#46 剣戟
「ミズキさんどこに行ったんですか!?」
「一人で階段を上って行った!俺達は地下から探すぞ!」
「結局別れるんだったら合流した意味なかったじゃないですか!」
「・・・まあ、タイミングを揃えたって事だ!行くぞ!」
「邪魔だぁッ!!!」
階段を上りつつ、波のように迫ってくる人の波を飛んだうえで踏みつけ、全体的に数を減らしながら登っていく。
(何だこの量、雑魚兵が多すぎる!突撃してくるのを予測して頭数揃えておいたにしても多すぎるぞ!?)
「てやぁッ!」
「ッ!!!」
兵士の一人が剣を振り上げてこちらに向かって一直線に振り降ろす。バランスを崩しかけたが立て直して、刀で右脇に受け流しつつ胴を斬りつける。
「ああもう邪魔!こいつでも喰らっとけ!」
階段を登り切って、天井から釣り下がっていたシャンデリアに飛び乗り、反対側の手すりに飛び乗ると同時にシャンデリアの根元を斬る。重力に従ってシャンデリアは落下し、下の兵士たちは大騒ぎ。
「これで少しは時間稼ぎ・・・」
二階に上がりつつ部屋を見て回る途中、目の前に先ほどの兵士達よりも屈強な体をした兵士に前を塞がれてしまった。どうやら何かを守っているらしいのは直感でわかる。
だが、そんな脆い壁で行く手を塞がれていては困る。
「クソがっ、邪魔だっつってんだろうがぁ!!!!!」
正門が破壊されて十数分。
ルイエという名の銀髪の男は通信が途切れた焦りを隠せないでいた。
(城全体に範囲攻撃!?そんなもの予知できていない!私が予知したのは刀を持った少年と―――)
何が起こったのか分からないで混乱しているその時、カリンが縛られている椅子の後方から数多の悲鳴と扉が吹き飛ぶ音がした。バルコニーに大きな木製の扉が転がる。
「ハァ・・・ハァ・・・犯人はテメーか。お嬢様取り返しに来たぜ」
息を切らしながらも刀を前に向けるミズキ。時間には間に合った、と言うべきか否か。
「やはり来ましたか・・・ここまで来るのは読めていましたが何たる速さ・・・」
「日々の修業の成果だ。主人を守れずして護衛人が務まるかって話だよ。・・・まあ、攫われてる時点で本国だったら打ち首なんだろうけど」
「ミズキ、さすがにちと来るのが遅かったのでは?待ちくたびれたぞ」
「そもそも場所を特定するまでに時間が掛かったんだしここまで走って来たんだから褒めてくださいよ・・・」
まあ月が真上に来るまでに来てよかった、とカリンは空を見上げながら呟く。
「・・・何かあるんですか?」
「それはあの男に聞け。私を攫った理由など含めてな」
視線を向けると同時に男は自然な笑みを浮かべて自発的に語りだす。
「どうも護衛人さん、私はルイエ・アンシェリア。実は―――」
話の途中にもかかわらず、ミズキはルイエの喉元に刀を突きつける。
「理由もお前の素性もどうでもいい。お嬢様を攫っただけで何があろうと有罪だ」
最初から理由は聞かない姿勢。聞いても何も分からないだろうし聞く価値も無い。
「―――そう言うだろうと思っていました。私の予知では戦いは避けられないものとなっていますからね」
「・・・予知?・・・ああ、その嘘くさい占術か。俺にはつくづく分からないがな」
「占いはいいものですよ。知りたいことが知れて、隠された真実も見れて・・・」
またもや話している最中にミズキは割りこんで反論する。
「そこだよ。占いなんざで生きてられるかって話だ。未来ってのは分からないからこそ怖くて楽しいんだろうが」
分かり切った未来、避けられない不幸。人は未来に嫌なことがあるだけで億劫になる。嫌な物を率先して知る必要はない、見なくていい真実だってある。それを他人に押し付けるなど論外だ。人の行く先なんて自分で決めるもの、他人に良いように動かされ、自分自身を見失った生き方など自殺した方がよっぽどマシと分かっている。
「・・・どうやら話が通じないようですね」
「俺も丁度そう思ったところだ。まったく、これだから魔術ってのは理解し難い」
へらへらと笑いながら適当に会話を流し、その瞬間に殺気を剥き出しにして刀を向ける。
たった今まで会話をしていた銀髪の男は真剣な顔になり、上から振り降ろされる刀を間一髪で避ける。後ろに下がりながら男はバルコニーの手すりに置いてあった剣を手にする。形状的にはクレイモアに近い。
魔術に特化しているとはいえ王子と呼ばれているだけはある、多少の剣術は心得ているような見切りと剣の振り方。
