#66 活劇
「あの人の魔法の特徴ってわかりました?」
「いや全然……属性が多分効かない、あと目に見えない攻撃してくる……」
「まあ、私はそういうの全然気にしないんですけどね!」
「じゃあなんで聞いたんだよお前……」
わざわざ助けに来てくれて、体がズタボロな状態だがとてもイラッとした。
なんかこう、本心から「じゃあなんでだよ」って気持ちが湧いた。
「えーっと……新しい人、その亜人種の人と知り合いですか?」
アズマはどうやら先ほどルイラの不意打ちで転がされても余裕で立ち上がり、そしてまだ話しかけてくる。
胃落はハンマーではあるものの、先端が氷柱でかなり尖っている。それでもダメージを負わないということは防御バフでもあるのだろうか。
「私ですか?まあ、このデミなドラゴンとは知り合いですけど」
「その人が特別って訳じゃないんですけど、後衛の人たち弱すぎません?一瞬でほとんど飛びましたよ」
アズマはなんか物足りないと言わんばかりに煽りとしか受け取れないような発言を堂々と投げる。
それに対し、ルイラの答えは煽りどころか素で受け止めていた。
「いや、使えない集団だから後衛なんですよ……ちゃんとした戦力と当たりたいのであれば本国に戻ってはどうですか?」
「いやー……今更戻ってもどうにもならないし……だったらこっちを攻めて痛み分けくらいにした方が良いかなって」
言いやがった、コイツ国王なのに「どうにもならない」ってキッパリと諦めやがった。
「発想としては合ってるんでしょうけど……あなたに言う事があります。一つ、国王がやる事じゃないのと、もう一つ」
ルイラは胃落を左手に持ち替えて、そして右手で地面に転がっていた―――先ほど俺が使ったエンタープライズを拾い上げた。
指をさす代わりとばかりにエンタープライズの砲口をアズマに向ける。
「私はヒっくんのような、コーヒー牛乳みたいな甘ったるい性格はしてませんよ」
トリガー部分から魔力を流し込み、エンタープライズからは甲高い機械音が鳴り響く。だが、いつもと違うような、不思議な音。
「その馬鹿でかい物を当てると?先ほどその人も試してましたよ」
「さて―――ご存知ですか?大砲は、当たらないと思い込んでいる突撃兵によく刺さるんですよ」
ここで甲高い音の音程が一定になる。つまり、チャージ完了の合図だ。
「っせいッ!!!」
歯と腕に力を入れながらトリガーを引き込むルイラ。そして次の瞬間―――。
パスン、と軽い音とは裏腹に、アズマは謎の大爆発を起こした。
「ほら、だから言ったのに。油断してると刺さりますよって」
何やってんだアイツと言いたげな顔のルイラは溜息をつきながらクールタイムに入ったエンタープライズを地面に置く。
置いて前を向いたその丁度のタイミングで、爆風の中からアズマが片手剣を構えた状態で飛んでくる。
ルイラは読んでいたかの如く胃落で先端を捉えて横に流す。どんな剣でも剣先が相手を向いていなければ斬れない。
先程までへらへら笑っていたアズマの表情はどこへ、歯を食いしばって殺意剥きだしの臨戦態勢で聖剣を抜いて振りかぶって来たのだ。
「何ださっきのは!あんなステルス機能は先ほどは無かったぞッ!」
右手で振る聖剣を胃落で右へ左へ、先端を捉えては体軸の逆方向へ流す。
「そりゃあヒっくんの時には無かったでしょうよ。私のオリジナルですもん」
「あれは魔法道具ではないのか!?魔法道具なら決められた魔法しか使えない!ならば一体―――ごふっ!?」
「その発想から頭が凝り固まっているんですよ。ねぇ、ヒっくん」
疑問を解消できずに感情的になった瞬間を見逃さず、その瞬間にルイラは聖剣の先を地面に叩きつけ、剣を戻すまでの瞬間に胃落を胴に打ち込む。
「ヒっくんはその大砲、属性を使用してますか?」
