#48 撤収
どうも皆様、アサカヒサメです。毎度の如くお久しぶりではないかもしれませんが挨拶なので形式上させていただきます。
さて、現在は城への襲撃を終え、ギルドに帰ってきたところ。時間はもう24時換算で午前一時、そろそろあくびが出始めるような時間です。
さて、唐突かつ個人的な意見なのですが言いたいことがありまして。
嫌なことがある時って、眼を逸らして意識を飛ばしていたいですよね。
「さて、何か言うことは?」
「「申し訳御座いませんでした」」
一応成果は出ていようとも命令違反は命令違反。ギルドのロビーに正座で座らされて問い詰められております。
「あれだけ待てって言ったのにねぇ・・・」
「そもそもなんでミズキは対象外なんですか・・・」
「ギルドメンバーじゃないから・・・」
組織的な生活は規則に縛られるという事を久しぶりに実感した。さすがに現代の学校程ではないがルールは守るべきものであり破るものである。八割が守っていれば二割が破っていようともルールとしては成り立つもの。
「ルイラはそれに加えてあの試作品を勝手に持ち出した罰があるからね」
「えっ!?あれ次の任務の時に使っていいって言ってたじゃないですか!」
「『任務の時』ね。無断で持ち出していいとは言ってない」
「ぐぬぅ・・・・・・」
「で、ヒサメ君なんだけど・・・」
「はい、吐ける情報があるならば」
話し合いの時に下手に出ては舐められる?舐められて結構、社会の歯車として養成されたこの身に理不尽な叱責があろうとも不可解な現象の責任を押し付けられようともジャパニーズスマイルと鍛えられた作り笑いがあればよほどの事が無い限りは大丈夫。
・・・今更だが、そんなことを学ばさせるとか現代の学校ってどうなってるんだ。刑務所か何かなのか?
「・・・なんでそんなキッチリしてるの?むしろ怖いんだけど・・・」
「鍛えられてましたから」
「・・・まあいいや、要件は二つ。命令違反と始末書ね」
「はい・・・・・・はい?始末書?」
「だってあの城ズタボロにしたでしょ?」
「えっ、ダメだったんですか!?!?!?」
「だからギルドの指示で突撃って言ってたのに・・・」
さて、ここで疑問になることが。文字すら読めないのに何枚も始末書を書かされるとなるとどれくらい時間が掛かるでしょうか?
何となくですが、文字の勉強からさせられる気がします。
風呂から出てきて髪の毛を乾かし、ミズキは疲労を露わにしながらカリンの部屋に戻る。
「ただ今戻りましたー・・・」
「おや、随分と遅かったの。説教でもあったか?」
「ギルドメンバーじゃなくてもある程度はありましたよ。こっぴどく怒られてるのはあの二人でしたけど」
「ふむ・・・助けてもらった礼があるからあの二人には何かくれてやらんとな」
やれるものがあまりないから困りものだが、とカリンは付け加える。
「それに関してはミズキ、お主も同じじゃ。何か要るものはあるか?」
「俺は特にないですよ。当然の仕事をして特別のように扱われるのはあまり好きじゃないです」
そもそも護衛の為だけにわざわざ国を飛び出してきたミズキ。本来の仕事を達成してそれ以上は受け取らない、平たく言えば欲が無いと言える。だが―――。
「そこが駄目じゃな」
ふらふらしながら壁際を歩くミズキの目の前にいくつもの御札が突き刺さる。
「いっ!?」
「お主は向上心が無いのじゃ。それは安全とも言えるが、同時に進展ももたらさぬ。格好だけの剣士では護衛なんてさせておけぬな」
「そう言われたって・・・」
「現に今日の事を思い返してみよ。お主一人では勝ち目が無かったであろう?あの有様では護衛は空間魔法の娘にでも任せた方が得策であろうな」
「ッ・・・」
事実、ミズキ自身が感じていた。自分自身では弾かれてばっかり、独学で覚えた剣の振り方ではパターンが割れやすく相手からの対策がされやすいことも知っていた。それでも何かを教わろうとはしなかった。自分自身の何かを捨ててるようでやろうともしなかったし出来なかった。
「そこで主君の命。明日から妾と剣戟するのじゃ」
「・・・・・・はい?」
「端的に言えば特訓じゃな。最近ようやっと食堂の娘から教わっていた魔力調整が武器に出来るようになってきてな。それの試しも兼ねての剣戟じゃ」
「え?えっと・・・へ?」
「勿論魔力武装ありじゃ。お主は魔法が使えない分大幅に不利じゃが・・・魔力は人並みにはあるのであろう?追いつきたければ練習じゃ。お主、努力すれば成果が必ず出る努力は嫌いでは無かろう?」
ニヤニヤとこちらを見つめながら言葉を放つカリンには抗えそうにもなく、抗う気も沸いてこない。
湧いてくるのは、心からの高揚感とまだ見ぬ強さへの可能性。
「・・・分かりました、従者ながら剣先を主君に向けることをお許しください」
「別に良い。それに、お主に剣先を向けられるのはもう何度目かの出来事じゃからな」
その翌日から、ミズキはギルドの中央空き地でカリンとほぼ一日全てを消費して練習と言う名の剣戟をした。食事中と夜は文献を漁り、レイラに魔力操作のコツと具体的な使用方法を教わる。
「ぬっ・・・ぎぎぎぎぎぎぎ・・・」
「・・・なあレイラ、ミズキは何やってんの?」
「魔力を通す練習。武器に魔力を通す場合は武器の大きさによって必要な魔力量と感覚が違うからまずは感覚を自分の身体で理解するところからやらせてるの」
「フォーク持って必死になってるようにしか見えねえ・・・」
「ちなみに誰でも結構出来るわよ。しかも本人の属性が出る」
レイラがフォークを持ち、右手から魔力を流し込むとフォークの先端で緑色に可視化された風が渦を巻き始めた。
「はいヒサメも。多分できるでしょ」
「なんだその適当さは・・・でも俺こういう繊細なのっ!?うわ出来た!」
フォークを持ってスマホに魔力を流し込む感覚で手に力を込めるとフォークの先端からチリチリと火花が散る。
「それ私も出来るんですよ!」
「・・・ちなみにルイラがやると?」
「フォークが使い物にならなくなるわ。勿体ないからやらせないようにね」
ミズキが魔法を使えるようになるのはそれから約一年後のこと。だが、その一年の間にとてつもない大事件が起きる。国を巻き込み、戦争を引き起こすほどの大事件が。
その火種は、人が暮らす世界の遥か彼方の別次元、天国で発生していた―――。
「なんで最後の一文でそんな未来の話するの?」とお思いの方、次回から急に時代が進むわけでは無いのでご安心ください。とにかくめっちゃ頑張ってるよ程度の描写です。あまり深い意味はありません。
次回からいよいよVer 1.7、個人的には「異世界小説で最もありえない」ストーリーになってます。自分自身で筋書き書いてて「これは確かにほとんどの異世界小説でないだろ」って内容になったのでお楽しみいただけたらいいなと思っています。あと、長すぎて前編後編に別れるかもしれないです。どのくらいの長さになるかはちょっと書いてみるまで分からないですね・・・。
あ、今のところ赤点は無いです。




