#21 戦闘
どうも皆さん、届いているかは分からないですがお久しぶりです、朝夏日鮫です。
ところで皆さんに質問なのですが、皆さんは保護者から監禁や軟禁された事があるでしょうか?
少なくとも私は無いです。あるって答えた方がいらっしゃった場合、学生ならすぐに児童相談所へ、既に大人になってしまって保護者が他界しているような場合は飲み会の話のネタにでもしておくのがいいと思います。
ぶっちゃけると「昔に軟禁された事があるんだ」って言っても「マジで?」くらいにしか思われないでしょう。ヒトという生物は他人の過去は存外気にしない生き物です。なんたって他人ですから。自分に関係ないことは共感していても本心はあまりしていないのがヒトです。
警察に言ったとしても「それを今更言われても」みたいな表情をされるでしょう。あ、少なくとも私は経験したことないのでこれは憶測です。あまり気にしないでください。
さて、なんでそんな話を急にしたのか。その理由は―。
実際に捕まっているからです。
「檻に入れられるとかなんだよ・・・・・・」
「まあまあ落ち着いて!」
「こんな状況でルリアさんは落ち着けるんですか!?」
「騒がしいのは慣れっこだからね!」
ダメだ、論点とかそれ以前の問題として認識がズレている。
落ち着いて状況を整理しよう、山の中腹部にあった穴から落ち、気を失ってここの檻に入れられている。
檻の周囲には斧や剣を持った人型生物が多数。これがドワーフなのだろう。
檻の形状は金属の鉄格子に上下を鉄の塊で塞いでいるような形だ。
(しっかし・・・ほんとドワーフって身長低いのか・・・どれも高齢っぽく見えるし・・・ジルオさんがズバ抜けて身長高いんだろうな・・・)
小中高とクラスで身長はそこそこあった方だ。高校二年になる時の測定で178cmあったことも覚えている。だがジルオさんはそれ以上に高い。ドワーフなのに。
次に知りたいのは檻の金属の材質・・・・・・なのだが、見ただけで材質が分かるほど科学に強くない。高校のコース選択で理数系コースを選択したが専攻したのは物理と地学、それと宇宙。科学分野は苦手だからなるべく避けてきたのだ。
(見た感じ普通の色・・・でも鉄のみにしては黒い・・・量とコストパフォーマンスからして・・・鋼鉄とか?)
実はこの檻、そんなに古くない。というか、檻としてはかなり新しい方だろう。金属に於いて錆は年月を調べる唯一の手がかり。
檻から見える街の様子で、至る所の金属が錆びていることからこの山でよく産出される金属は錆びない金属ではないようだ(この檻だけ別の材料で作っていたら話は別だが)。
そこまで思考を張り巡らせておいてひとまず溜め息。
(・・・いや、やっぱ捕まえられてるのが一番の問題だろ・・・警戒されてるわけだし・・・)
檻の周囲に武器を構えているドワーフがいる時点で警戒されているのは一目瞭然。何かあったら檻の隙間から武器を刺してくるのも予想できる。
「これどうしたら・・・いやどうにかなるのか・・・あ?」
檻を掴んで隙間から外を眺めるようにしていると、何やら近づいてくる人が。
他のドワーフよりも見た目が老いていて杖を使っている。・・・うん、どう考えても長老だ。想像で出てくるようないかにもな見た目、絶対そうだ。弓のように曲がった背骨はそれだけで長く生きてきたことを感じさせる。ロールプレイングゲームで結構説得に時間が掛かるめんどくさいタイプの見た目をしている。
「ちょっとルリアさん・・・長老っぽい人出てきちゃいましたよ?」
「おっ、確かに・・・お堅い雰囲気だね」
いや捕まえられておいて感想それしかねえのかよ、との心の声は黙殺。
「・・・さて、そこの侵入者共」
「「はい侵入者ですが」」
「・・・ここまで思い切りがいい侵入者も初めてだな」
・・・でしょうね。ここまで開き直ってる侵入者そんなにいたらどうなってることか。
「失礼でしょうけど質問。あの入口から入ったら侵入者だとしたらどこから入れば侵入者じゃなかったの?」
「威勢のいい小娘だ。種族は?」
「純人間。少し離れた国にあるギルドでギルドリーダーをしてるわ」
「ふむ・・・なら教えてやろう。この国に正しい入り口など存在せん」
