#52 衣装
それから数日、特に何も無かった。
正確に言えばほとんどの人が遠征の準備をしなければならないために余裕なんて存在しなかった、が正しい。
俺はメンバーに選ばれなかったがために事務書類を手伝わされ、ルイラはルリアさんとスケジュール調整の打ち合わせをするようになった。
そして、遠征実行日の二日前―――。
「・・・服装ってどうするんですか」
ふと、カウンターに積まれた書類から目を離して思ったことを口に出す。遠征と言えばそうなのだが、国の王様に会いに行くのだ。ラフな格好ではさすがに失礼ではないのだろうか?
「・・・・・・・・・・・・」
口を開けたまま目を丸くしてこちらを向くルリアさんを見るに、恐らく何も考えてなかったことが伺える。本当にこの人は社交辞令的なことは頭にないのだろうか。
「・・・確かにそうだ・・・いくらなんでもこの恰好のまま行くのは・・・」
「ダメですよね。ルリアさんの格好どう見てもやんちゃな町娘ですもんね」
「もう娘って年頃でもないんだけどね~・・・この服装が一番動きやすくって」
普通の二十代女性は服装に動きやすさなんて求めない。でもこの人の事だからそういう常識は抜け落ちていると仮定して先に進む。
「どうするんですか?あるとしたら王城襲撃時のローブくらいですけど」
「アレ黒いだけだし魔力耐久皆無だからね~・・・新しく作らないとダメかもね」
「・・・あと何日か知ってます?」
「知ってる・・・知ってるけど、うーん・・・」
まさか直前にその問題があったか、という顔をしているが服装は一番最初に考えるべきではないのだろうか。第一印象的な意味でもかなり大事にする部分だと思うのだが果たして。
「どんなのにするんですか?ここのギルドに服を作れる人なんていましたっけ・・・」
「人員は街の人に協力を仰げばいいんだけど・・・どうしようかなぁ」
「人と会うんだからしっかりした生地が良いと思いますけど・・・」
「・・・ヒサメ君さ、日常生活でしっかりした服着てるって言ってなかった?」
「はえ?・・・あ、制服か」
一瞬何を言っているんだと思ったが瞬時に理解。まあ、確かに生地はしっかりしているし、実用性も十分だが・・・この世界で再現なんて出来るのだろうか?
「確かにしっかりしてましたけど・・・どんなデザインしてたか覚えてないですよ」
「・・・持ってきてない?」
「持ってきてないです」
残念そうに納得をするとともに呻き声を上げるルリア。そもそも制服、特にブレザーはとてもかさばる。持ち運びにはかなり不便だし、自分が最後に着ていた制服は既に雷で焼き尽くされているだろう。
「・・・あ、いや待てもしかして・・・」
制服を買うのは必要になる少し前、つまり三月くらい。春なのだ。丁度その時期はスマホを買ってもらった時期と同じくらいになる。という事は―――。
「・・・ルリアさん、ありますわ」
「あるの!?」
「多分ありますね・・・これ・・・」
慣れた手つきでスマホに魔力を通し、写真アプリを開いて写真を実体化。机の上にプリントした写真を置いて魔力を流すと、そこには新品に限りなく近い懐かしき制服が上下揃って現れた。
・・・恐らくなのだが、スマホを買ってもらってはしゃいでいたのだろう。何でもかんでも写真を撮りたくなっていたのだろうと考える。そうでなかったらなぜ画像フォルダの中に自分の制服の画像がある。その画像に近い日時に謎の自撮りがあったりするのもきっとそういう事だろう。今見れば髪の毛が黒かった頃がとても懐かしく感じる。
「何これ、すごい硬い生地・・・これ本当に布?しかもいろんなとこに穴がある・・・でも貫通してない・・・あ、ここに何か入れるの?作った人すごいね・・・」
「しかもコレを全員着させられます」
「高くない!?お値段張るでしょこれ!」
「結構高いですよ・・・ウチは家がそんな裕福じゃなかったから割と苦労したって聞きましたね」
「ちょっとこれ着てみて!どうなるのかすっごい気になる!」
「え、俺が着るんですか!?でもワイシャツが・・・あるな・・・」
なぜワイシャツまでご丁寧に付属しているのか。ご都合主義なのか、それとも写真を撮った時に下に隠れていたのか。
「・・・はい、こんな感じですね」
着ていなかった期間はそんな長く無い筈だが、なぜだか随分懐かしく感じる。
「おおぉ~・・・すごい、黒と白でキュッって締まったイメージがあるね」
「そういう物ですからね」
女子の場合はいくつかパターンがあったのに男子は社会人のスーツのようなデザインのものしかなくて当時は生徒からいろいろ言われていた制服なのだが、こんな全然関係ない場所でデザインが役に立つとは思わなかった。
「よっしゃ!ちょっとそれ借りていい?」
「良いですけど・・・どうするんですか?」
「実用性の追求をしてくる!魔力耐久はそれ相応の素材を使う必要があったりするからね」
「なるほど、はいどうぞ」
ルリアは脱いだばかりのブレザーとズボンを持ってカウンターから風のように外へ飛び出していった。
「・・・なあレイラ、あの人いろんな人から嫌われてるんじゃなかったか?協力仰げる人なんているのか?」
「いるのよ。北のギルドにね」
・・・なるほど、アルバさんとの腐れ縁とはそんな感じなのか。
もう三月も下旬ですね、私はスターアライズが楽しいです。
スプラトゥーンのしすぎでジョイコンのスティックが反応鈍くなっちゃってるから買い替えを検討してます。この内容、ゲームを普段しない人だったら絶対伝わらないですよね。今更勘で溢れてますけど。
展開なのですが、内容的にどう考えても8話で収まりません。前編後編で分けても足りるかどうか、くらいには今回の話は長くなりそうです。書くよりもモチベの維持が大変。
そうそう、この話かこの次の話くらいでヒサメは死にます。詳細は後程。