「へ?……いや、使ってない……というか、俺の属性知らない……」
「その大砲、実は属性弾が使えるんです。火属性だったら焼夷弾に、水属性だったら豪雨放射弾になるらしいですよ」
……自分の武器なのにその機能は初耳だ。そもそも属性の使い方を知らないのもあるが。
呆気にとられて口を開けている様子を見て「本当に知らなかったんですね」と苦笑いすると、体勢を立て直したアズマが再び剣を振る。
「だとしても先ほどの大砲は納得がいかない!四大属性ではない、合成属性でもない!先ほどの魔法は一体なんだ!!!」
怒りにまかせて剣を振るアズマの権を一回ずつ受けていたルイラが、アズマのセリフが終わると同時に視界から一瞬で消える。
「魔法でも何でもないですよ、魔力の塊ですから」
後ろから声がする、それに反応して振り向くと同時に顔を殴り飛ばされる。右回転で振り向いた首がさらに回されて、回転して地面に叩きつけられた。
「いろいろ情報は聞いてますよ。『万能王』でしたっけ?確か全ての魔法が使えるんでしたよね」
ウェルギスでとんでもない魔法の組み合わせ方をした少年が酒場で騒ぎを起こした、という情報はアズドラークにも回って来ていた。
その情報は隠密役から広報へ、そしてルイラに伝わっていた。そしてその少年がその後、国王になっていたことも。
「そうだ、全てが使える!だがワープなんて存在しない、速度上昇が御の字だ!一体それは何の魔法だ!?」
「だから魔力の塊ですって。魔法ですらないですよ」
アズマの表情は固まってしまった。殴り飛ばされた右頬を痛がることすら忘れているようだ。
「私は空間魔法が使えるんじゃなくて『空間属性』なんですよ。正確には時空間接続操作なんとか属性らしいですけど」
ややこしくて覚えてないし、そもそも対象者が少なすぎて分別しなくても問題が無いんですよ、とルイラは続ける。
「空間移動の魔法が無いのはそれです。魔法じゃなくて魔力なんです。魔力を使おうとしたら勝手に発動するんですよ」
「あれ、でもルイラ、確かその空間ワープって詠唱あるよな……?」
「ありますよ。普段使うのが魔力を使用するもの、全機能を使うのならば魔法としての詠唱がいります」
「その詠唱が必要な物は魔法じゃないのか……?」
「対応する魔力が必要らしくて、魔法辞典にも載らないんですよ。使いにくいとかじゃなくてそもそも使用不可能な魔法って珍しいんですよね」
話を纏めると、随分ややこしくなったが―――。
・空間魔法を使う者は魔力が既に『空間属性』を帯びているらしくそれ以外が使えない。
・逆に、空間属性を帯びている者でないと空間魔法はいくら努力しようと使うことが出来ない。
・空間魔法を使うことは禁術ではなく、「空間魔法を使える魔力に変異する魔法」が禁術らしい。
つまりアレだ、才能とかそれ以前に生まれた時点で分けられた特殊技能ということだ。
「ヒっくんの大砲に当たったのは発射された時点で『体の中に転送された』からですね。避けようがないんですよ」
「えっ、じゃあアイツなんで無傷なの!?」
「ガチガチにレベル上げた自動回復でもあるんじゃないですか?いくら回復しても痛みはありますけどね」
顔中が意味不明な表情をしたアズマがよろめきながら立ち上がる。現状に理解が追いついていないようだった。
「じゃあ、なんだ……僕が劣る部分があるのか……?」
「まあ、速度反射とか上げまくれば似たようなことは出来ますけど、身体の負担が異常なまでに上がるからやめた方が良いですね」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああッッ!!!!!!!!!!」
目を限界まで開きながらこの世の終わりとばかりに叫び、右手の手のひらに自動で出てくる魔導書を開いていくつもページをめくる。
