#51 居残り
そして夜、ギルドメンバー全員が食堂に呼び出し。王城襲撃以来の緊急集合にメンバーは何だ何だとざわざわしていた。
「えー・・・これから王都に行くメンバーの発表するわよ野郎共ーッ!!!」
ルリアが叫んだ直後に鼓膜が裂けそうなほどに部屋に響き渡る歓声。地下だから反響するのもあって本当に耳が張り裂けそうだ。
「うっせぇ・・・なんでこの人たちこんな盛り上がってんだよ・・・」
「知らないとこに行くからでしょ。男ってそういうものなんでしょ?」
「・・・否定はできないが・・・」
どちらかと言えば俺は安全な所でゆっくり過ごしていたい、とも言いたいのだがその声は歓声でかき消される。
「さーて、それじゃあメンバーを・・・」
全員が一斉に静まり返る。騒がしいままでは伝わりにくいという事を理解しているのだろう、学年集会で騒ぎ立てる中学生なんかよりよっぽど集団意識と自制心が働いている。
「クジで決めまーす!」
数秒の沈黙。そして全員が同時に思った。
(((((決めてあるんじゃなかったの・・・?)))))
そして直後に大批判。確かに今の言い方は悪かったと思う。
「うんうん、そりゃそうだよな、そりゃさっきの言い方的に決めてあると思ったよな。俺もなんて言ったらいいか分かんねえよ」
「何よそれ」
「人の心が読める魔法。こういう時にすっごい便利」
まあ、今は「嘘だろお前」みたいなツイートが洪水のように流れて行くタイムラインだからあまり役には立っていないが。
「そんなわけでいつも通り回すわよー!」
お決まりの如くルリアが取り出したのは人の丈ほどある八角形の機械。おそらく福引とかでよく見るアレ。ギルドの歓迎会のクジってアレでやってたのか。
「なあ、あの新井式回転抽選機って誰が作ったんだ?」
「あらい・・・え、何?」
「あ、知らないのか・・・まあいいか」
いつもの如くジョッキに注がれたΣAXを胃に流し込みながらカウンター席で抽選の様子を後ろから眺める。前の方は人が多すぎて見えないがSNSだったら話題から察することが出来るからだ。
「ところで・・・今回って何人当たるんだ?」
「ほとんど当たるでしょ。ほぼ全員が遠足気分でウキウキしてたわよ」
「おい」
そして回され続けて55番目が出る。
「以上!当たらなかった人はギルドで待機ね!解散!」
ぞろぞろと食堂から人が減っていく。もう既に夜遅いという事もあって食堂に残る人はあまりいなかった。
「・・・終わった?全員終わったか?」
「ヒサメ当たったの?」
「65番・・・無かった・・・俺、拠点待機・・・」
「あら奇遇ね、私の42番も無かったわよ」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ~~~~~~~~」
生まれてこの方16年、当たったらデメリットなくじ引きは毎回ことごとく当たってきた人生においてここぞとばかりに外れてくれた。人生初の当たり、ハズレだけど当たり。
「わざわざ知らない国に行く危険犯す必要性なんて俺にはねえ!ッシャオラ!」
「私は当たっちゃいましたよ・・・面倒なのに・・・」
ルイラがカウンター席に座ると同時にうなだれる。そしてすぐさま度数高めのアルコールを注文。どう見ても未成年だから見栄え的にはとてつもなく悪いのだが・・・この世界の酒はどれも化学薬品にしか見えないほど色がおかしい。赤色とか緑色とか。そう考えたら酒っぽく見えない分まだいい・・・のかもしれない。
「・・・当たったの?何なら私が変わるわよ?」
そのルイラに対してレイラの対応はどこか重く、そして優しかった。
「いや、私が行くよ・・・座標把握は出来てるし、それにワープ持ちの私が居なくなったら問題が起きた時に大変でしょ?」
「それもそうだけど・・・無茶するのはやめなさいよ。結構有名人なんだから」
「ハッキリ言って行きたくないよおおおおおお~・・・でもなぁ・・・」
見た事ないだけかもしれないし酒が回っているのかもしれないが、ここまで自分から好き嫌いを表現するルイラは初めて見た。王都とやらになにかあるのだろうか。
「なあ・・・なんでこんなにルイラはゴネてるんだ?」
