#35 幼馴染
「やっほーお姫様!お呼ばれしたから来たよ!」
「あら、ルリアさんですね。わざわざ城までお越しいただきありがとうございます」
「いやいや、一応仕事だし、国王様直々のお願いは断れないしねー」
フードを被って外出は比較的珍しい感じ。ギルドが隠れているようなとこにあるのと、近所の人がそんなに亜人種に色々と文句を言う人が少ないおかげで最近はあまり被ってない。
現在は王城に入って中から王女様にご挨拶。・・・はいいのだが。
「・・・なんでルリアさんあんな堂々と会話してるんだ・・・」
「王城襲撃して以来、ルリアさんは何回か王城に来てたみたいよ。あの人、意外と経営学に強かったりするから」
「それってこの国で一般の平民が学べる学門じゃないよな!?なんで!?」
一連のリアクションをしてから率直な疑問を投げる。
「・・・というかなんでレイラ?」
「あの人に命令されたから。冒険は妹がやってくれると思ったんだけどね・・・」
そう、意外なことにルリアが指名した最後の一人はレイラだった。
一般市民にしては強いとギルド内では聞いているのだが具体的な強さは分からない。というか戦っているのを見た事が無い。指名した理由は本人しか分からない理由があるのだろうか?
「・・・なんで私が来たのか、理由が知りたそうね」
「ッァ!?いや全然そんなことは微塵たりとも」
本心を見事に撃ち抜かれて動揺。それを気にせずにレイラは喋る。
「隠す事でもないわ。妹じゃなくて私が選ばれたのには随分簡単な理由がある。確信は無いけどルリアさんが私を選ぶときには決まっている理由がね」
「・・・そんなに何か起こりそうなのか?」
「ギルドのメンバーは大抵が何かに特化しているわ。ルイラだったら『移動』と『陽動』、グランツさんなら『隠密』と『諜報』、って感じにね」
まあ、確かに種族が違うから得意なことは分かれるよな、と返す。
「それは私にもあるんだけど・・・私の場合は『信用』と『対人』ね」
その二つの単語を聞いてどこかの身の毛がよだつ。信用と対人?とても10代の少女に持たせるべき称号ではない。
「生物である以上、弱点と脅威を一番知っているのは同種族。だから私はそんな特化分野になったわね」
「何が・・・・・・」
「分からない?『あのギルドで人間に対して一番強いのは私』なの。ルリアさんは『相手を倒す』ことには強いけど人間にはダメージが大きすぎるから大抵は使わないわ。根が良い人なのもあるけど」
平然とした顔で女王様と話すルリアを眺めるレイラは興味無さそうに喋る。
「・・・え?つまりレイラは『人間に対して一番強い』んだろ?じゃあレイラが指名されたってのは・・・」
「高確率で対人戦闘が発生する、でしょうね」
対人戦闘。飛空艇に乗って上昇するだけで何かが起こるのか?
いや、起こったとしてもその手のプロを呼ばないといけない程なのか?