つついては手に写し、つついては手に写しを繰り返してページをめくる右手は文字で黒く。
そしてその右手を魔導書に叩きつけた瞬間、アズマは残像しか見えないほどの高速移動でルイラの周りを周回軌道を始めた。
「僕が、この無敵になった僕が、劣っている部分など、あるはずがないいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!!!」
ルイラは一瞬驚いた表情をしたが、一瞬で肩を落とし、こちらを向く。
「…………」
「えっ、何!?」
「……いや、なんでもないです」
ガッカリするような安心するような、微妙な表情を見せてルイラは再び前を向く。そして―――。
眼で追いつけないほどの高速移動をするアズマの顔面に、正面から胃落を打ち込んだ。
周回軌道と逆回転を、一周だけ顔面に当たるように配置してワープをコンマ刻みで繰り返す。
その結果、見事にアズマの顔面は胃落に直撃するように当たりに来る。高速移動は出来ても、それを見切る動体視力は無い。
手ごたえを感じたその瞬間、ルイラは吐き捨てるように呟く。
「その負けず嫌いな感じ、既にヒっくんにすら劣ってますよ」
自らの速度で、アズマは顔面を打ち付けた状態で回転しながら地面に転がされた。胃落に、少しばかりの血痕を残して。
「結局自爆してくれましたね、なんかプライド高そうだったからこうなるとは思ってましたけど」
「俺が全身ガッタガタな時にすんげぇことやってたな……」
「さて、安全なうちにルリアさんに撃退報告しておかないと―――」
ほいほい、と返事をしてぎしぎしと悲鳴を上げる両腕で全身を押し上げようとした時、何かが飛び散った。
「ん?……―――おい、ルイ―――」
顔に散ったその液体を手に取って色を確かめ、どういう事だと聞く前に原因がその目に飛び込んできた。
「…………え?」
ルイラは悲鳴を上げる暇もなく、口から血を吐いて膝から崩れ落ちた。貫かれた左の脇腹からは見覚えのある剣が飛び出ている。
一体どうなっている、と剣の手元を眺めると―――。
「いやぁ、すごいやりくちでしたね。まあ自爆なんですけど」
相変わらずヘラヘラを笑った、手に返り血を付けたアズマがそこに立っていた。
「……ッ、テメェ、何で……!」
「空間魔法が使えない理由は分かりましたけど、それ以外はおそらく全部使えるんですよね。分身とか」
先頬戦わせていたのは分身だったのか。そして本体は巧妙に隠れていたと。
「本体だったらあんな自暴自棄な戦い方しませんよ。分身でもあまりしないけど」
これも作戦ですね、と笑いながらアズマはルイラの腰に右足を当て、脚力で剣を洞から引き抜く。飛び散る血は、ヒガンバナの様な綺麗な赤色だ。
「さて、これで犠牲がまた一つ、状況は変わらず。どうします?」
そうそう、こういうの。こういうのをずっとやりたかったんですよ。
改行は気を付けて書いてみたけどこれくらいで良いでしょうか?三点リードはともかく改行は全く感覚が掴めてないので勘でやってます。
この投稿時点で#3まで改変したのでどんな形式になるかはそちらをご参照。特に#2は内容から随分変えました。辻褄合わなかったししょうがないね。
今までの改変は随分遅れるので許して、ほんまにゆるして。
そもそも三点リードが結構多くて、改行チェックするために全部目を通していかなきゃならないのに、さらに内容を足すとなると一ヶ月で全部はとても無理難題。
一週間に5つくらいのペースで改変していくのでそんな感じで。
どうでもいいけど、私の腹は超絶レベルで弱いです。キシリトールですぐに腹を壊します。
でも好きな物はエナドリとアイスクリーム、そして牡蠣。人生って理不尽ですよね。




