#41 休暇
目を覚ました直後に見える木目の天井。窓から差し込む朝日の強さから今日は快晴である事が伺える。
どうもおはようございます、アサカヒサメです。最近名字で呼ばれないせいで名字を時々忘れます。もしかしたらおはようございますじゃないかもしれませんが朝と仮定して話します。
時刻は三周目の朝5時。何を言っているのか分からないと思いますがスマホの時計は午前10時。まあそんなとこです。
本来ならば午前八時の時点で布団から起きて、部屋の郵便受けに挟まっている任務一覧の紙を眺めるところなのですが本日は少し事情が違っていて。と言うのも―――。
昨日の夜、レイラと一日の疲労を露わにしながら飲んでいた時。
ルリアが一連の調査の内容を国に報告してきたときだった。
「報告終わりました?」
「あるものは全部。アレの解析にはどれくらいかかるかは分からないけどね」
「未知なるものの研究なんてどれもそんな物でしょうよ」
「あ、それでヒサメ君に国から封筒が来てるんだけど」
一瞬、聞くはずもない単語と聞きたくないような意味合いをどちらも含んだような言葉が聞こえた気がした。
「・・・・・・はい?」
「だから、王国から君宛に封筒が来てるんだって。はいこれ」
適当に取り出してカウンターに置かれたのはA4サイズぐらいの封筒。
正直開けたくも無い。国から直接何かが来るなんて想像なんてしてなかったし想像したくも無かった。臨時給料とかであればいいのだが。
「この中に一体何が・・・・・・あの、ルリアさん?今更ですけど俺は書類読めないですよ?」
「・・・それもそうだね」
じゃあ私が音読しようか、とルリアは封を切った封筒の中身を取り出して紙を取り出す。入ってたのは白い紙が一枚だけ。
「えーっと・・・あ、この話は私はもう聞いたんだった」
「聞いたんですか?」
「一応聞いてたんだけど・・・うん、ヒサメ君ってギルドの方式ってご存知?」
「方式・・・運営方法とかですか?」
「そう。ギルドはこなした依頼とそれに対応したメンバーに国からお金が出るんだけど・・・それをするのに国に誰がいつどこで働いたのかを報告しなくちゃならなくて」
おそらく『働いたものにそれ相応の給与を』と『ブラックな環境を見つける』の二つの意味を兼ねて国はその制度を利用しているのだろう。
「まあ・・・それはそうですけど、それが何か」
「じゃあ単刀直入に言おう、ヒサメ君。君は―――」
ルリアがちょっと真面目な顔になり、息を吸ってはっきりと言う。
「―――働きすぎ」
そう、働きすぎ。正確には勤務過多なんだとか。
本人が無茶をしたとかの理由ではなく、働きすぎているから休みを取らせるべきだ、と国から直々に言われたらしい。この世界に来てからまだそんなに日が経っていない状態で毎日あることを順にこなしていただけなのになぜか注意喚起。この世界の人はどんだけホワイトな環境で生活しているのか。
そんなわけで本日は決して怠けている訳ではなく、むしろ怠けなければいけないという何とも微妙な一日なのです。
(・・・任務一覧の紙も入ってないのか)
まあ、こうやってわざわざ休みを与えられている状態なのだからこういう時は全力で休むべきなのだろう。・・・かといって一日中部屋にいるのも退屈。
そんなわけで前から気になっていたスマホの機能をちょっとずつ検証しよう。空中庭園でSNSを使った時に気になる項目があったのだ。
このアプリは自分の周囲にいる人が心の底から思っていることがタイムラインに流れる。流れてきたつぶやきは本人なのかが分かるようにアイコンと名前で区別される。
そこで目につく『フォロー・フォロワー』。
これは本人が操作できるものではない。つまり本当の意味でのフォロー、相手を信頼しているかどうかが表示されるのだろう。
自分のプロフィールを覗いた様子だとフォローが72、フォロワーが68、ブロック件数が2。
「・・・思ったけど、ブロック件数が表示されるのって心がキツイな」
意味合い的にはブロックは『相手を嫌っている』という事なのだろう。つまり誰か二人に嫌われている。
「フォローとフォロワーは内約が見れるのか・・・へえ~・・・あ、ミズキにフォローされてんの何気に嬉しいな」
こんな感じで他の人を覗いてみよう。・・・数人ヤバそうな人がいたりするが気にしない。
「まずは~・・・ルイラか」
つぶやきと現在地情報からして今は洗濯中だろう。フォローは672、フォロワーは703、ブロックは5。世間の人たちからは中々良く思われているのが分かる。
次にレイラ、現在地情報からしておそらくカウンター。フォローは64、フォロワーは89、ブロックは12。
「・・・つい最近やってきた俺よりもフォロワーが少ないってどういう事なの・・・」
本人の性格上あまり人は信用しないタイプだし、恨まれるようなことをするような感じでもある。こればかりは仕方ないだろう。
「あと付近にいるのは・・・グランツさんだな」
これは・・・詳しくは分からないが多分自室だ。位置情報は真上からの情報しか分からないのが難点とも言えよう。フォローは5946、フォロワーは8422、ブロックは3。
「・・・すげぇ何この人・・・めっちゃ信頼されてる」
以前誰かが「街の人に一番信頼されてるのはグランツ」と言っていたように、顔の広さと人の良さが他人からの信頼を生むのだろう。
「あとは近くに・・・ルリアさんでも見てみるか、凄い事になってそうだけど」
半笑いでそんなに気にせずに、出来心でアカウント情報を見てしまった。その直後、眼を疑うような、それでも確かに疑えない数値が目に飛び込んできた。
「フォロー159、フォロワー159・・・・・・ブロック・・・98455!?」
なんだこれは。表示バグ?いや、そもそもこれはスマホのような形をした『魔導書』だ。魔導書にから使う魔法に表示バグなんてあるはずがない。
ならばこれが正常。だとしてもこの数値は桁が違いすぎる。何をしたらこんなに嫌われるんだ?
