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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 1.4 武器と未来と一神教《モノセイズム》
32/126

#28 宗教

すべての物事には「理由が存在する」。

「それはない」と思う人もいるだろう。確かに起こっていること全てに理由が存在するとは限らない。

だが「物事」には全て理由が存在しているのだ。

例えば、「誰でもいいから殺したかった」などと供述する通り魔殺人犯がいたとする。

この場合は犯人が本当に「誰でも良かった」と思っているとしよう。「誰を殺すか」は確かに理由は無いかもしれないが、「なぜ人を殺すか」には理由があるかもしれない。

このように、質問に答えが無くてもそれに近い質問の答えならある。というか、なければならない。「ならばなぜやったのか?」と聞かれても答えられないことになってしまうからだ。

なぜそれをしたのか、という質問の回答が「理由は無い」だった場合、まずそもそもなぜ犯行を起こすまで「生きていたかったのか」を聞くべきだ。

ともあれ、人が起こす行動には必ず理由がある、関する理由は無くとも、その理由の理由が。

「・・・じゃあなんで『司教を追い出したい』んだろうか」

得も無く損も無いのであれば放っておけばよい。なのに追い出したがる人物がどこかにいる。ということは―。

「『この司教を嫌っている奴がいる』『この司教に宗教を広められると困る奴がいる』『この司教の存在が国民または国を脅かす』の三つか」

人通りの多い大通りに出るまで、裏路地を走りながらミズキは考えていた。

追い出すのは簡単だ。問題は『どうやって追い出すか』なのだ。

「追い出す」、つまりこの国から追放できればそれで良い。この国からいなくなればよいのだから別に殺しても構わないというわけだ。

・・・ただ、相手は見た目はただの司教。いきなり飛び出して斬り捨て御免したらこちらが追い出される。・・・実際に俺も国外からの侵入者な訳だし。

おまけに、この国に来ても和服を着ているせいで妙に人ごみの中でも目立つ。首を刎ねるにしても犯行現場を少しでもみられ多良インパクトが強すぎてすぐ見つかるだろう。

まだいつもの私服じゃなくてギルドの甚平なだけマシなのだが。

だが、自分自身の事だから分かっている。俺は潜入とかは苦手なのだ。

任務の状況的にギルドから協力は来ない。まずそもそも俺はあのギルドに所属しているわけでは無いし。

「どうすれば・・・こう、うっかり殺しても合理性が保てる、正当防衛って言い張れそうな策は・・・・・・」

・・・・・・ん、正当防衛?

正当防衛、それは相手から攻撃された時に守って反撃することを合理化するための言葉だった気が―――。

「・・・それだ!」

一瞬で閃くアイデア、湧き上がるイメージ。それほど苦労もしなくて、かつ隠密動作がほとんどない、最高の作戦が。

「責任は全部後で考える!とにかく特攻だッ!!!」


この国は円形。中央の王城から東西南北とその間、計8本の大通りがある。

その中でも東西南北の大通りは中央に噴水付きの大きな広場があるのだ。ヒサメが初めてこの国に来た時に水を飲んでいた噴水はこれの事を指す。

ギルドは国の西南西の国外壁付近に位置しており、司教がいる広場は南広場。

そして、司教が何やら話をすると言っていたものだから来てみれば宣伝。

「・・・いや、司教なんだから宣伝しないとダメか」

分かってはいるが、さすがにここまで予想通りの事を語られても、と思いながらジルオ萩が笑いをする。

宣伝、正しくは「布教」だろう。だが、急に広場の演説台に登って確認も出来ない神を語られても、と言った気分。

溜め息をつきながら魔法道具に加工されたテレパスを起動。

「・・・もしもしルリア、市況の演説は予想通りだ。司教がただ一人で演説台の上で長々と・・・」

振り向きながら現場の状況を伝えようとした、その時―。

演説台の隅に何かが落下したような音がした。

「どうも初めまして司教様、早速だが御命頂戴しても?」

現場は2秒ほど静まり返った後大混乱。まあ、視界の端に何かが落ちてきて、しかもそれが喋って、挙句の果てに目の前の命を消そうとしているのだから。

『ちょっとジルオ!?なんかすごい音したけど!?』

「いや、あー・・・胡散臭い司教と・・・見知ったバカが一人だ」


「何それ!?何やってんの!?」

いきなりギルドのロビーでテレパス越しに大声で怒鳴るルリア。

「ルリアさんちょっとうるさいですよ、何があったんですか」

そう尋ねても返事はないどころか、聞こえてないかのように大急ぎで任務の紙を貼ったコルクボードを隅々まで見通す。

「う、嘘でしょ・・・本気でやってるの・・・!?」

「ルリアさーん?聞こえてますー?」

「えっ!?あっ、なっ、何!?」

「いやなんでそんな名前呼んだだけでビビるんですか、何かあったんですか?」

檻に入れられても動じないルリアがここまで動じている。それほどの事なのだろう。

「ミズキが騒ぎ起こしてるの!しかも明日やるはずの標的相手に!」

「何やってんだアイツ・・・」

「何やってんでしょうね・・・」

ルイラに視線を送っても同じような視線が帰ってくるだけだ。

「で、それの何がヤバいんですか、俺だったらまだしもミズキだったらそんな・・・」

「問題なのは標的の方!あの司教はスパイよ!しかも実力行使系の!」

実力行使系、とは。宗教を布教するのに実力行使という言葉は用いたか?

少なくとも自分が持っている記憶ではその言葉は使わないような気がする。

ルリアの怒声で一気に騒がしくなったギルド内。それは焦りと不安による、危険な騒がしさ。

「ヒっくんどうします?加勢に行ってみますか?」

「いや・・・それ以前に聞くべき人物がいるだろ」

行動の前には調べる。なんでそうなったのか、どうしたらそれを実行できるのか。

それらを聞くには、一人だけ思い辺りがある人物が―。

【いまさら解説:亜人種補正】

純人間を「普通」とした時、人間よりもステータスが高くなる数値を亜人種補正と呼びます。

亜人種補正は亜人種によってさまざま。ヒサメの龍種(ドラゴン)は全体的な骨の構造と身体能力強化、グランツの狼人間(ウェアウルフ)は嗅覚と聴覚と脚力、ジルオの矮人(ドワーフ)は精巧作業技術と耐熱など。これらは亜人に近づき、人から離れるほど強化されていきます。

種によっては遺伝で純黒化(ブラックアウト)というのもあったり。悪者の息子が悪者になるのは、もしかしたら親からの遺伝で『必ず悪者になる』ようになっているかも。


もう今年も終わってしまいますね。そう言えば明日は正月ですよ、正月。

つまり・・・?

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