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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 2.1 竜と王城と紫黒魔術《ヴラックマギア》
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#94 遭遇(2)

「いやぁ、参った参った……この間まで俺は死んでたんだったな、すっかり忘れてた」

いきなり現れた人物が既に死んだ人物の名を名乗る時点で怪しさがあるだろう。しかもなぜか名前がそこそこ広まっているのだ。これから数日間はこんなことが頻繁にあるのだろう。

だが、姿は見られても見つかることがない、ということは。『名前だけが浸透している』という可能性が濃い、と言うよりほぼ確定だ。

どうせどっかの誰かが俺のことを「自らの命を懸けて相手の総大将を討ち取った無名の英雄」とでも称したのだろう。きっと俺のこの姿と実情を見たら「こんな奴だとは思っていなかった」と嘆いてくれるに違いない。

「そういう命懸けの決闘って最終的に死ぬから話としていいんじゃないのか……?いや、俺はそんな決闘したかったわけじゃないし死にたい訳でもないが」

まあ、何はともあれ身の回りが落ち着いてきたらどうにかして名誉とか勲章とかを全部そぎ落としておかねば。どれもこれも平凡に暮らしていく上では必要性の欠片も感じない、「あの人だったらきっとやってくれる」みたいな偏執的な幻想を俺に抱かれても期待をブチ壊して終わるだけだ。なら最初から期待なんて抱かれない方が幾分かマシ。

「俺はミズキみたいに向上心があるわけじゃないしなー……ある意味宝の持ち腐れだな」

自分自身を蔑むように鼻で笑う。その名の通りに宝の持ち腐れだ。そもそも最初から宝なんて求めて転生したわけでもないというのに。

スマホは「手放すと退屈しそうだから」、竜の角は「面白そうだから」持ってきただけ。それがこの通り、どちらも装飾や娯楽品の範疇で済むようなものじゃないマジックアイテムだった。

「……まあ、人生ってそんなもんか。すべての人が自分が使いたいように才能持ってるわけじゃないもんな、この話はやめといたほうが良さそうだ」

意欲と情熱があっても才能がない人もいれば、興味すらなくても才能がある人だっている。人とは固有技能の無駄遣いと恨みつらみで社会が回っていると言えなくもない気がしてきた。

……なぜ話をやめた方がいいかって?話していると自分の得意分野が欠片も無いことに悲しくなってくるからだが、それ以外に何か?

「……あれ、ここどこだ?」

一人でぶつぶつ考えながら歩いていたらよく分からない場所に。古物屋に寄ったあとすぐに大通りに出ておくべきだったな、と少し唇を噛みながら後悔。

だが、直後にふとした既視感を覚える。よく分からないのだが既視感がある、歩いたことはないが実際に見たことはあるような―――。

「ここ……もしかしたギルドの裏路地か?俺の部屋の窓から見えたような……」

上から眺めるのと実際に歩くのでは感覚が違うが、頭の中で俯瞰視してみれば確かに道の構造はとても似ている。日がロクに当たらない狭い路地、道の両脇に苔が必ず生えているほどの湿っぽさ。事実、裏路地はほとんど通ったことがない。

「えーっと、じゃあここが俺の部屋から見えていた部分だとして……もうちょっと東に行けば裏口があるかな?」

いつでも人が来れるように見た目が整っている正面入り口と違って、ゴミ山の中央をくりぬいたようになっている裏の入り口。正確には工房裏口だったはずだ。

記憶を頼りに歩くと目の前には何とも古めかしい金属性のドアが。ドア本体はボッコボコに変形して四隅が錆びているのに蝶番(ちょうつがい)だけは頑丈に補強されているのは、何というか、もう理由が察せる。ここのギルドにはドアを手で開ける人ははたして何人いるのだろうか。

いっそドアノブ式じゃなくすれば良いのでは、と考えながらドアノブを握る―――。

「……ん?」

握った瞬間、周囲から風を切るような音が一瞬だけ聞こえたような気がした。その直後、ドアの五歩左隣くらい先で盛大な破壊音とともに積まれていたゴミの山が吹き飛ぶ。爆発というより、壁の内側から火炎放射が噴き出た感じの見た目。