「まあ、その理由は空中庭園に行ったらわかるわ。・・・場合によっては行く前に分かるかもね」
一体何が、と言いかけた所で王城入口から見知らぬ人が集団で入ってくるのが見える。
金髪で長身、全体的に白の色合いで纏めた清楚な服装。御伽噺に出てきそうなデザイン。
「女王陛下、この度は直々に受けた命により参上いたしました」
「この度はどうも。任務の成功をお祈りしていますわ」
一連の会話のやりとりをながめてぼそっと呟く。
「・・・すっげぇ律儀に行動している人だなぁ」
「あれが北のギルド『カロライナ』ね。あの団長は結構地域の評判がいいわよ」
「それ顔補正だろ?やっぱどの世界でも信用業務は顔が一番なんだな」
その話題の金髪の団長はこちらを振り向き、軽く会釈をした後に挨拶をする。
「初めまして少年、君もアルゴノーツなんだろう?私はアルバトリアム・ド・ルマンセ、北のギルド『カロライナ』の団長をしている。よろしく」
「デミドラ・ヒサメです。よろしく」
こういうのは名前で言うよりもギルドネームで通したほうが後々の関係上やりやすかったりする。親しくなるのならばそのままでいいし、裏切られるのならば本名を知られなくて済むからだ。
「さて、挨拶はこれでいいんだが、問題は・・・」
「おやおや、治安が比較的安定した北で堂々と居座ってる金髪御貴族様じゃないですかぁ?」
まるでチンピラの如く口調を変えながら喧嘩を振るのはルリア。
「・・・またか。昔から言っているだろう、君のギルドは優秀だしそれなりの成果も出している。だが、君のせいで評判がプラスマイナスでゼロどころかマイナスになっていることに気づかないのか?」
そのセリフを吐いた瞬間、北の団長は綺麗に決まった右ストレートで城の入り口の方へ吹き飛ばされた。
「っちょ!?ルリアさん!?」
「まったく、あの金色は人を罵倒することしか覚えないんだから・・・」
「いや先手を叩きこんだのはルリアさんですよね!?」
驚嘆のリアクションをしている間に入り口の方から一瞬で何かが通り、その先端をルリアは素手で受け止める。レイピアの振り抜きを白刃取りできる人間を肉眼で初めて目撃した気がする。
「君はいつもそうだ!言葉に困ったら即座に力に頼ろうとする!良くそんな性格で団長になれたな!」
「実力ですよーだ!アンタの方が私よりも実際に団長やってる歴短いでしょうが!」
「なっ!?それは高等魔導教育を受けていたから仕方がないだろう!?」
「はいはいわざわざそんなもの受けて偉いですね~私は受ける金が無かったけどね~」
「君はそもそも初級教育の魔力パッチテストで唯一無反応を叩きだした唯一の人物だろ!?」
傍から見てて思う。何をやっているかわからないと思うけど、これ、お互いに罵り合いながらリアルファイトしてるんです。
レイピア相手に素手で対抗できてるのもおかしいけどあの怪力を受け流してすぐさま反撃に移行できるのもおかしい気がしなくもない。
「・・・良く舌噛まないわよね、あれ」
「あの二人は何なの・・・?幼なじみか何か?」
「本人が言うからにはそうらしいわ。でもルリアさんはお金が無かったから教育課程を完遂できなかったせいで付き合いは随分昔に切れたらしいけど・・・」
「・・・あの関係性からして絶対それは無いな・・・」
昔からの付き合いならあれは止められそうにないな、と思いつつも自分自身はどこか憧れるような節があるようにも感じる。幼なじみなんて男女問わずいなかったからだ。兄弟もいなければ従兄弟がいるわけでも幼なじみがいるわけでもない。
「・・・思い返してみて、ほんとになんで生きてたんだろう俺・・・」
学校も楽しくないのになぜ生きていたのか。ひとえに死ぬのが怖かったのだろうけれど、死んだ後からすればさっさと死んどいたほうが楽、みたいな感想しか出てこない。
「とにかくあの二人を止めないと話は先に進まないわよ?」
「・・・え?うん・・・え?いやいやいや、なんで自分で行かないのさ」
「面倒だから?」
・・・本当になんでルリアさんは最後の一人にこの人選んだんだ。
「と、とりあえず飛空艇の搭乗口の方へお越しくださーい!」
裏口の方から案内員の人が困惑しながらも大声で集合をかける。
「出発時間らしいわ。行きましょ」
「え?あれ放置で良いの?」
「出発しそうになったら来るわ。それともヒサメ、あの間に入って止めてこれる?」
振り向きざまにレイラが後ろに指を刺した方向を向いてちょっと考えた後に溜め息。
「・・・・・・無理だな」
「一応はやってみようと考える発想、嫌いじゃないわよ」
「お褒めに預かりどうも。一応はやってみようとはするさ。すぐ諦めるけど」
話しながら城の裏口から出ると、そこには―――。
「・・・気球?」
インフルはもうかかったから大丈夫だろ~って思ってたら普通に風邪になりました。龍角散おいしい。
頭がフラフラするのはまだ良いんですけど、この時期で一番つらいのは手が悴んでロクにキーボードが触れなくなることです。そのせいで誤字を連発して普段よりも疲れている気がします。
今更なのですが、三点リードは「・・・」と「…」のどちらが良いでしょうか?こっちの方が読みやすいよ、などの意見をお持ちの方は感想欄にご意見ください。高確率で反映します。




