兄上対策会議 場外編
「ついに・・・ついにイザナ兄上が帰ってくるんだ!」
レオは顔をほころばせて、後宮でダベるカイとルゼに告げた。
「だれ、イザナって」
「レオ兄上の兄上だよ。ルゼ兄上、知らないの?」
「知らない。誰?」
と、ここでレオがイザナのことを教える。
「ふぅん。別に俺は興味ない」
「ソシエさまと一緒に、魔法の勉強をしようと思ってるんだけど、イルゼは来ないの?」
「・・・ソシエのとこなら、一緒に行く」
「じゃぁ、ルゼ兄上、ちゃんと大人しくするんだよ?」
何故か弟にお説教されるルゼ。
「何で?俺、別に関係ないもん。ディル兄上以外はどうでもいい!」
これがルゼの通常運転であった。
「いや、俺も会うの、初めてだけど。
イザナ兄上と手紙のやりとりして、ディル兄上がマジで意気消沈してるから、
油断したらルゼ兄上も怒られるよー?」
「は・・・ディル兄上が・・・?」
「うん、きっとイザナ兄上なら、
ディル兄上の心を掴むまともな意見をくれると思う」
「わかった・・・会う!」
ルゼは即決した。
最初こそ、ルゼにビビっていたカイだったが
長兄と同じく、ルゼもちょっとずれていることと、
自身の母に上手く言いくるめられて頭が上がらなくなったことで、
苦手意識も吹っ飛び、ディルだけではなく、ルゼの扱いにもすっかり慣れていた。
―――
エストランディスに留学していたイザナが帰ってくる。
それはつまり、エストランディス大公として、正式に就任するということで、
竜帝陛下との就任式に臨むということだった。
そして、正式に皇室から外れることとなった、
竜皇族として扱うことができず、将来エストランディス大公となることが
産まれた瞬間から決まっていた竜帝の第3子は、
竜帝国帝都に帰還した。
それを祝うために開かれたパーティーで、
イザナはレオと再会し、初めて、ディルと直接顔を合わせた。
「お初にお目にかかります、皇太子殿下」
ほんの小さい頃は竜帝城に滞在していたイザナだが、
その後母の計らいで早くより帝都を離れ、
エストランディスに渡っていたイザナは、
ディルと目を合わせるのは、初めてだった。
イザナが、竜帝国の貴族たちから向けられるのは、奇異と嘲笑の目だ。
竜帝の第3子でありながら、竜皇族になりそこない、
エルフ族にもなりそこなった大公。
父である竜帝に形式的な挨拶をしたイザナは、
次にやってきた竜帝国の皇太子・ディランことディルに臣下の礼をとる。
「・・・イザナ」
「はい」
威圧を込めたディルの声にも、イザナは淡々と応じる。
レオは、そう言うところも兄はすごいと感心した。
・・・しかし・・・
「・・・兄上」
「・・・?」
イザナはひょいと顔を上げる。
「・・・ディル兄上・・・」
ごごごごごごごごご・・・っっ!!!
次の瞬間、会場中がしんとなった。
竜帝陛下譲り、いや、それ以上に力を持つ、
竜帝国の氷の皇太子の、尋常ならざる覇気。
それを見て、イザナを卑下する者は、
皇太子に目を付けられてかわいそうにと嘲笑うが・・・
「・・・ディル兄上・・・」
ディルは物凄い威圧を放っていた。
イザナは仕方なく、手紙の時と同じように・・・
「ディル兄上」
と、そう呼んだ。
その瞬間、ぱあぁっと、霧が晴れたかのように、
ディルの背景にお花畑が出現する。
顔は、コワモテなままだが。
「・・・うむ!」
そして満足したらしいディルは、ぐわしっと、イザナの頭に手を乗せた。
その謎の行為に、周囲は首を傾げたが、
ディルはその後もイザナと離れることはなかった。
それを後ろで見ていた、付き添いのエストランディス宰相であり、
イザナが預けられていた宰相家の当主である義父は、レオに駆け寄る。
「その・・・あれは・・・」
「いや・・・多分、最高に機嫌がいいかと・・・」
レオはびくびくしながらも、そう呟いた。
この時、帝都に常駐していたエストランディス王配が、
嫌味でも言ってやろうとイザナに近づこうとしていたのだが、
ディルの襲来に、諦めて手を引いたのだとか。




