・・
どりょく・・・は、した・・・でも・・・むり・・・だった」
愛せない・・・?
あんなに、愛情をくれたのに・・・
「にくい・・・の・・・にくしみ・・・が・・・きえない」
「・・・」
それは、まるでさっきの主・・・
「おねがい・・・あのこ・・・を、
とめ・・・て、くるしみから・・・すくって・・・」
そして、母は毒の入った、壺を見上げた・・・
「・・・」
そう言ったっきり、母はもう、しゃべることはなかった・・・
俺は・・・何時間・・・どのくらい、そのまま呆然としていただろう・・・
そして、どれだけの時間が経ったかもわからない・・・
死に絶えた母たちのそばで、ずっとずっと、動けなかった・・・
・・・そして・・・やがて、部屋に誰かが入って来た・・・
目の色を取り戻した主が・・・
あの妙な闇色の双剣を握っていない・・・
俺がよく知っている・・・幼馴染み、乳母兄弟で、
俺の・・・異母兄・・・主は・・・
戻ってくるなり、大泣きして、俺に抱き着いて来た・・・
そして、その後ろには、もうひとりいた・・・
それは、銀糸の髪を持つ、美しい少年だった。
メイリィ「・・・前書きで騒いでごめんなさい。
語り手さんもいろいろと大変だったのですね」
今回の語り手さん「・・・いえ・・・お互いさまですから」




