#54 出発
「・・・暇じゃな」
「暇ですか」
「暇じゃ」
「だってよミズキ、何か相手してやれ」
「嫌だよ、姫様いっつも暇してるもん」
「と従者は申しておりますが」
「一理ある」
「あるのかよ・・・」
とはいえ、確かに暇。人がいないとここまでやることが無いのか、と言った感じ。
「だからってカウンター来ないでよ・・・ヒサメは玄関カウンターの見張りがあるでしょ」
「『本日は休業日です』って札があったからドアにかけておいた」
「なんでギルドなのにそんな札があるのよ・・・」
「え、それ俺に言うの?」
現在、ギルドの中には簡単に数えられるほどしか人がいない。遠征に選ばれなかったメンバーはそれぞれ別のことをするのだが、余った任務を押し付けられてしょうがなくこなしに行った人もいるので、ここにいる数名を除けばギルドの中に人はほとんどいないだろう。
「ジルオさんもグランツさんも遠征行っちゃったしなぁ・・・ライネスさんは王城の見張りに行っちゃったし」
「王城の見張りって普通は兵士がするもんじゃねえの?」
「その兵士が一緒に遠征行ってんだからしょうがないんじゃ?第一この国、兵士っつっても自衛団程度の戦闘力しかねぇぞ」
「なぜこの国はそんなに兵力が薄いのかの?」
「・・・なんででしょうかね・・・レイラ分かる?」
「・・・さあ、私にはちっとも分からないわ」
「奇遇だな、俺もだ」
隣に座っていたカリンとミズキから顔をそらしてジョッキに注がれたΣAXを胃に流し込む。
言えない。「少し前に自分たちが王城に乗り込んで荒らしまわった挙句兵力をズタボロにしました」なんて誰が聞いても自業自得にしか思われないような事を言えるわけがない。
そもそも国自体が東京都よりも小さいようなこの国が、遠征の人員を残したまま拠点防衛できるほど兵士を抱え込んでいるとは到底思えないのだ。貨幣経済の水準も食物生産も労働で得られる賃金もギリギリ、どうやってこの国は成り立っているのだろうか。
「ルイラはなにしてるかしら・・・トラブル起こしてないといいんだけど」
「さっき『変な生物見つけた』って騒いでたっぽい」
「・・・何よそれ」
「いや俺に言われても・・・」
直接テレパスが来たわけでは無いのだが、SNSを開いたら「最近のハイライト」という枠でルイラが「何今の!なんか、なんかすごいの!すごいやつ!」と思ってたらしくタイムラインに表示されていた。フォロー状態になっていると距離関係なくタイムラインに思っていることを流すようだ。
(・・・これ、親しくなったら心のうち全部バレてるって事だよな・・・結構危険性の高いタイプの魔法なのだは・・・)
アプリに魔力を通して魔法を使うこのスマホは『どんな魔法が入っているかは選べない』。写真アプリのように汎用性に富むもの、ボイスメモのように使い道が若干変化しているもの、そしてSNSや時計のように「使い方一つでいろいろ狂うもの」。
時計アプリは使い方が未だに良く分からないのだが、ストップウォッチのような表示に「開始」「停止」「切り取り」「貼り付け」というボタンが存在しているもの。時間を管理するアプリで切り取りと貼り付けという単語からして見るからにヤバいと認識。
「ルリアさんとか正面から喧嘩売ったりするタイプだからなぁ・・・他国の王様相手に問題起こさなきゃいいけど」
それからしばらくした数時間後、日がもう暮れかけていた頃。遠征メンバーはアズドラークを出てから十数時間は歩いていた。
「・・・来た・・・来た!王都ウェルギス!!!」
「ルリアさんどうしてそんなに叫ぶ元気あるんですか~・・・」
「落ち着けルイラ、アレは体力バカでもあり筋力バカでもあるからな」
「そう言うジルオさんもそんなに疲れてないのはなぜなんですか・・・?」
西門から見える、国の中央にそびえる巨大な城。そしてその周辺から群生するように伸びる商店街。間を挟むように一軒家が隙間を埋めており、きっちりと間詰めされた町の見栄えは称賛に値する。
国内に入ると人の数に合わせて広めに整備された道路と歩いていて飽きないモニュメントが適度に配置されている。
「・・・こうやって見るとアズドラークに似てるね~・・・」
「アズドラークが似せて作られたからな。元々は西の調査の為だけに作られた国だったはずなのに未だに西側の調査されてないからな」
「あの修行道ね・・・一体ヒサメ君はどうやってあの荒地を抜けてきたんだろう?」