「なんっ……!?うおっ、くっせぇ!確かにゴミ山……」

既に腐敗したものが焼ける悪臭を辺りに撒き散らしながら転がる有機物。周囲の家とかに散った場合はどうなるんだろうか、と考えていたその時―――。

「げほっ、ごほっ……まさか排熱構築を忘れただけでこんな……」

腰のあたりまである長い銀髪の女性が爆発の煙でむせながら中から出てきた。衝撃で落としてしまった片方しかない眼鏡を拾い、裾でレンズを擦っている。

「……えーっと、あの……」

「えっ!?はい、何か……あっ、ギルドに御用の方ですか?正面入り口なら反対側に……」

「すごい音がしたと思ったら壁貫通してるじゃねえか。実験はしてもいいが外には漏らすなと……どうしたヒサメ」

こちらのことを一般人だと勘違いしている銀髪の女性の裏から見慣れた男性が。そういえば復活してから会ってなかったなと思ったが、この様子を見るに見た目も内情も変わってなさそうだ。

「迷ってたら裏口に来たもので。で、ドアノブ握ったら隣で爆発が」

「…………おい、イザベラ」

「いやいやいや違うんですよ!!!排熱ルートが長かったから組み換えしたんですよ!それがまさか構築組み忘れただけでここまでなるとか思わないじゃないですか!」

「一つ間違えてギルド全壊とかマジで笑えないからやめろ。あ、コイツはイザベラ。工房班の魔術担当……だったよな?」

ジルオに紹介された銀髪の女性は……見た目がいかにも研究者という見た目。型を崩して使いやすいように魔改造したような白衣に右目しかない眼鏡、白衣の内側には何に使うのか分からない工具のようなものがびっちり並べられている。

「最近は何でもやってますけどね。どうも初めまして、私はイザベラ……実はヒサメ君が死ぬ前からいたんだけどね」

「えっ、そうなんですか?」

「実はルイラちゃんとかよりも長いんですよ。……まあ、実際は船が壊れて帰れなくなったからしょうがなく住み着いたエルフですけど」

「今言ってた通り、コイツも亜人だ。元の国だとかなり高階級の魔術職だったらしいぞ」

「問題起こして資格剥奪されそうだったから荷物纏めて船で夜逃げしたオチがこれですからねー……」

経緯の説明がどう考えても頭がいい感じの魔法使いの経緯じゃない。この人、多分ほかの人に勧められたりして適当に受けたら合格しちゃったってタイプの人だ。そんな人じゃなければまず剥奪されそうになった時点で荷物纏めて夜逃げの発想には多分ならない。

「……あれ?俺のスマホを修理したのって……」

「ああ、それは俺とイザベラ、あともう一人いるが……会った方が早いだろうな。呼んで来るような奴じゃない」

「とりあえず中入ります?今の時間だったら外よりかはちょっと涼しいですよ」

誘導されるがままに屋内に案内され、イザベラが木材の断片を張り合わせて爆発で生じた穴を塞いでいたその時―――。

(……ん?)

ズボンの右ポケットに入れていたスマホが謎の振動を起こした。この世界ではネットワークが繋がっていないからバイブレーションが起こるとすれば魔法(アプリ)関連のことなのだが……。

「……あれ?何も来てない?」

不思議なことに、ロック画面には何の通知も来ていなかった。ホーム画面を開いても確認できず。見えない部分の何かが働いたのか?それともスマホ自身たる俺の体に何かがあるという警告なのか?

「……どうした?」

「あ、何でもないです」

何かがあったのに分からないという不安を抱えながら、運命の歯車はひたすら前に回り続ける。

スマホが揺れたのにスマホのロック画面に何も表示されてないって現象、遭遇した人は割りといると思うんですよね。例えるならそう、「コンビニの自動ドアが誰もいないのに開いた」と同じくらい。


Q.なんか最近手抜いてない?

A.ごめん(自覚あり)手を抜いたというかサボってました。

やけに忙しかったりネタが思い浮かばなかったりで全然話進んでないんですよね。文章量はそんな減ってるわけじゃないんですけど内容が薄い。

次回4000字くらいで描写削って内容ガチガチに詰め、いや無理ですね。次回はおそらく魔法理論の回なので無理です。どうにかなってほしい。

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