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【完結】くじ引きで竜帝国の皇太子妃に選ばれてしまった  作者: 夕凪 瓊紗.com
閑話集 その3

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馬車に揺られて


「んん~~~っ♡このクッキーおいひぃ~♡むぐむぐ・・・

やっぱメイリィたんは・・・最っ高っ!私のスイートパティシエ~♡」


モニカは、帰国の途につく馬車の中で、

お土産に持たせてもらったクッキーをはむはむしていた。


「そうだ、イザナ、ユリアナお義母さまからもらった、

あの芋焼酎、開けてみたいんだけど!」


「いや、ダメだよ。あれ、お酒だろう?」


「でも、おいしいって言ってたし・・・

せっかくふたごちゃんにも竜酒ロンジゥもらったのに~」

ふたごが酒を持っていた件については、

兄からまぁ、一応魔物の枠組みで、実年齢は成人している、

とのことで聞いていたイザナだが。


「帰ってから・・・義父上たちと一緒に飲もう。そのほうがおいしいだろう?」


「は・・・っ!確かに!じゃぁ、干物もおつまみに取っておかないと!」

と、モニカもメイリィたちに持たされた

干物セットをおやつセットから抜いてキープしだす。


「干物は持つから、他にももらって馬車に積んでるし・・・」


「はむはむぅ~~~っ!」

何かを訴えてくるモニカ。

まずは食べてからしゃべれ・・・と、思いつつも、

そんな彼女もかわいいと笑みを漏らす。


「ね、イザナ」


「ん?」


「何か、ずっと嬉しそうだね」


「・・・そうか?」


「よかったね」


「何が?」


「お父さんと、仲直り、できて!」


「・・・仲たがいしていたわけじゃないよ」

今までは、おおやけの場で、挨拶を交わす程度だった。

だから、あんな風に、自身を“息子”だと言ってもらったこともない。

ましてや、竜皇族と認められず、

将来は大公位を与えられて、エストランディスに送られることが決まっていた。


竜帝は自身に会いに来ることも、母に会いに来ることもなかった。

もちろん、実弟にも、おおやけの場以外ではほぼ口は利かないし、

会うこともなかったという。

だからあんな風に、声を掛けて、庇ってもらえるなんて、思いもしなかった。


竜皇族ではないから、自身はあのひとの子どもではない・・・


ずっとずっとそれを言い聞かせて、

竜帝城にいるのも居心地が悪くて、

母の勧めで、早いうちから、

母が信頼している、宰相・・・現在の義理の父親の元で

留学という建前で世話になり、モニカやその兄、従兄のエルタとも親しくなって、

昔から、幼馴染みのようにして育った仲だ。


だから、いつしかモニカの実家がもうひとつの実家になっていた。

けれど、自身は義理の父に対して、

モニカたちと比べて、立ち入れない領域と言うのはもちろんあって、

それが、とても羨ましかったのを覚えている。


きっと、長兄が自分に関わろうとしてくれなければ、

イザナは、ずっとひとりだったのかもしれないと考える。


母と、実の弟はいるが、

母は立派なエルフ族であり、弟も竜皇族。

自分だけが半端な存在で。

いずれは立場も変わってくる。


それでも変わらなかったのは、

あの兄が、いつもいつも、昔から、

兄上を主張してくるからで・・・


誰に何と言われようと、顰蹙ひんしゅくを買おうと、

“兄上”と呼ばせたがる、ちょっとずれた兄。


以前“皇太子殿下”と呼んだら、

物凄い氷のオーラを出してきたので、

慌てて“兄上”と言い直したら、

背景にお花畑を召喚しだすのだ。


「本当に・・・俺は恵まれているのかもな」


「ん?なぁに?いいお嫁さんにかな?イザナくんよ」

と、モニカが頬に堂々とチョコを付けながらにやにやしながら聞いてくる。

どこをどうやって食べればそこにつくんだ・・・

イザナはそう思いつつも・・・


「・・・そうだな、そうかもしれない」

そう言うと、隣に座るモニカの腕をおもむろに引き寄せる。


「ん?なぁに?」


「チョコ、ついてる」


「ひゃえっ!?」

次の瞬間、モニカの頬についたチョコを、

キスをするように嘗めとった。


「んな・・・っ、な・・・っ!?きゃぁ~~~~~っ!!?」


いきなりのモニカの悲鳴に、御者台から声がかかる。


『どうしました!?陛下!?』


「あぁ、大丈夫だよ。モニカがびっくりしただけ」


「はぅ~~~、心臓に悪い~~~っ」

と、さっきの元気はどこへやら・・・

目を回すモニカをにやにやとみていると、


「隙ありっ!」

と、何故か口にチョコを放り込まれ・・・


「仕返しだっ!」

と、自慢げににやりと笑うモニカ。

これはむしろご褒美だ・・・そう思いつつも、

馬車に揺られながら、いつしかモニカが疲れたのか、

イザナの肩に頭を預けると、微笑ましく見やりながら、

もうひとつの故郷が遠ざかるのを、

イザナはもの寂しく思いながらも、

また次の訪れを楽しみに待つのだった。


モニカ「誰か・・・誰か!金髪ツインテールエルフ友の会に入りませんか!?」


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