#43 発見
重い瞼を開ける。ここはどこだろうか。重力が下に向いているからしてベッドではない。
「おや、お目覚めかな?」
まだ瞼は半開きだが、それでも嫌悪感がする。聞いたことの無い男の声。
「まあ無理も無い。魔法と云う物は効果が無ければただの手品だからね」
とても不愉快で、それでも瞼を開けなければ視界は開けない。重苦しい瞼を開けきると―――。
「どうも初めましてお姫様。私はルイエ・アンシェリア。初対面ながら少々手荒で申し訳ない」
寝ぼけた目で数回瞬きをし、目の前に移る銀髪の胡散臭い男を何度か見つめる。寝ぼけているのかと目を擦ろうにも手が出ない。座らされている椅子の後ろで手が縛られている。
「お主、初対面でいきなり人攫いとは・・・まあそれはいいが、人の事をお姫様と各上呼びしておきながら拘束するとはどういう了見かの?」
「単刀直入に言いましょう。私は貴女に惚れたのです」
数秒沈黙が続き、口からなんて零したらいいのか分からなくなったカリンは一言。
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
PM 01:30
「ダメだ・・・全部同じ顔に見えてきた・・・」
「頑張れミズキ、もし犯人がカガミマチの人間だったらお前じゃないと関係性を見抜けん」
「っつってもよー・・・この量・・・嫌になるぜ」
カウンターに顎を乗せながら溜息を吐くミズキが指差すのはまだまだ残る書類の山。
現段階で処理できたのは半分ほど。その中で怪しいと判断した物は六枚。
「・・・なあ、思ったけどさ、こんな悠長にしてていいのか?」
「悠長も何も、追いかける相手を決めなきゃ動けないだろ。誘拐だとして何されてるかは分からんがとにかくまずは探さないと話にならないからな」
「そうなんだけどさー・・・」
・・・とは言ったものの、確かに書類整理を黙々としている場合ではないのは分かっている。誘拐だとしたら何をされているかが分からない。
まずそもそもそんな簡単に誘拐される人ではない。実際に戦ったことがあるからわかる、アレを誘拐するなら不意打ちくらいしか方法が無いのだ。
(だとしてもどうやって?やっぱり窓から入って連れ去ったのかな・・・)
分からないことだらけだな、と呟きながら書類整理しているとズボンの右ポケットから振動が。
「あ、ルリアさんだ。はいもしも―――」
『ヒサメ君聞こえてる!?多分犯人特定したわ!』
「早っ!?さすがに特定速すぎないですか!?」
『今日の早朝にギルド周辺で人影がある!映像データそっちに送るからプロジェクター電源入れて!』
「プロジェクター!?レイラ、プロジェクターって・・・」
「電源入れたわよ。絶賛受信中ね」
カウンターの横にある小型の箱から出る光には緑色のバーが。左からしだいに溜まって行き、あっという間に全てが緑色になった。
「送られてきた映像は・・・これね」
小型の箱の側面にあるスイッチをレイラが操作すると一つの映像ファイルが映し出される。
そこに映っていたのは早朝の暗い時間に周辺の屋根を動く人影。
「・・・これ・・・銀髪か」
「身だしなみは結構しっかりしてるな。その割に屋根走ってるが」
「銀髪で身分は低くなくて運動能力はそこそこ・・・この人じゃないですか?」
「ルイラお前いつの間にいたの!?」
「なんかロビーに人がたくさん集まってるなーって思ったので今来ました」
いきなり現れたルイラが指を指したのは怪しい人物リストでは無い方の山の一番上に置いてあった書類。
「・・・『ルイエ・アンシェリア』?」
「今の条件に当てはまるのはこの人しかいませんよ?」
写真を見る限りは銀髪でメガネをかけた真面目そうな人、としか見えない。
職業は不動産売買兼呪術師。どうやらある程度の地位を持っていて国外に城の所有権を持っているらしい。
「「「「「・・・・・・」」」」」
書類を読み上げてみて全員が沈黙し、そしてミズキが呟く。
「・・・城に行ったら何か分かるんじゃね?」
「城があるって時点で何かが怪しいのは確かですよね」
「いや、城を持ってるほどならなんであの人を攫う必要があるんだ?」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
そして全員が口を揃えて発言する。
「「「「「わけわからん」」」」」
言わせてもらえば「意味の無い事」が多すぎる。攫う理由がないし、接点が存在しないし、まずそもそもこの国の人ですらない。本当に合ってるのか?