(・・・ッ、やりずらいなコイツ・・・とにかく避けるし当たりそうなときにはしっかり剣で弾く。ある意味教本通りみたいな動きだ)
そう、ミズキは教本通りの動きは大の苦手。ミズキ自身が教本なんて気にせずに独学で剣の動かし方を見つけてそれを実践しているようなものだから型にはまった動きをする相手には自信の動きだと全く歯が立たない時が存在したりするのだ。
本来ならばそれを無くすための教本や指導があるのだが・・・人から言われた事にはあまり従いたくない本人の性格が原因だろう。
「甘い甘い、なんとも甘い動きです」
「ッっせぇ!そっちこそぬるぬると避けやがって!」
「見えてるんですよ。一つ一つの動きが。それに加え私には『その刃では死ぬことは無い』という予知がありますからね」
「んだとぉ・・・!?」
と言いつつも、確かに相手の言う通りだった。刀を振っても当たらない。当たる位置になったら弾かれる。しかも相手は的確に隙をついて来てじりじりと押し返してくる。隙がない、とも言えるし自分に隙があるのも実感できる。
反撃の隙を見いだせず、ミズキは徐々に追い詰められていく。防戦一方になっていたその時―――。
「・・・まずい!」
城の中から低い鐘の音がすると同時に男が空を見上げながら呟く。それに釣られるように空を見上げると月は丁度真上に昇っていた。
その瞬間、男はミズキに目もくれず一直線にカリンの元へ向かった。
「なっ!?」
ルイエがカリンを攫った理由は「手下にしておかなければ自分が死ぬから」だった。
予知で出たのは「月が真上に来た時までに殺しておかなければ自分が死ぬ」ということだけ。
実際、殺すだけならばそれほど難しくは無かった。窓から刺せばいいだけ。だが護衛の男やギルドの連中がいる場所での殺害は危険だと悟ったのだ。
ルイエはクレイモアを投げ捨て、右腕の袖の下に隠していた短いナイフを走りながら取り出す。
(マズイ!この距離は間に合わねえ!あのままじゃ―――)
「・・・自分で攫っておいて自分で殺すためとは、心底呆れる」
一直線に突撃してくるルイエを見て、カリンは縛られているにもかかわらず鼻で笑った。
そして次の瞬間―――。
「―――ごッ!?」
椅子の影から飛び出してきた何かによってルイエは顔面に大きな打撃を喰らい、逆側に吹き飛ばされる。空中を縦に二回転半、数メートルは飛んだであろう。
「ここまで用意周到な男が、焦りによって人が一人隠れていることにも気付けないとはな」
「ちょっとなに余裕な表情してるんですかカリンさん、俺達来たの数秒前ですよ」
「結局私たちの探した場所には何もありませんでしたけどね・・・」
「豪華な家具とかはあったけどな。売ったらそれなりに金にはなりそうだが持って帰ってる余裕は無かったし」
「あ、一回奥中央の部屋にあったドレッサーはさりげなくワープで頂いちゃいました。使われてなかったので」
「ちゃっかりしてんなぁ・・・」
ヒサメとルイラが地下から隅々まで探し回り、バルコニーに上がってきたときには後方から0時を告げる鐘が鳴っていた。その瞬間に様子を見ようと椅子の後ろに隠れたら都合よく相手が突撃してきたからエンタープライズの側面で殴ったのだ。
・・・補足だが、決して火薬式の小型大砲で本体を使って殴ったりはしてはいけない。魔力式構造とアマルガムの尋常じゃない強度が生み出した離れ業。
「で、何なんですかコイツ。味方には見えないから殴りましたけど」
「先ほどまで婚約を迫って来ておったのだが・・・豹変したな」
その一文だけでなんとなく事情が分かったとともにルイラと同時に苦笑い。
「うわぁ・・・最低野郎ですか?」
「最低野郎っぽいな・・・」
真面目な雰囲気の間にユーモアを差し込めるキャラ、好きです。
なんか今回もヒサメで締まりそうですね。ミズキには別の出番をいつか用意することになりそう。
なんで出番があると言っておきながら無いのか?テスト期間のせいです(八つ当たり)
ミズキのやりたかった技の話とかも出来てないのでどこかでもう一回出番を設ける必要はありそうです。
雑談ですが、この作品の世界観はもともとミズキとカリンが主人公枠でした。
でも書いてて「なんか普通じゃん?」ってなったので世界観を残したまま主役交代。
その為かミズキにはいろいろな裏設定があって名字も存在します(カリンにもあるけど本人が多分忘れてる)。
なんで名前が日本人っぽいのか、そういう事も含めてカガミマチには伏線だらけなのでいつか拾います。
・・・テストがヤバくなければ。




