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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 2.1 竜と王城と紫黒魔術《ヴラックマギア》
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#93 拾い物

「し、死ぬかと思った……あそこに近づくのはなるべく避けよう……」

四肢を車輪のごとく回転させて空を舞ってから十分後。あの後は丁度昼飯を買いに王城から外に出たアルバさんに助けてもらい、今は大通りをギルドに向かってふらふらしながら戻っている最中です。

「……あ、ついでだからあの古物屋でも寄ってみるか」

前からも後ろからも人が流れる大通りから少し逸れ、人気の少ない裏路地のような通りに入って少の外側に向けて少し歩いた場所。周囲は住宅が並んでいるために随分と静かだ。

「……今更だけど、国自体が移し替えしてるのに街の構造は変わってないのか。一体どんな技術を使ったんだ……お、あったあった」

光が入りにくい通りの中でひっそりと営業している古物屋。どちらかといえば売っているものよりも店の外観の方がよっぽど古物な気もする。

ちらりと除く店の中も構造から雰囲気まで変わっているようにはとても思えなく、もはや置いてあるものまで俺が死んだあの数日前から何も変わっていないような気すらしてくる。

「風の噂によれば店主が変わったと聞いたが……まあいいや、何か見ていくか」

ギルドの初任給でエンタープライズの材料になった星の欠片を買った時のあのお爺さんが店をお孫さんに譲ったと聞いたのだが、まあ呼び止めて聞くほどでもない。

「おや、懐かしいお客だなぁ」

「……へ?」

かけられた声に反応して目の前にあるガラス棚を眺めていた顔を左に向ける。そこにいたのは、背骨こそ少し丸くなったように見えるものの、声も仕草も記憶通りのお爺さんだった。

「あっ、どうも……ってか、俺のこと覚えてたんですね」

「いんや。あんまり顔も見えんくての」

でしょうね、と返しつつも少々気が抜ける。さてはこの爺さん、来る人来る人にこの反応してるな。記憶があやふやで視界もぼやけているんだったら個人識別なんて身内レベルでしか出来ていないだろう。

「お店はお孫さんにお譲りしたのでは?」

「ほとんどはもう任せっきりじゃな。だが倉庫内の配置にはいまだに自信があるぞい!」

「おじいちゃん、最後に倉庫入ったの半年も前でしょ……すみません、うちの祖父が」

線のように細い目をどうにかこじ開けながらノリノリで話すお爺さんに、会計机に腰を掛けながら青年が水を差す。どうやら一連の流れらしい。

「いえいえ、本当に何回か来てるのですよ。実際にここの店で売っていた物に命を繋いでもらってるようなもので」

「……?ここにそんな効果の高い魔法道具なんて……」

「ちょうど一年半くらい前にここで星の欠片を買いまして。あれで作った武器が未だに現役なんですよ」

そんなものが売ってたんですね、と興味深そうに話を広げようとする青年の話に割って入るように、お爺さんは細い目でこちらを眺めて呟く。

「……『星の欠片』?……おお、まさかあの少年か!懐かしいのう、確かに見覚えのある顔だと思っておった!」

一年半の間、身体の老化が完全に停止してたから確かに見覚えのある顔と言われればそのはずだ。というかほとんど変わってないはずだ。肉体的な時間経過は一か月も経っていないのだから。

「いやあ、実際に覚えられているとは……ところで、あの星の欠片ってまだあったりしません?素材としては実に優秀で、どうにかもうちょっと欲しいな、と」

さて、ここで話題の切り替え。エンタープライズの材料となったあの黒い歪銀(アマルガム)、その元となった星の欠片がもうちょっと欲しい。正確には、あの素材で別の武器を作りたい。

硬くて圧力に決して負けず、魔力が通しやすくて汎用性が高い金属。条件を見れば武器や兵器の素材としてはうってつけのステータスなのだ。

「あれは……あったかのう?」

「少々時間かかってもよろしいのであれば倉庫を探してくるんですが……」

「あっ、お願いします」

お孫さんと思われる青年が会計机の椅子を押し込んで店の奥に入っていく。店の裏側のスペースが全部倉庫にでもなっているのだろうか、ただの古物屋にしてはスペースが大きい。

