#44 出撃
PM 06:00
どうしてこうなった。
一言で言えばそれに尽きる。もう一言加えるならばまさかこうなるとは思わなかった。
どうも皆さん、アサカヒサメです。書類整理の嵐で疲れた目を癒すのに天井をひたすら眺めるのは結構おススメですよ。でも首を痛めるのでほどほどに。
時刻は午後六時(スマホ内時計基準)、ただ今自室のベッドの上でぼーっとしております。
え?なんでカリンさんを助けに行かないのかって?いや、私も行きたいんですよ。
でもなんでか部屋に閉じ込められちゃったんですよ。ご丁寧に鍵付きで。
実は一時間ほど前、ミズキがルリアさんと口論を起こしまして。
なんでも、ルリアさんは『相手の力が未知数で様々な噂があるから全員で突撃する』と言ったのに対しミズキは『何が起こってるかわからないから一人でも行く』と言い出したのです。
ルリアさんは当然それを止めようとしたのですがミズキはここのギルドに所属しているわけでは無いので一人で勝手に出て行きました。・・・ですが、なぜかそのとばっちりとも言える何かが俺に来たのです。
『勝手に出て行きそうだから部屋に拘束』という理由で私は部屋に縛り付けられている訳です。なんで俺だけ、とも思いましたけど「ミズキと仲良いから」らしいです。仲が良いだけで同じ思想を持っているから危ないって勝手に決めつけるの本当にやめてくれませんかね。・・・とまあ、そんなことがありました。
(確かにルリアさんが言っていることは間違ってないんだけど・・・)
一人ずつ行くと危ないから全員で行く。確かに安全で安定した作戦だ。
だが、問題なのはミズキの方にある。
(アイツ魔法使えないのに刀だけ持って一人で行ったからな・・・)
ミズキは魔法が使えない。魔力はあるのだが使い方が本人は分かっていない。
科学と呼ばれる武器技術が広がっていないこの世界では、リーチと威力ではどちらも魔法の方が強い。刀一本で魔術師相手に勝てるのかは相手にもよるが大抵の場合はとても厳しいだろう。
だからできれば加勢に行きたいのだが・・・ドアと窓は施錠、通気口は通れるような広さではなく、おまけに大きな音を立てればロビーからルリアさんが来る。
「・・・こりゃ無理だな。本人はどう思うか知らんが・・・頼むか」
自力での解決は不可能と判断してスマホを手に取り、電話の通話履歴から連絡先を開いて通話。
「はい、ヒっくんどうしたんですか?」
「なんで通話かけたら通話よりも先に来るんだお前は・・・」
「素早さと空間移動が私の売りですから!で、どうかしたんですか?外に出たいとか?」
「あ、えーっとな、うーん・・・え?」
今、速攻で答えが出されたような気がして疑問符が後から出てくる。
「てっきりヒっくんの事だからミズキさんが心配で外に出たいけど出れないから私を呼んだと思ったんですけど・・・違いました?」
「・・・なんか予測されてた・・・うん、まぁそうだけど・・・」
ここまで心の内を見透かされてるとは思ってもいなかった。思ったより俺って単純なのか?
「まあいいですよ。別に空間移動で外に出ることは縛られてないですし・・・ただしお願いがあります」
「へっ?」
「・・・私も行きます。人を助けるのに悠長に待ってなんかいられません」
急に真面目な顔になって言い出すルイラに一瞬困惑してそのまま返してしまった。
「いやいやいやいや!?行くって、結構危ないかもしれないんだぞ!?」
「そもそもヒっくん一人で外に出た所で戦力になるんですか?」
「うっ・・・・・・」
確かに御尤もな意見だ。自分が外に出て戦うと言ってもそんなに戦力になれはしない。
「だから私も行きます。・・・本音はジルオさんにお願いしてた武器の試作品が出来たらしいから使ってみたいってだけなんですけどね。なんか面白そうだし!」
笑顔で言い切るルイラを見て、多分これはなんて言おうとついてくるだろうな、と思って認める。というかルイラの場合、空間移動を駆使して意地でも追ってきそうだ。
ルイラの横から見慣れた渦が発生し、そこから不思議な武器が出てきた。長い持ち手の先には綺麗に削られた、淡い水色の氷が刺さっている。
「なんだそれ・・・ハンマー?」
「私用に制作された新型ハンマー『胃落』です!この見た目綺麗でかっこいいでしょう?しかも使いやすい!」
「ルイラ用に改良って・・・何か弄ってるのか?」
「魔力変換機構を特別に作ってもらいました。どんな属性であってもこれを持てば、魔力ならば氷属性に自動で変換してくれるんです。おかげで空間属性の私もこんな属性武器が持てるんですよ」
ああ、そう言えばルイラは魔力属性が特殊なんだったか。属性武器が持てるという事は・・・属性武器は正しい属性の魔力を使わないと機能しないとかの理由だろう。
「なんか隠し機能があるらしいですけど・・・その説明は聞いてないし多分どうにかなると思ってます!」
