#31 真心
「・・・疲れた」
「そんなにあの大砲疲れるんですか?」
「反動が凄いし全身だるいし・・・あっ、これが魔力不足ってやつか」
ギルドに戻るなりベッドに俯せでダイブ。コントロールバーを引き下ろしてステータス欄を眺めると確かに魔力のメーターが僅かしかなく、赤色に点滅している。
魔力が足りなくなると全身に力が入らなくなるのか。使いすぎには気を付けねば。
「まあ、あんな雹みたいなものを降らせたらそうもなるじゃろうな」
「・・・あの、なんでカリンさん俺の部屋いるんですかね?」
当たり前の如く部屋に存在していて気付かなかった。いつの間に。
「ミズキが帰ってくるなり壁にもたれかかって爆睡してもうたからの。折角だから布団をかけてこちらの部屋に来た」
「ああ、まあ疲れてたでしょうね・・・説教喰らってたし」
体力を絞り切ったミズキと魔力を絞り切ったヒサメがギルドに帰った直後にあったのはルリアからの説教の嵐。
ヒサメはただ加勢に行っただけだったのでお咎めはそれほどではなかった。
ただミズキは自ら行った事と街の被害を考えなかったことの責任が降りかかっていてとんでもないことに。
「・・・いや、だとしてもなんでカリンさんヒっくんの部屋にいるんですか、不法侵入ですよ不法侵入」
「おうこら銀髪メイド、お前も人の事言えねーからな、お前も勝手にドアこじ開けて入ってくるだろ」
「私のはドアを開けてるんじゃなくてドアを通り抜けてるから大丈夫です!」
大丈夫はどこに掛かってるんだよそれ、と呟きながら溜息を吐いて顔を布団に沈める。
まずは整理だ。今日わかった事は「魔力の上限」。フルチャージは魔力値的にも一日三回が限度。それ以上は魔力が足りないだろうし体も耐え切れない。既に全身が筋肉痛のような細かい痛みに襲われている。普通に使うのであれば最大出力はするべきではないだろう。
そしてもう一つはあの大砲の持ち運び方。これは大砲を使う少し前にやってみて気づいたことである。
広場に向かって大砲を撃つ少し前、ヒサメは悪知恵に近いアイデアを閃く。
(・・・これ、もしかして写真で撮ったら増えるのか?)
写真は印刷することが可能で印刷した写真に魔力を入れると実体化する。
つまり、「存在するものを写真で取って魔力を入れればコピーが出来る」?
思いついたらならとりあえずやってみよう。カメラを起動してエンタープライズを地面に置いて撮影。そして写真を開いて実体化。ここまではいい。
(そしてこの写真に魔力を・・・どうだっ!)
そしてその結果は―――。
地面にゴトン、とエンタープライズが落下する音。
「・・・やっぱダメかぁ・・・」
反省しよう、世の中そんなに甘くは無かった。
(・・・あ?いやおかしくないか?)
写真を実体化して魔力注入。そうしたらゴトンと落ちる音がした。
複製できないのなら消えるはず。なのにどうして落下した?
地面に置かれている物が何もないのに再び落下する?そんなはずがない。
もしかしてと思い再び写真を実体化、そして置いた場所から少し離れて魔力を入れる。
(これで・・・どうだっ!?)
魔力を入れた場所にエンタープライズが落ちる音。オリジナルを置いた場所には何もなかった。
「・・・・・・これ、もしかして・・・」
この世界に存在するものを印刷した場合はその物を引き寄せる?
「・・・マジかコレ、物を無くした時とかは最強の力じゃねえか」
そんなことをしていた。実験の結果をまとめると「実在するものを生み出そうとするとオリジナルが引き寄せられる」ということだった。
つまりはあの大砲を常時持ち歩いて無くとも、必要な時に写真を取り出して魔力を込めれば呼び出せるということ。・・・呼び出すことは出来るが戻せないのが欠点だろうか。
「今日あったことはそれぐらいか・・・もう寝よ・・・」
「ちょっとヒっくん!?まだご飯すら食べてませんよ!?」
「寝るってか動きたくないんだよ・・・とりあえず出てってくれ・・・」
「と、とにかくちゃんと後で起きてお風呂に入ってから寝てくださいね!?」
驚いたような表情をしながらルイラが部屋を出て行くのが視界の端に移った。
「カリンさんも出てってくれ・・・全身ガチガチで動けないんだ」
「単なる魔力不足じゃろうに、ほれ」
急に首筋の裏を掴まれたような感覚と共に、全身にひろがっていた筋肉痛に似た痛みが少しずつ引いて行くのを感じる。
「へっ!?なにを、何をしてんの!?」
「魔力譲渡。首筋か背中から入れないと魔力が暴走すると先日レイラに教わったのでな」
「いやいやいやいや!?なんで魔力渡して・・・」
「妾の分が枯渇することは殆ど無いから安心せい。妾は妖狐じゃからの」
首筋から手を離すと同時にカリンは立ち上がる。特徴的な耳は妖しい笑みと同期するかのように揺れる。
妖狐、それは言い易くすると狐の妖怪。ただの狐が妖怪に成ったり、時には神霊に成ったりする場合の事を指す。そして妖狐は基本的に妖術がメイン。物理的な争いにはほとんど関与しない。
つまりは、生まれ持っての魔力タンク。亜人種補正が魔力関係に利いているのだろう。
「ほれほれ、あの銀髪の娘を追いかけんと。多分あの娘、お主の反応が雑すぎて拗ねておるぞ」
「・・・・・・えっ」
「お主は本当に人の心を察するということが絶望的に下手じゃのう・・・」
ここまでするかと言わんばかりの苦々しい表情と溜め息を吐くカリン。
「いや俺何も悪くないよ!?体は確かにギッシギシだったし・・・」
「女子はあえて理不尽を望むものじゃ。ほれ行って来い」
ベッドから強制的に謎の力で立ちあがったと思ったらそのまま宙を浮きながら廊下に頬り投げられる。御札は念力かなにかなのか?
「わっかんねぇ・・・全然わっかんねぇよ・・・」
壁に叩きつけられてヒリヒリする鼻の頭を押さえながら立ち上がる。
内心で呆れながらもそっけない態度を取ってしまったのは確かに事実。カリンが言っていたことも確かに筋は通っている。
「・・・ヒっくんどうしたんですか?すごい勢いで部屋から射出されましたけど」
声がするなり振り向いてみたらルイラがそこにいた。
「えっ?あー、うーんとな、あー・・・」
いろいろ出かかった言葉をいったん押し戻し、深呼吸して思いついたことを話す。
「・・・今日の夕食って何?」
なんか今回も内容薄い...薄くない?
なんか引きずりそうな話の終わり方してますが何にも繋がらないので大丈夫です。
インフルの時ってキーボードまともに叩けませんね。出席停止だからって甘く見てました。