「・・・それはね・・・」
レイラが苦々しい顔をした後、口から吐き出すようにルイラは言葉を零す。
「生まれ故郷なんですよ・・・嫌な思い出しかないですけど・・・」
「へえ~・・・生まれ故郷!?案外近いな、もっと遠い国かと・・・」
「ある意味遠いですけどね・・・」
「その様子からして・・・人間関係だろうな。何をやらかしたんだ?」
「私たちは何もしてないわ。ただちょっと親が毒を盛られて死んだ挙句お家を没収されたくらいよ」
いやいやいやいや、「~くらい」を語尾に付けていいような軽い内容じゃなかった。どう考えても中世西洋ファンタジーでよくある貴族同士の権力合戦の内容。
「そんな軽いノリでいいのその話!?・・・ってことは身分は結構・・・」
「高かったわよ、それ故に妬まれてこの通り。国内では居場所を奪われて父親は毒殺、母親は私とルイラに貧乏人の汚いローブを被せて付近の国に向かう貿易車の積荷に押し込んだわ」
「それは・・・また・・・」
「それ以来母親の行先は分かってないわ。私とルイラはこの国に到着した時に門番に引っ掛かって追い出されそうになったけどルリアさんが助けてくれたの。ちなみに、あの門番とはその時からの因縁よ」
その門番ってどの門番だ、と言おうとした瞬間に思い出した。この国に初めて来たときにルイラとレイラが門の付近で止められていた時の門番か。
「魔法使って撃退すりゃよかったのに・・・」
「私の魔法は使ったら高確率で殺しちゃうからあまり使えないわ。それに・・・あの時私たちがあの場所にいなかったら、きっとあなたはここにいないでしょう?」
「・・・それもそうだな。俺はこうやって生きてここに存在していることだけでも幸運だな」
世の中は全てが100%で動いているわけでは無い。誰かが失敗し、それと同時に誰かが成功する。どちらとも言えない結果に終わる人もいる。誰かが死んで誰かが生き延びて、それが幾度と無く繰り返されて「運命」と呼ばれる世界の歯車となる。
運命は人を操作しない。人が辿って来た道を振り返って初めて運命と呼ぶようになる。誰かと出会い、そして別れることも、あらかじめ決められているのではなく「きっと運命なんだ」という、神がそうであるかのように定めた合理化の一つでしかない。
そして運命は不幸も幸運もある。自分自身で「もし自分があの時こうしていなかったらこうなっていたであろう未来」を見る事になったら人は口を揃えてこう言うだろう。「生きていることが幸運だった」と。
現代の日本、多少遅れているとはいえ十分に先進国となった日本に於いて死亡率は過去数十年と比べて大きく低下している。それでも「死因はいつだってそこにある」。
偶然性が0だとしても他の人から見れば必然と思えるかもしれない。それくらいに人間は死にやすく、そして何かあったら偶像崇拝に逃げる。
つまるところ、「困ったら人は神に祈る」のだ。今も昔も、様々な難癖を付けながら。
幽霊にしろ都市伝説にしろ、見ないと信じないタイプのヒサメが一番信じているのは運命と神様なのかもしれない。だって、自分の目で見てしまったから。
「あなた幸運とか言うのね・・・てっきり神とかのまやかし系統って信じないタイプだと思ってたんだけど」
「幸運は別に神のまやかしなんかじゃないだろ・・・それに、神様って結構適当だぜ?人間の設計図をタブレットで作るくらいにはな」
Q.既に今回の更新分はうっかり投稿しちゃったけどどうするの?
A.もう一本投稿すりゃいいんだよ(白目)
はい、今週はいつもより一本増量でお送りいたします。
実は昨日うっかり予約掲載ミスをしてしまいまして。それにより昨日の時点で今回投稿するはずの文を投稿してしまいました。
じゃあどうするか?じゃあもう一本投稿だ!
日曜の0時に「更新されてないやん!クソ!」って思われたらちょっと悲しいので頑張って書きました。サイゼにノートパソコン持ち込んで何時間も居座ってたのは本当に申し訳ないと思った。今度からスタバにします。
花粉にはお気を付けください。当方は鼻にティッシュを詰め込んで作業しております。