「……そういえば、最近は何かと噂が飛び回っちょるなぁ」

「……噂、ですか」

「そうとも。本当かは知らんが、他国の人斬りがこの国にいると噂が流れておる」

そりゃまた怖いですね、と会話を流した感じにしておいてスマホのメモ帳に記録。他国の人斬り、もしかしたらギルドの任務表一覧に何かあるかもしれない。町人の噂ってのはあり得るからこそ噂になるからこれまた嫌なのだ。……まあ、もしかしたら知り合い(ミズキ)って説もありえなくはないが。

「最近は人が生き返る魔法も出てきたと聞いた。こりゃ若返りの魔法もそう遠くないうちに生まれるのぉ」

「お爺さん、狙いが透けてますよ」

「おぉ、これは失礼。女房に逃げられた爺に若返らせる利もありゃせんってか」

全くですね、と返して二人揃って大爆笑。年配の方が自分自身の老いについてネタにするのを笑っていいかは判断が難しいが、まぁ本人が楽しそうなら良いのだろう。

「すみませーん、あの、あったんですけど……」

青年が報告をしに来るが、若干言いづらそうに口をもごもごした途に台車を引っ張ってこちらに持ってくる。それは―――。

「前回のお買い求めって手で持てるサイズだったんですよね?あの、結構大きくなっちゃうんですけど……」

用意されたのは前に買った星の欠片のサイズと比べると数倍近く大きいもの。見た瞬間に思わず「うわっ」と喉から言葉が滑り落ちてしまった。

「こんなもん倉庫に放り込んでおったのか、知らんかったわい!」

「いやお爺ちゃん、これ半年くらい前に倉庫に落ちてきたやつだからね?……えっと、おそらく材質は間違いないとは思うんですが……この大きさ、買います?」

「どうやって持って帰ろう……あ、写真撮って実体化すればいいのか。買います」

二つ返事で購入を即決したこちらに驚きつつも価格の札を探し始めたその時、重要なことを思い出してしまった。店に来るとかそういう以前の問題が。

「…………金、持ってきてないな」

スーパーに来てレジに並んだ直後に財布を忘れたことを思い出すような感覚。天性前に一度味わったことがあるが、恥ずかしいを通り越してもはや苦痛。店員の「何しに来たんだお前」という目線が忘れられない。

……と思ったのだが、異世界ならばどうにかなるんじゃないか?そんな根拠のない自信を押し通せないかちょっとしたチャレンジをしてみよう。

「請求先書いておくので後払いでいいですか?」

「あ、大丈夫ですよ」

異世界とは。というかそもそも商売とは。せめて後払い利用ならもうちょっと疑って欲しいところではある。カード払いとかではなく請求書送り付けのこの世界なら尚更。

「じゃあ請求先とお名前をお願いします。請求書はご住所に後日送付いたしますので」

「西居住区域マルクト通り1番、アズドラーク宿舎内213号室、アサカヒサメです」

「えーっと、マルクトの1、アズドラーク213のアサカヒサ…………え?」

「ん?」

この後、三回くらい聞き返された後にしつこく本人確認されたのは言うまでもない。

コミケ行ってきました!あぁ^~諭吉が解ける音ォ~^

昨日は個人で、今日は友人に誘われてまさかの二日連続。すぐさま床に転がって布団に包まっていたい心境ですがなんとかエナドリでここまで持ちこたえた所存です。

イベントがあるときの執筆は、なるべく早めに終わらせておこうね!……という自虐を踏まえた反省でした。


今回の内容で久々の古物屋なのですが、この作中で一番出てくる店だと思ってます。というかヒサメはまず新品は買わない。転生前も〇ックオフとか結構行くタイプだったんじゃないかなぁ、という妄想です。

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