「俺ずっと疑問なんだけどさ、ルイラのその根拠のない自信はどこから湧き上がるんだよ」
「心からです!」
「ああはいはい、そうですかー・・・」
大体そんな感じの理由だとは思ってた。話は最後まで聞かないタイプな気は前からしてたが、まさか戦闘面の説明すら聞かない自由度とは恐れ入った。
「・・・思ったけど、なんで外に出るのが禁止されてるのに出してくれるんだ?」
思えば、ルイラが協力するメリットは一切ない。一緒に来るメリットは本人には多少あるかもしれないが俺を出すメリットは無い筈だ。
「だってヒっくん、実力は無いのに一丁前に助けるとか言い出しそうなくらいお人よしだし・・・」
「悪かったな、一丁前にお人よしな癖に実力がなくて」
「・・・正直な所、私も行こうとしてました。でも私一人じゃあまり意味がないし・・・誰か道連れに出来るならって」
「道連れって言った!?道連れって言ったよね今!?」
「そんなことは気にせずほらほら!早く行かないとミズキさんが一人で攻め込んじゃいますよ!」
急に何かを誤魔化すように話を切り替えてせかしてくる。さては通常通りな見た目しておいていつでも外に出られる準備してたなコイツ・・・。
「ミズキが一人で攻め込むのは戦力的にマズイな、すぐ準備するか。・・・まあ俺はスマホだけでいいんだけどな」
「あら、あの大砲は持っていかなくていいの?」
「『実体化』でいつでも手元に引き寄せれるから・・・へ?」
「あっ」
サラッと会話に溶け込んでいて気付かなかった。いつの間に平然と入って来て、あたかも当たり前のように会話を聞いて、空気のようにそこにいた!
「数分前からルイラがいなくなったと思ったんだけど・・・一体何を企ててるのかしら?」
ドアの施錠もいつの間にか解かれている。空間に溶け込むようにレイラは会話に交じっていた。
「えっと、レイラ・・・その様子だと止めに来た感じ・・・?」
「止めに来た以前に脱出が命令違反よ。さて、わざわざ対物範囲用の小型大砲を持ってどこに行こうとしてるのかしら?」
返す言葉に困る。これは本当の事を言えばいいのか、それとも誤魔化せばいいのか。
「あー・・・・・・うん、散歩?」
ぎこちなく笑いながら冗談交じりに言葉を発した途端に喉元に風の刃が付きつけられる。
「冗談を言えとは言ってないわ」
「・・・・・・こりゃ無理だな」
溜め息を吐きながらズボンのベルト部分に付けておいた三本の筒に手を伸ばし、後ろに下がりながらそのうちの一本を押し込む。小気味良い発砲音と共に出てくる火の玉の半分で風の刃を弾き、もう半分を体の周りに留めて置く。
「さて、お前を押しのけて意地でも行くって言ったら?」
普段はこんな強引なやり方はしないのだが事態が事態だ。あとちょっとだけ格好つけたかったのもある。
「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・分かったわ。見かけによらず強情ね」
「どうも。ここに来てからこんな感じになったから誰のおかげかは知らないけどな」
レイラは溜息を吐きながら掌の上で集めていた魔力を散らし、ルイラの方を向く。
「・・・ルイラ、危なくなったら私を呼び出しなさい。相手を叩き斬ってやるわ。それと・・・ヒサメ」
「ほい?一体なんでしょう」
まさか自分にも何かあるとは思ってもいなくて素の疑問符が口から出る。
「私の自慢の妹、殺させたら腕一本じゃ済まさないわよ」
「任せろ。・・・まあ、俺は我慢強くないから腕一本でももがれたら痛みでショック死するだろうけどな」
レイラは呆れた顔で「腕をもがれない努力をしなさいよ」と返す。
「・・・さて、じゃあ行くか。ルイラ頼んだ」
「了解です!」
何も無かったようにレイラは誰もいなくなった部屋に鍵をかけて外に出る。
「あれ、レイラ?どうしたの?」
偶然、廊下を歩いていたルリアに目撃された。部屋から音がしなくなったので不審に思って見に来たらしい。
「・・・何かあったの?」
「いえ、別に何も。どうやらヒサメは疲れて寝てしまったみたいですよ」
レイラはルリアにそう言い、部屋の鍵を持って食堂のカウンターに戻った。
成績がとんでもないことになっててとんでもない(語彙力不足)
このままだと三月上旬くらいまでちゃんと更新できるか怪しいですね・・・予約掲載をどうにか活用して投稿はペース落とさずにどうにかやっていくつもりですが、更新無かったら「あ、テスト赤点だったんだな」くらいに思っておいてください。赤点じゃなければどうにか更新は続けます。
個人的にここと次の話が一番書いていて楽しい内容なのでよほどの事が無ければ更新を止めることは無い・・・はず。
(追記)
15分遅れてしまいました。なんでか18時に投稿設定がされていたので急遽変更しました。