芝生が適度に生え、気温も湿度も人体に適切なくらいの温度を保った平原、ヒサメが一番最初にこの世界で訪れる場所となったあの大地。
「どこまで続いているのかも不明、あの先に何があるのかも不明。確か昔からの自殺の名所だよね?」
「行った奴は誰も帰ってこなかったからな。しかし向こうから訪れる奴は時々いる、と」
「不思議だよね~・・・あの先には一体何があるんだろう、いつか見に行ってみたいね」
「なるほど、お前が行ってみたいのは地の果てか。それも面白いだろうな」
「ジルオは生きたい場所があるの?」
「俺は・・・空の果てに行ってみたいのさ。夜になれば空に浮かぶ光の大群、それが一体どうなっているのか、どんな光景が広がっているのか、どんな物質があるのか・・・死ぬまでには行ってみたいな」
「んもー、ジルオいなくなったら鍛冶系統全部止まるんだからね?せめて私よりかは長生きしてよ?」
「ハッ、持病持ちで死にたがりの純人間よりかは長生きできる自信はあるさ。ほら宿探すぞ、どうせ面会は明日だろ」
「・・・思ったんだけど、私たち基準で宿選んじゃっていいの?一国の主が同席してるんだよ?」
どうすればいいのか、と言いたげの表情のルリアとジルオが後ろを向くと目をキラキラさせながら周囲を見渡して騒ぎ立てるお姫様。長年父親に王城の一室に閉じ込められていたからなのだろうか、国に来てからのテンションの上がり方が凄まじい。
「・・・まあいっか!」
「考えるだけ無駄だな、これは」
一方その頃同時刻、ギルド内部食堂。
ヒサメはギルドの近くにいた、捕まえやすかった黒猫をカウンター席に置いていろいろ試していた。
「・・・何してんの?」
「いや、純動物の心の内部もわかるのかなーって」
「その黒猫どうしたのよ・・・」
「少し前からこのギルドの周りにいたぞ。妙に人懐っこかったから捕まえて実験中」
ふむ、どうやら動物相手でも心の内を探れるらしい。この猫はとても腹が減っているんだとか。
「・・・おし。レイラ、ミルクでも貰おうか」
「アンタに出せばいいの?それともその猫に出せばいいの?」
「どっちも」
「アンタも飲むのね・・・」
これで分かった事がある。SNSは多言語に対応しているが、翻訳は対応しない。
猫の鳴き声は翻訳アプリが常時発動しているこの耳でもただの鳴き声のまま。
心に思っていることが表示されるからSNSには表示されるのだろうか。しかし、実際にこの世界で話されている言語を俺自身が聞き取ることは出来ない。理解も出来なければ句読点がどこにあるのかすら不明な音の塊。
ならば、この世界で話されている言語は猫の言葉と同じように聞き取れないのでは?理解できていない他のルールがまだどこかに?
「はいミルク」
目の前に置かれたのは猫用に平たい皿に出されたミルクとジョッキに注がれたミルク。
「・・・なんでここのギルドはなんでもかんでもジョッキで出てくるんだ」
「だから『アンタも飲むの?』って聞いたじゃない」
「こんなものが出てくるとは普通なら思いもしないだろ・・・」
まだ終わんないの?(満身創痍)
とんでもない話すると実はこれ、まだ前半です。つまり同じような量があと半分。さすがに飽きてきた・・・飽きてこない?
終盤は(多分)書いてて楽しそうではあるんですがそこまでたどり着くのがめんどくさい、という率直な感想。これ含めてあと三回くらいで前半が終わるので学生の春休みが終わるまでには間に合うんじゃないかとは考えてます。まあ、そうなったら四月に食い込むことになりますが。
春から高校生の方は「何もしなければ成績は下がらないけど上がりもしない」と覚えておくといいかもしれません。春から大学生の方は「自分の人格を殺してでも教授に媚を売る」ですね。
社会人の方は・・・四月から新卒含めいろんな人が職場に入ってくるので、その人たちの責任をどうやって被せられないようにするかが大事らしいです(親戚談)。
とにかくどの世代も「説教を美徳」と考える頭の中一面お花畑な大人が結構いたりするので、そんな人に説教を受けた時には「帰ったら何しようかなぁ」とか考えて思考を別方面に持って行った方が楽です。説教ジジイババアには大抵話が通じないので。
そんなわけでいよいよ四月、私は花粉に大敗を喫していますが元気に過ごしています。季節の変わり目は体調を崩しやすいのできちんと体調管理を心掛けてくださいね。
まあ私、いろんな人にアドバイスできるほど高学歴ではないんですけど。




