#62 一転攻勢
「しゃおるぅぅぅぅぁぁぁぁあああああああ!!!」
襲撃犯後方、つまり侵入してすぐに周囲の破壊工作に映ったメンバー。単純な破壊活動だけを命令されているが故に「他の作業が出来ない」し、「他の事を気にしなくて済む」。一番の重要問題であるルリアの状況確認を強制されていないだけジルオにとっては随分と楽な仕事だった。
「ふぅーっ、金床以外を叩くのは随分久しぶりだな・・・グランツ!」
「ほいどうしたジルオの旦那ァ」
誰もいない筈の空間に呼びかけると即座に返事が帰って来て、そして影すらなかったはずの場所からグランツが現れる。まるで壁に溶け込んでいたかのような隠密。
「今の状況はどうだ、俺達が破壊やってるのは良いが止めに来る番兵の数がいささか少なすぎやしないか?」
「どうやらバカ二人がかなりの量抑えてるっぽいッスよ」
「ちゃんと名前を言え、ウチのギルドはバカが六十数人いるんだからな」
「ルリアさんが武器庫や貴族区域城塞を突破済み。人殺しはそこまでしてないけどとにかく破壊の限りを尽くしてる感じ、まるで怪獣の突進ッスよ」
クレムリン、日本に於いてはロシアにあるモスクワ宮殿を指すことが多いがこの場合の意味では「城塞」。城より後方にある貴族階級の居住区域は区別化が義務付けられているため城塞がある。国民によっては城塞の奥は別の国と呼ぶ者もいるそうだ。
その身分の差を作らなければならないために、クレムリンはピッケル一本では貫通できない程に厚く作られている。魔法によって切り出された岩盤をそのまま使用しているらしく、空を飛ぶ以外に中に入る方法はない。一度外に出たら出れなくなってしまうので貴族階級の人間は飛行系統の魔法が仕える魔術道具の所持を義務付けられているそうだ。
そんな破壊不可能難攻不落の岩の砦を、ルイゼリア・グロリアードは利き手の拳一つで無力化した。立ち止まった後に少し溜めた右拳を放つと、岩盤にひびが入る前に右拳が岩盤を貫通したんだとか。
「まあ、人殺しはなるべくするなって言ったのは俺自身だからな。で、もう一人のバカは?」
「えーっと、レイラ・・・あ、フルネームで言った方が?」
「いいから内容を言えって」
「こっちはほぼ真逆。建物の破壊はそこまででもないけど前線の分隊に当たってて、そして血祭り」
「・・・恨みが出たか。まあ人殺しを肯定する奴は大抵そんなもんだ」
恨みや憎しみはそこまで肯定できる感情ではない。しかし、その感情はとてつもないパワーへと変えることが出来る。そのパワーがどう使われようとも、生み出される行動力は凄まじいものだ。
「いつもだったら真っ先に止めるべき案件だが今回ばかりは別だ。それは放置していいだろう、ルリアはやることがあるし」
「じゃあとりあえず現状維持ってことッスねー」
本当に報告だけだったか、とつまらなさそうに呟きながらグランツはまた壁の陰に溶け込むように入って行く。
「さて、結局やることはこっちで注意引きつけて破壊工作だな」
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァ!!!」
走りながらタックルをするだけで壁を吹き飛ばし、武器を担いだ兵士は腕を振るだけで吹き飛ぶ。貴族階級区域は侵入そのものが想定されていない為、兵士もそれほど多くは無い。若干金がかかっているからか防護服は少々硬いものになっているがあまり変わってはいない。
「道を開けろ!開けなければブチ破るだけだけどね!」
走る先に左右から行く手を阻まんとばかりに身なりの良い護衛数人が立ちふさがる。
「侵入者め!これ以降は進ま――――ッ!?」
言い切る前に、ルリアは正面にいた男の顔面を勢いのついた右拳で殴る。
「邪魔っつったでしょ!!」
「「させるか!!」」
左右にいた護衛が振る剣をしゃがんで回避し、もはや光る部分も残っていない錆びた短剣を抜いて、足首を円を描くように斬る。
錆びているため斬れない。だから、これは斬ると呼ぶよりも「殴る」に近い。堅い鉄の棒で足首を殴られたようなものだ。ルリアの筋力で殴られてしまっては骨折しても納得できる。
うめき声しか出せなくなった護衛を気にもせずに前へと走る。狙いは貴族区域―――ではなく、王城の裏口。
貴族区域はレイラが盛大に荒らしてくれるだろうと見込んで、先に王城を制圧してしまおうという考え。王様を潰してしまえばそれだけであっという間に全体の士気は下がる。
王城に正面から突撃しなかったのは道を開けておくため。ジルオなどがいればそれこそ一発打開が可能だが、わざわざ道を切り開くのに魔力を消費してもらっては困る。なるべく早めに出来ることをやっておこうという発想に至った。
そして思い立ったらすぐ実行、王城の横を走りながら突如右拳を走りながら構えて壁を叩き割り、そこから通路に侵入する。前回入った時に大体の通路の位置は把握していた。
(あのガキは私に私怨を抱いてるはず!だとしたら上で見ているよりも自分で手を下しに来る!そこを狙って―――)
通路に入って少し走り、そして重大な問題が発生していることに気が付いて足を止める。
王城の正面玄関内部、そこに王城の見取り図のようなものがあったのだ。それの記憶通りに動いているのだが。
「・・・あの見取り図、どこが南なんだ?」
そう、方角が書かれていなかった。城をどっち方面に見ているのかが分からないし、そもそも伏兵や罠を仕込むくらいに警戒していたんだから普通に見取り図を配置するわけがない。これはどうするべきか、考えて三秒で諦める。
「・・・よし、総当たりでいいか!」
Q.魔法の名前と強さ云々
A.基本的に名前が長ければ長いほど強い。強い魔法は「その魔法の錬度を上げている(質を上げるためにさらばる詠唱がいる)」か「違う要素を足している(足し算なので必然的に名前が長くなる)」の2パターンにしています。
大体が英語のスペルを弄ったりしたものですが、地域によっては違ったりもします。カガミマチなどの和風な国では御札や祝棒を使う魔法で、和風な名前になったりします。ネタバレになるので伏せるけどとある国ではドイツ語だったり。魔法の名前は地域の意味によって全然変わってくるので魔法を知るには言語を知る必要があるんです。だから一部の人はドイツ語を知ってたりするんですね。
まあ、そんなノリで読めない魔法や名前が無い魔法もあります。いつか私が混乱しそうですね。
実はややこしいのですが、ヒサメは文字が文字と認識できていないだけで、単語の並び方は英語とかと全然変わりません。見た感じ意味が分からなくても文字の詳細を調べて並べれば意味は分かるようになっています。まあ、ヒサメはいちいち辞書を引くなんて面倒なことはしないでしょうけど。
(学力試験)すっげぇキツかったゾ~