「理由があるとすれば・・・いや、あるか?」
「俺の知能ヤバいなのかな・・・全然わからん」
「意味も動機も手段も不明・・・怪しさはあるんだけど・・・」
「アリバイが全然ないって事だな・・・」
「・・・ここまで理由が存在しないってことはそもそも『本当に存在しない』のかもね」
「と言うと?」
レイラにその根拠を聞かせてくれ、との意味を込めて聞く。
「つまり連れ去って何かすることに意味があるのよ。でもそんなことが出来るとすれば・・・占いとかね」
「占い?占いが人攫いと関係するのか?」
「カガミマチならあるかもしれないわ。占いと言ってもいろんな種類があるの。金に運命に恋人に友人に・・・自分の余命とかね」
「・・・もしかしてだけど」
レイラの説明で各々が少しづつ何かを掴んでいた。呪術に特化、痕跡の無い犯行の痕跡。どちらも魔術ならば理由としては立証できる。
「大方だけどその説が一番有力でしょうね」
ロビーの入り口ドアを開けて、ルリアが書類を抱えながら入ってくる。
「あ、ルリアさん・・・って何ですかその書類」
「ちゃっかり機密文書。・・・実はその男の家は今危ないみたい」
「危ないってどっち方面ですか?権力的に?」
ロビーのカウンターにある程度のスペースを作ってルリアが持ち帰った書類を広げる。
「単純に言えば権力の危機。家系図が複雑すぎて良く分からないけどおそらく兄弟の一番下なんじゃないかな」
「へぇ、この人兄弟いるんですか。で、なんで一番下で権力の危機?」
「この男の兄にあたる人物二人がどっちも死んでいるのが原因だろうね」
「「「「「うわぁ・・・・・・」」」」」
その場に居合わせたルリア以外がその男に全員同情するような声が出た。
「じゃあ権力の危機って・・・」
「跡継ぎの問題かもね。それにこの男、結構な魔術の腕前らしいし占術も強いらしいよ。もしかしたら占いで自分自身によくないことが見えたのかもね」
自分自身によくないことが見えて、だからと言って過リン酸を攫う?どこがどうなったらそこの二人が絡むんだ?
「よくわからんが・・・とにかく犯人はコイツと仮定して良いんだな?じゃあ決まりだ」
【分からない人向け:占術】
せんじゅつ。文字通り『占い』です。
この作品では『過程を無視して結果だけが水晶玉に移る』魔法を占いとしています。
ただ、人の未来の可能性をすべて把握したうえで水晶玉に移すので魔力消費は大きくなるのと、性質上未来を先読みしてしまうので良くないことが見えるかもしれません(自分や友人を含む大切な人の余命など)。
関係ないですが、ファンタジー漫画などで「未来が見える能力を持っている人」がときどきいたりしますが、アレは結構複雑な設定だと思われます。
と言うのも、未来予知と言っても『結果が見えるタイプ』『途中経過が見えるタイプ』『ランダムで未来が見えるタイプ』など結構種類があります。どこが見えるかわからないし、見えたら見えたでよく無いものが見えるかもしれない、ある意味賭けみたいな能力です。案外万能じゃないんですね。
あ、さっきから「占い」=「未来予知」みたいに話してますが、金運とかそういう占いも存在します。
美術の課題(絶望)




