#25 休日
・・・うん、いつだって布団という物は素晴らしいものだ。
日々の疲れをスッキリ解消してくれて、おまけに温かい。
元の世界の頃は布団から起き上がって外の陽ざしを見ると学校に行きたくなくてげんなりした記憶があるが、この世界はそんな法則が通用しない。なんたって起きたらいつも日が出ているとは限らないから。
起きて窓の外が暗くても「あ、朝だな」と適当に解釈して布団から体を無理やり起こすようにしているのだ。・・・というか、ここのシステム上『何かあったら即座に起きて戦闘準備』だろうからすぐに起きれる準備はいつでもしてある。
おっと、少しばかり遅れました。布団の中から失礼します、アサカ・ヒサメです。
ここ最近漢字という物を見ていなくて「自分の名前は最初からカタカナだったのではないか」とか思い始めました。魔力を注入している時のスマホはなぜかボイスメモ以外の言語が英語になるのも原因の一つでしょう。英語は未だに苦手ですが。
さて、いい加減に布団から体を起こすとして。本日はジルオさんに金属を渡して、作ってもらいたいものの要望を伝え、完成までの時間を潰すというのが今日の予定です。
つまりは、本日はそんなに予定があるわけでもない訳で。そこで折角だからやっておくべきものをやっておこうかなと。
「・・・この世界の疑問検証だな」
異世界マンガなどで「どうしてこうなってるの?」などと思う場面はあるかもしれません。でもそれは作者のみが知ることで、設定集でも公開しない限りはよくわかりません。
でも、自分で体験してみて実感しました。本当に分かりません。
今のところは「よくわかんないけどそうなる」程度です。
それでも一応は調べれることは調べておこうかな、と。まずは―。
「・・・写真だな」
ズボンのポケットから寝ている時にうっかり折り曲げてしまったちょっとしわの入っている写真を取り出す。
少し前に自分勝手に「回数に限度があって使うと色が薄れていく」と解釈しました。どうやらその仮説、合ってもいるし間違ってもいるみたいです。
とりあえずバナナをプリント。そしてそれを量産化すると当然色が薄くなり、最終的には画像データが壊れてしまいます。
・・・なのですが、よく思い返してみてください。『今までに何回火の玉と魔方陣を使ったと思いますか』?
恐らくであれば答えられないほどに使ってます。10回なんて余裕でオーバーしています。
でもこの二枚の写真。理由は分からないけどなぜか「画質が落ちない」んです。
消えるか長時間残るかは分かりませんが、とにかくこの二枚は消えない。
「・・・この二枚の写真の共通点は・・・『パソコン接続』か」
そう、この2枚の写真の共通点は『パソコンからの転送』ということ。
どういうルールなのかは相変わらずわかりませんが、少なくとも「写真はどれも使った分だけ薄くなって使えなくなる」と言うわけでは無いようです。
・・・ああそうだ、実は写真つながりでもう一つありまして。
特に何かするわけでは無いが火の玉の写真を出す。魔力を込めて実体化。
そう、ここです。「魔力を込める」、この動作が疑問点です。
私は元の世界で魔力を込める練習なんてしたことが無いのですが、なぜかこれは出来るのです。手に力を入れたらなんでかこの通り。不思議です。
火の玉の操作もそう。なんでか念じたら飛びます。何か唱える必要も無く、ポーズも必要ない。なぜか「そんな感じで飛んだらいいな」と考えたらそうなります。
・・・なんだろう、このご都合主義感。
ライトノベルとかを読んでいて疑問に思っていたことは実際に体験してみても疑問のままです。もしかしたら描写されてないだけで本人も実は困惑していたかもしれませんね。
次に検証しておきたいのは―「翻訳アプリ」。
「実際に使ったことはあまりないんだよなー・・・どうなんだろ」
今までの経験上、アプリを魔法として使うには魔力を通す必要があります。
