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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 1.5 罠と文明と空中庭園《ロストガーデン》
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#33 工作

さて、今更なのだが実はちょっとした特技を持っている。

あまりするわけでは無いのだが工作が得意なのだ。

どういう訳か知らないが生まれつき指が妙に長い。長いと言っても生活に支障をきたす程ではない。「男にしてはそこそこ長い」程度だ。

それを活かして細かい作業をするのは得意だし、別に嫌いではない。

さて、じゃあ何を作るのかと言うと―――。

―――注射器。


「っぽい何かだけどな」

やってきたのは小物屋。少し前に隕石を買った古物商の店の近く、というか同じ通り。

「どうやらプラスチックはこの世界にあるっぽいからあるといいんだが・・・お、あったあった」

探していたのは長さ15センチ程度のプラスチックの筒。これを今回の軸として使う。

太さは直径3センチ程度、厚さはおおよそ5ミリ。今回の工作には良いサイズだ。

さらに追加で筒を押し込む棒を買う。ピストン方式で押し込む形にしたいので直径2センチのプラスチック棒を同じ本数分。

とりあえずここで買う物はそれだけ。あとは工房でこれに横から穴を開けて―――。

レジで金を払いながら考える。何か、何か忘れているような。

「・・・あ、一番大事なもの忘れてた」

すっかり忘れていた大事な物。これを作る上では大事というか、ないと成り立たない。

しかも変えるものではなく、ついでに存在するかも良く分かっていない。

原理的には存在して敗走だし、技術的にジルオさんに頼めば作ってもらえそうなのだが・・・それがないと買い物がすべて無駄に終わってしまう。

「作ってもらえるかな・・・銃があるなら存在はしてそうなんだけど・・・」

買い物が無駄にならないようにお祈りしながらパーツをギルドに持って帰るのであった。


そしてギルドに帰り、すぐさま工房へ。

「・・・・・・かんしゃく玉?」

何だそれ、と言いたげな表情のジルオ。ああ、この世界に伝わっていなかったか。

「まあなんと言うか・・・『破裂して』『俺の魔力がしみ込んでいる』小さめの球を作りたいんですよ」

「不思議な注文だな・・・まあ出来るだろ。あの大砲作る時にも似た技術は使ったしな」

天才ゆえの楽観的な思考。なんか既視感があるなと思ったらあれだ、テスト当日にクラスの勉強できる奴が「どうにかなるでしょ」って言いながらテスト受けて本当にどうにかなるようなパターンに似ている。

「あの大砲は『魔力を入れたら内部に魔力弾が生成される』だろ?あれは中に『魔力を特定の形にして固定する』装置を中に仕込んでるのさ。それを使って生成する弾のサイズ調整をすればできるだろうな」

「そんなサイズ調整って簡単なんですか・・・?」

「いや全然。一度サイズを決めたら分解しない限りは変更できないぞ」

「それってつまり俺の要望で専属注文(オーダーメイド)ってことですよね!?いいんですか!?」

当たり前の疑問を投げたつもりだったがジルオは首を傾げながら冷静に答える。

「『変更』は出来ないが『作成』は出来る。制作コストはそこまでかからないし、分解するよりはよっぽどそっちの方がマシだ」

そう言うなりジルオは座っていた椅子の下にある引き出しから謎のパーツをいくつか取り出して器用に繋げていく。

流れるような作業の滑らかさに見とれていたら、いつの間にかその装置とやらが完成していた。

「ほい、完成。後は出したい大きさのものを頭の中でイメージして利き手から魔力を流す。以上だ」

「イメージでいいんですね・・・」

思ったけどこの世界、火の玉は飛ばしたい方向に飛ばせるし魔力注入も気合いでどうにかできるし、なんか適当・・・いや、補正が効いていると考えよう。

自分に不利なことは考えなくていい。基本的に異世界に転生する少年少女ってそんなスタンスな気がする。なら俺もそんな感じで。

(―――出したい大きさのものを頭の中でイメージ・・・)

プラスチックの軸の中に綺麗に収まるサイズ、つまりジャスト2センチの魔力弾が欲しい。

(う~~~~~ん・・・・・・これぐらい!)

いい感じの大きさを頭の中に思い浮かべ、そして右手で握力測定をするかのように魔力を流し込む。

水色のメダルが貼りついたような機械は綺麗な水色の小さな球体を生成して―――。

「・・・えっ、あのっ、ちょっと、出すぎ出すぎ!しかも止まらねェ!」

「流し込んだ魔力の分だけ出るからな。しかも今回は生成するものが小さいから余計にたくさん出てるんだろ」

「ちょっとこれ止め方ないんですかーっ!?」

「無いッッッ!!!」


そして数十分後、自室に戻って机に座るヒサメの前にはビニール袋いっぱいに詰まった水色の球体。見ているとビー玉に見えなくもない。

「さて、あと必要なのは・・・写真」

ここで勘の良い人はお分かりだろう。勘が良くない人もこれ以上引き延ばすと面倒だから解説しよう。

ヒサメが作ろうとしている物は注射器型の写真射出機。筒の中に丸めた写真と魔力かんしゃく玉を入れ、それを中心に穴が開いた仕切りで隔てる。

後はかんしゃく玉を棒で勢い良く押したらかんしゃく玉が破裂して魔力が放出。破裂の威力で丸めた写真が飛び出すと共にかんしゃく玉に入っているヒサメの魔力で実体化、と云うことなのである。

「これとこれを組み合わせて・・・あ、でもこのままだと持ち歩いてる時にうっかりぶつけて暴発しそうだな、押し込む棒の方を横から穴開けてストッパーでも作っておくか」

かんしゃく玉と呼んでいるが実際は火薬玉。暴発したら火傷の危険性もありえなくはない。安全面と持ち運びの両方を重視して金属ピンでストッパーを作っておこう。

「・・・よし、完成!」

出来たのは押し込み棒が刺さったプラスチックの筒が三本。

ストッパーは押し込み棒に横から突き刺さるようになっている。抜かないとかんしゃく玉を押し込めない仕組み。

「さて、試し打ち・・・前は魔方陣を出してやってたけど今は的になりそうな奴がいたな」

ニヤリと笑いながらヒサメは御自慢の便利道具を手にカリンの部屋に向かった。

ヒサメが作っている注射器のようなものは構造はすっごいシンプルです。

内部構造は竹をくりぬいて作る水鉄砲とほとんど同じ。というかアレを意識しました。

写真の出し方を変えるあたり、ヒサメは意外と格好つけたがるタイプなのかもしれません。

・・・まあ、元の世界でそんなことできなかったからなのでしょうけど。


あと一つか二つくらい話を跨いだらシリアスっぽいのをやるかも。

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