#49 転生(2)
人が暮らす世界の遥か彼方の別次元、天国。清らかな人が死んだ先にある楽園であり、罪人が罪を洗い流した先にある世界でもある。人の世界と繋がっておりながら地球から遥か遠く、行き来する手段に神の干渉なしでは存在しない。
華が咲き、食料は無限に湧き、太ることも無く、死ぬことも無く、ただひたすらに「人間」と呼ばれる長い生き地獄を貫き通したもののみが見れる幻の世界。
その楽園のさらに天空、通称『神域』。そこでは人間が住む世界を神が各世界ごとに統括して管理をしていた。基本的な管理は補佐官が務めていたものの、巨大な災害はなんとか人類が生き残るように様々な恩恵を与えて生存を支えてきた。
それもそのはず、人の世を生きた物は全てではないが大半はこの天国に送られる。神としての威厳と存在を示しておかなければこの世界に来た時に神を信じていないものが天国に入ってくるかもしれないからだ。
人間は神と比べて非常に劣っている。しかし、いくら神でも最強の防御バフ+全範囲即死攻撃なんてチート技は持ってない。つまりは数の差で負けることもあるのだ。
神を信じないものが天国に溢れ、神域を墜とそうなんて一揆が起きたらいくら神が総出でも時間が掛かる。その間に人類に何かが起きるかもしれない。
だからそうならないように神は人類を見守る必要がある。誰の為でもなく、自分自身の神たりえる存在の為に。
そんな中、少し前に地球を担当していた神はちょっとしたミスを犯した。
そう、うっかりただの高校生に雷を落としてしまったのである。
これは高校生を殺してしまったことが原因ではなく、「人類を保護するために能力を誤って人類に使った」事が大問題だった。これは蘇生も致し方ない程だ、と数多の神が囁く中、当事者である神は「転生はどうだろう」と提案したのだ。本人の精神をそのままに、体を別世界で新しく製造する。その為には別世界の協力がいる。当事者の神は協力してくれる神を探した
だが、その計画に賛同してくれる神は一人もいなかった。一人で犯した罪を数人で肩代わりしたい訳がない。
当事者の神は深く悩んだが、補佐官の画期的なアイデアで少年を異世界に送ることを成功させ、その件は無事に終了した―――ように見えた。
その神様は、またまたやらかしてしまったのだ。
ひたすらに真っ白な光景が続く部屋。見ているだけで気が狂いそうなほどに白い。
置かれている物は何もなく、しかし自分の影は床にくっきりと映る。部屋には光源も太陽も無いのに。
「・・・ここは・・・?」
ふと立ち上がって周囲を見渡す。本当に何もないし、何かが見えてくるわけでもない。
「なんで、こんなとこに・・・」
少年はとにかく足を進め、変わりもしない光景をただひたすら左右に首を振りながら歩く。
そうしているうちに、一人の老人が目の前に座っていた。
「・・・うわっ!?いつの間に!?」
さっきまではいなかった。急に現れたのだ。一体どこからだろうか、地面か空かそれとも。
「・・・・・・・・・」
「・・・あのー・・・」
「・・・・・・本当に、申し訳ない」
「え?あ、はい、えーっと・・・」
少年はいきなり謝罪から始めた老人におそるおそる話しかける。
「・・・顔、なんか青いですよ?」
「・・・いろいろあったのだ・・・」
老人は胡坐で座り、この世の終わりのような表情をして顔を青くしながら微動だにせずに座っていた。
「・・・少年、名前は?」
「・・・東雲、東雲 東です」
「・・・シノノメ、アズマ・・・うむ、ありがとう。まず君には謝らなければならない」
「え?はい・・・」
「君が記憶にある最後の光景はいつかな?」
「えっと・・・学校から帰る途中、ですけど・・・」
「単刀直入に言おう。君はその時死んでしまった」
少年の表情が固まる。何を言われたのか分からなくなり、その言葉を何回か反芻しても意味が分からなかった。
「死んだ・・・?じゃあ、この体は・・・」
「ここは神世界、死んだ人間が辿り着く天国のさらに上層階だ。その日は風が強かっただろう」
「はい、予報で突風に注意って・・・」
「君はその突風で飛ばされた電柱に頭をぶつけて死んだ。遺体は肉片しか残ってない」
「はい・・・え?じゃあなんで僕は・・・」
「実はその突風は君がいた世界の神が原因だ。そいつが雨雲と間違えて突風を置いたんだ」
「そんなミスあるんですね・・・」
「私も長いこと神をしているがそんなことは一度も無い・・・。で、その神がついに神明会議に連れて行かれた。まあ、要するに神が集う会議だ」
「名前からそんな気はしてました、じゃああなたは・・・」
「そいつの代わりだ。だが、そのジジイが残した環境改善書がやけに多くてな・・・全部処理すると知って疲れているのに君の対応も任されたんだ」
「ご苦労様です・・・それで、僕は一体・・・」
「それなんだが・・・転生はしたいか?」
「転生・・・ですか?」
少々聞き慣れた単語。ライトノベルとかで話題になる単語だ。
「実は前のジジイが以前に転生事案を出しててな。その形式と同じようにすれば君は新しい肉体と第二の人生が歩める。どうだ?」
「第二の人生か・・・」
確かに、悪くはない。学校は詰まらなかったし、友達も大していなかったし、別に悲しむ大切な人もいない。百利あって一害なしだ。
「それでお願いします!」
「了解した。じゃあこれで自分がなりたい姿を設定してくれ」
「まさかのタブレット・・・しかも設定画面がゲームみたい・・・」
それから少し経って。
「できました!」
「これでいいのか?後からは変更できないが」
「大丈夫です!」
見た感じの様子は元の少年と大して変わらない。紙の色が金髪になったくらいだろうか。
「ふむ、じゃあこれで・・・おお、忘れるところだった。何か一つだけ持って行けるとしたら?」
「何ですかその『無人島に何か一つだけ持って行けるなら何がいい?』みたいな質問は・・・僕は・・・転生先で困らないくらいの力が良いですかね」
「ステータス向上だな、了解した。さて、じゃあ私にも仕事がある。第二の人生を楽しんでくれ」
老人は指を鳴らし、姿を消すと共に目の前に不思議な空間が現れた。その場を削り取ったような不思議な空間の裂け目。
「わっ・・・よし、行くぞ!」
そうして、突風で死んでしまった不幸な少年、東雲東は異世界へと身を投げた。
「彼はどうでした?」
「む、補佐官か。特に問題は無かったぞ。お前の前の主の方がよほど問題だった」
「まあ全部の仕事を私がしてましたからね・・・でも、良かったのでしょうか」
「何か懸念する点が?」
「いえ、なんでも」
補佐官は懸念していた。送り込んだ異世界の先で転生者は何をするかが分からない。そして不幸なことに転生者「東雲 東」は天掴高校二年生在学者だった。
そう、少し前に転生した高校生、朝夏日鮫と全く同じ。
(同じ学校で同じ学年・・・恐らくだが面識はあるはず。何か良からぬことが無いといいが・・・)
補佐官の予感は、嫌なくらいに的中することとなる。
既に長そう(小学生並みの感想)
そんなわけでVer 1.7、まさかの二人目。このネタずっとやりたかったんですよ。でも長くなることが確定してたし結構重い感じの話になるから序盤でやるわけにはいかなくて。やっとこさ導入。
話の内容的には3月中に終わり・・・そうにないですね。4月に多分食い込みます。書いてて面白そうではあるけど長くて飽きそうだからモチベーションの維持を第一に頑張ります。
赤点はありませんでした!やったぜ。