でも魔力を込めている感覚は無し。コントロールバーを引き出してみても魔力の減衰は確認できません。
現状考えられるパターンは『魔力の上限が減る』か『魔力を消費しないタイプのアプリ』の二つ。
後者はあまりにも都合が良すぎる気がするのでとりあえず前者と言うことに仮定しておいて。
「さて、実際にアプリを開いてみて魔力を通す、と・・・」
アプリを開いても『ネットワークに通じてません』と出るだけ。
ここまではいつも通り。魔力を込めて何が出るのか。それとも出ないのか。
いつもの如く気合いで魔力を注入。縁が魔力でぼんやり光るスマホに映し出された文字は。
『Active』
「・・・アクティブ?」
その英単語が書かれた緑のボタンが画面の中央に一つ。それ以外は何も無し。
アクティブは確か「動作している」とかの意味だったような気がする。
「『動作』・・・?これってもしかして・・・」
これがボタン、そしてアクティブということは。
そっとスマホを持っている右手の親指でボタンを押してみる。
ブブッ、とバイブレーションと共にボタンが赤くなり、画面の英単語は『Disable』に。
「おっ?・・・えーっと・・・・・・なんて読むんだコレ」
意味合い的には「動作」の反対なんだから「動作していない」とか?
「これで翻訳アプリが無効になるのかな・・・ルイラー?」
声が反響する廊下の仕様上、いつもだったら呼んだらすぐ来そうなのだが。
「・・・もしかして言語が通じてないから認識されてない?」
そこでちょうどよくドアが開く。要件は分からないがルイラだ。
「あ、ルイラ。ちょっと・・・」
「■■■■、■■■■■■■■■■■?」
「へ?なんて?」
「■■■■■■■■?■■■■■■■■■?」
「あ?・・・あ???」
「■?■■■■■■■・・・」
「ああもう、無理!無理だ!」
意思疎通が壊滅的。とりあえずルイラに説明するために翻訳をアクティブに。
「さっきから何言ってるんですか!?洗濯物を・・・」
「え、あ、あー・・・洗濯物?出したぞ?」
「じゃあ最初からそう言ってくださいよー・・・いきなり訳の分からないこと言って驚きましたよ」
なるほど、相手からも日本語は『訳の分からない言葉』になるのか。どうやら翻訳アプリは本当に作動しているようだ。しかも自動で。
ずっと疑問に思っていたことの一つが解消された。・・・まあ、詳しい点は良く分かってないが(魔力消費とか)、とにかく分かったのだ。
まだまだ分かってないことはいくらでもあるが、次は―――。
「・・・ヒっくん?ヒっくーん?」
「ほあ!?あ、ああ・・・何?」
「ヒっくんの魔導書、なんか揺れてますよ」
魔導書なんて持ってないし揺れるって何だよ、と言おうと思ったがギルドには「スマホ=魔導書」と言ってあるのだ。つまりはスマホが揺れてるよ、と。
「揺れてるって何が・・・あ、電話か。はいもしもし」
言わなくてもいいのに「もしもし」と言ってしまうあたり、未だに元の世界の癖が抜けきらないのだろう。
『おっ繋がった、注文されてたのが出来たぞ、工房に取りに来い』
「あっ、了解でーす」
システムが変わってもアプリのGUIが変わってないのは個人的にとても嬉しい。使い慣れている感じがするし、操作に困ることが無いし。
「何かあったんですか?」
「俺がジルオさんに注文してたものが出来たらしい。それの報告だった」
「じゃあヒっくんにも愛用武器が出来るんですね!?」
「愛用になるかは分かんないけど・・・まあ」
ルイラを取り残して部屋から出て行く。ルイラだったら物は盗らないだろうし、第一あの部屋に盗られるようなものは置かれていない。財布だって持ち歩いている。
さて、唐突ですがここでクイズ。
私はジルオさんに「男のロマンを詰め込んだもの」を注文しました。
さて、一体それは何でしょう?




