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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 2.0 スマホと目覚めと雑竜種《デミドラゴン》
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#83 特訓

「……で、俺に何があったんですか」

まず聞かなければならないのは自分自身がこうなった経緯。何があって寝て起きたら一年半時間が経過していたなんてオチがある。

ロールプレイングゲームのストーリーだったらシナリオライターがこんな無茶振りの展開考えた時点で企画に携わったメンバーからストップさせられそうな急展開。

「いろいろあったんだけど……恐らくは私のせいかな」

説明しようとして一瞬黙り、申し訳なさそうな表情になるルリア。随分能天気な人なだけあってしょんぼりしているのはあまり見慣れない。

「君があの大戦で竜化したあと、暴走を止めるために私が叩きのめして気絶させたんだけど……」

「暴走を止めるために叩きのめしたって何なんですか……まあ、はい」

「連れて帰る時にあの黒い板を落としちゃって。そこでどうやら壊れちゃったらしくて」

ふむ、とそこでなんとなく理解が出来た。スマホが壊れれば自分は死ぬ。つまりルリアが運ぶ時にうっかり落として内部の何かが破損、そのまま死んでたという事だろう。

「……あれ?でも俺が生き返ったってことは……」

「ちょっと前までジルオ達が修理してたんだけど……完成した時点ではまだ起きなくて。研究が行き詰ったまま少し放置してたんだよね」

「で、急に俺がなんでか起きたと。……わかんねえなぁ」

多分ルリアも分かっていないのだろうが、自分自身でも分かっているわけでは無い。と言うのも、なんで復活に時差があったのか、なんで寝ている間は意識が無かったのか。

意識は無かったのになぜ体は動いていたのか。動いていたのになぜ栄養を摂取していなくても体が壊れなかったのか。分からないことだらけだが、別に俺は探偵でもなければキラキラ輝く大真面目なヒーローでもない。

「とにかくこうなった」の結果さえあれば生きていけるのがモブの特権。

「……ひとまず、俺はどうしたらいいんですかね?」

「どうしたらいいと思う?」

「俺が聞いてるんですけど?」

そう、問題は衰弱した身体。このままじゃ日常生活すら万遍なく送れない。平和な日常があればいいと心から思っている人間が日常生活を送れないのはもはや生きがい喪失。

「多分栄養不足と筋肉と骨の衰弱だから……筋トレしたら治るよ?」

「首すら満足に動かせない人間にどこから筋トレをしろと言うんですかね」

「……それもそうだね」

おそらく神経は生きている。だが神経を通じて情報を送っても筋肉が動いてくれない。

「その体だとリハビリも辛そうだね……いっそ強化するのもありだけど」

「強化ですか?」

「そう、強化。その角は多分生きてるでしょ?」

ふと思い出したように頭の上に生えている二本の黒い角に視線を向けようとする。手が動かせないし視線が向けれる位置じゃないから見えないが、頭から生えてる存在感はするから今もあるのだろう。

「衰弱した体を亜人種能力に無理やり同調させて全体的に回復するの。どう?」

「どうって……それ要するにまた暴走する奴ですよね!?」

「そうだけど……でもまともにリハビリしようとしたら何年かかるかわからないよ?」

未来に対する不安、今に対する不安。どちらも結局は不安であり、どうせならなるべく今はやりたくないと思ってしまう。だが―――。

今は一刻も早く、この衰弱した体を動かせるようにしておきたいのだ。俺からしたら一瞬だったであろうとも他の人たちは俺を置いたまま一年半を過ごしてしまった。わざわざそんなに長期間も迷惑をかけていられない。

「―――やります。ちゃんと正面から礼を言わなきゃいけない人がたくさんいますから」

「よしきた!今までの責任として私が相手するよ。シャル、今何時?」

「一週目の5時ですね」

「よし、私は工房からヒサメ君の魔導書持ってくるから車椅子お願い!」

一週目の5時、ということは大体午前十時。やはりそんなに寝ていたか。まあ一年半も寝ていて今更数時間が何だという気もしなくもないが。

「……ねえ、ヒサメさん」

「ん、どうかしたか?」

「ヒサメさんはどういう人なんですか?」

「どういう人って……竜の亜人。ここにいる歴はお前より多分短いぞ?」

「いやそうじゃなくて……いろんな人にお話を聞くとヒサメさんの話が一つは出てくるんです。昔に一体何をしてたんですか?」

そんなことあったっけな、と頭の中で思い出そうとして見るもあまり思い出せない。人の名前を覚えるのが極端に苦手な自分としては誰と何をしたかなんて大体覚えてもいないのだが……分かる事と言えば。

「バカ騒ぎした、以上」

どんな人も話しかけやすくて、それと同様に話しかけてくれた。社会から追い出される亜人と云う同じ立場であるが故に理解もしてくれた。

大層に大きな事件や事故が無かった分、日々の些細なことが色んな人の記憶として残っているのであろう。

自分で思い出せないのは少々残念だが、相手から覚えて貰えていることこそ幸せなのだ。相手から認識されない恐怖を知っているからこそ、このギルドの人の良さが伺える。

「何かをしたって訳じゃなくてそこにいただけだな。それでも楽しかったが」

その空間にいるだけで雰囲気を乱す可能性があると判断されて追い出される昔の世界よりも数百倍は過ごしやすい。自分自身の心の為にも、他人の心の為にも。

少し経った後、ドアを勢い良く開けてルリアが入ってくる。

「はいこれ!きっと直ってる筈だけど……」

「お、ちゃんと電源が付く……ホーム画面表示しただけでごっそり電源削れた!?」

「ほらほら車椅子乗って!地下室行くよー!」

二人がかりで体を持ち上げられ、車いすに乗せられた後に階段を下る。地下一階のさらに下、三階分くらい階段を下りた先。

ドアを開けた先には、何も置かれていない、木目の板を前面に張り付けられた広い空間が広がっていた。

「ここがトレーニングルーム兼兵器実験室。とにかく広いよ!」

「……こんな部屋ありましたっけ?」

「最近できたの。既にジルオがいろいろしてるから部屋の隅がちょっと焦げちゃってるけどね」

確かに入り口から見て右奥の壁が全体的に黒くなっているのが見える。

「さて、ここでひたすら亜人種能力の訓練をするよ!時間は……今が5時だっけ。じゃあ60時間くらいかな」

平気な顔で数字を告げるルリアに一瞬納得しかけたものの、すぐに違和感を感じる

「……60時間?」

「そう、一日丸々使って訓練するよ!なお、睡眠時間については存在しないと考える事!」

爽やかな笑顔で言い切るルリアに、到底無理ですとはとても言えそうになかった。

身体を治すための訓練が身体を壊しそうなメニュー、本当に大丈夫なのだろうか。

ランダムだからしょうがないんだろうけどさ、せめて、せめて最初にバーストじゃないほうのアサルトくらい持たせてくれても良くない……?

あ、どうも。最近フォートナイトしながらソシャゲの周回を繰り返す日々です。友人に勧められて始めたけどそもそも私FPS自体疎いんでめちゃくちゃ大変。

そう言えば最近遂に通販で買っちゃいました、モンエナの箱。一日一本で飲んでるけど割と元気です。ゲームしてたり小説書いたりしてるせいで視力は絶賛下降中ですが。メガネとかそろそろ考える時期ですかね?


あ、このままだとヒサメはあと四回くらいは地下から出られません。一瞬で一年半ロストしてるからね、しょうがないね。

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