「街の人には嫌われているとは聞いたけど・・・ここまでなのか?」
今更だが、この国はとてつもなく小さい。面積的にはバチカン市国が二つ三つくらいの面積だ。・・・どうやらこの世界ではこのくらいの国面積が普通らしいが。
だからこの世界での『街』は面積の広さ的には『国』と同じ。
その為一つの国に対する国民の数もあまり多くない。この国に何人いるかは知らないが約十万人となると国民の過半数は確実だろう。
「国の過半数から嫌われている人なんて滅多にいないぞ・・・いやむしろいたら困るんだけどさ」
現実の日本でそんなに顔が広くて嫌われていると言えば左翼一派の野党に嫌われている総理くらいしかいないだろう。まあ、左翼も右翼も話を聞かずに自分の意見を民意だと勘違いして騒ぎ立てれば国からして害悪極まりないのだが。
「この国は人がそんなに多いわけじゃないから政治の意見が割れなくていいよな~・・・国王制だからか?でもあの女王様は多分民主政治を名乗ってるだろうし・・・」
おおむね、ときどき国民から意見を聞いてそれを持ち帰り、国政管理部で審査して選び抜かれた物を実行、とかだろう。つい最近まで政治なんて触れさせてもらえずに部屋に閉じこもっていた女王様一人では脳内がパンクするのは目に見えている。
「まあ俺は平和に生きていれば十分なんだけどな~・・・あ?」
スマホを持ったまま身体を布団に倒し、他に何かあったっけと思いながらタイムラインを眺めていると。
「・・・なんだこれ、なんでミズキの奴焦ってるんだ?」
本当に焦っているかは分からないが、つぶやきの頻度、小刻みに動く現在地、そして『!』が多い呟きの内容。しかも内容は支離滅裂。
何やってんだコイツ、と思った瞬間、部屋のドアが壁に叩きつけられる。ここのギルドには静かにドアを開けれる奴はいないのか。
「いたヒサメェ!お前今まで何をしていた!」
部屋に入ってくるなり布団に横になっていた俺の身体を胸倉をつかんで持ち上げる。
「ッァあ!?俺今さっき起きたばっかだぞ!?」
「・・・そうか、知らないか」
「急に落ち着いたなお前・・・で、何でそんな焦ってるんだよ」
「お嬢様がいない。俺が起きた時にはすでにいなかったから随分朝早くだ」
素早く伝えられる本人が知る限りの情報と時間、そして部屋にはさまざまな私物が置いてある事を伝えられる。
「・・・どう思う?」
「どう考えても怪しいだろ。ここのギルドに来た時ですら私物色々持ち込んだ人がどこかに行く時に持っていかないはずがない。というかどっか行くんだったらせめてお前くらいには伝えるだろ」
「やっぱり怪しいか。誘拐とかの説もある、どうにかして探さないと。手伝え」
「はいはい。・・・あの人には魔力もらった借りがあるしな」
ミズキ(視点)のシリアス(多め)回。今回はちょっとだけ真面目!
今回のパートの平穏な雰囲気は多分最初だけです。一応シリアスやる気ではあるからきっと殺伐としてくる・・・んじゃないかな?そうであってほしい(願望)。
ちょっとバチカン市国の詳しい大きさが分からなかったから適当に書いたけどイメージと違ったら調整する必要があるかもしれないですね。ガバガバな背景設定には気を付けよう!
あ、バレンタインだけど特殊なお話は特にないです。
あ、進級テスト?うん・・・単位はギリギリ足りてるし・・・え?一年間合計のテスト点が足りてない?まあ、うん・・・まあ多少はね?