その一言で理解する。正規の入り口は無し、それでいて山の中、つまり袋小路。となると_罠だ。国そのものが罠なんだ。
「・・・チッ、めんどい国だな」
「えっ、何!?どういう事!?」
「理解してないのルリアさんだけですよ・・・」
『国自体に正しい入口は存在しない』。つまりは『どこから入っても侵入者として囚われる』と言う事。この国がなぜそんなに国外を嫌っているかは知らないが、この国はきっと昔から周辺国との国交を断っているはずだ。そうでなけりゃ国に入っただけで囚われるわけがない。
「つまりはどこから入っても侵入者、正しい入口は存在せず、あったとしても俺達が通ってきたような空気穴程度。山の空洞を利用した引き籠り集団ってか」
「ミズキのその言い方には多少棘があるが・・・まあ当たりだろうな」
「その通りだ。俺が国外逃亡した理由がちょっとは分かったか?」
突如、檻の上から声がする。坂を転げ落ちる前に聞いていた声だ。
「よっと。まあ捕まるだろうなとは思ってたから時間をおいて拘束されないように侵入したんだが・・・予想通りだな」
「ジルオさん!休憩時に『あの国は基本的にどこ通っても行ける』とか言ってたの忘れませんからね俺!?というかどこ通っても行けるならなんで頂上目指してたんですか!!!」
「どこ通っても行けるがその後が自由とは言ってない。頂上付近の洞穴が一番警備が薄くてそこから入ろうと思ったんだよ、実際俺はそこから入って来たしな」
「さすがにそれは早く言ってくださいよー!?」
叫んでみたが表情からして聞く気は無さそうだ。
「さてジジイ、まだ生きてやがったか。いい加減死んでくれてるかなと希望を持ちながら来たんだが」
「そう簡単に死んでたまるもんかい。逃げ出した軟弱者に言われる筋合いなど無い」
両者どちらも譲らぬ罵り合い。何の因縁があるかは知らないがめんどくさそうなのは確実だ。なるべく関わりたくない。
「ところで親父は死んだか?死んでいてくれてるとありがたいんだが・・・いや、それだったらこの山吹き飛ぶのが俺としては一番ハッピーだな」
「ほれ、愛しの息子に呼ばれておるぞ、ハーク」
「本当に愛しいんだったら国外まで探しに行ってるが?」
老人の後ろに控えていた高身長の男性が出てくる。・・・いや、檻の中からの感想を言わせて頂こう。遠近感が狂う。
ジルオさんが大きいのは親が大きいからということが分かった。うん、だとしても親がそれ以上に大きいとかどういう事だ。絶対に純ドワーフじゃない身長をしている。
「久しぶりクソ親父、持病の肺ガンは進行したか?」
「それが意外に進行が遅くてな。今でもこうやって元気だ。お生憎様」
祖父と孫の罵り合いは父と息子でも健在。むしろ関係性が近いからか過激化している。
「ジルオさんの白髪って年とかじゃなくて遺伝なんだ・・・」
「ドワーフは茶髪と白髪が多いらしいよ?まあそれも地域によって違うだろうけど」
「さてはルリアさんってどうでもいい豆知識を結構知ってるタイプだったりします?」
そんな話は置いておいて檻の外の会話に傾注。何かあったら即勃発な雰囲気で雑談してられるほど神経は太くない。
「・・・さて、今更帰ってきて何のつもりだ。客まで連れてきて」
「溶鉱炉を借りに。あっちのリーダーは交渉権が欲しいらしいが俺の目的はそれだ」
「なるほど、理由は分かった。・・・ただ、逃亡者のお前にここの溶鉱炉を貸すとでも?」
「そうだろうと思った。こっちにも策はある」
ニヤリと笑うなり、ジルオはこちらを向いて叫ぶ。
「ルリアー!?戦闘準備―ッ!!!」
「オッケー了解!この檻の材質はー!?」
「鉄80炭素20の合金だ!強度はあるがそれほどでもない!」
鉄と炭素、つまりは鋼だ。・・・いや、金属なのに「それほど強度は無い」とは。
何言ってんだ、と考える前にルリアは目の前にある檻の棒を両手でつかみ―。
「ふんぬぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいいいいいッがァッ!!!」
歯を食いしばりながら両手を広げることで檻をこじ開けてしまった。
「「「「なあっ!?!?!?」」」」
これには俺とミズキのみならずドワーフの面々にも衝撃を与えた模様。
「ふいーっ!さすがにただの金属に負けてるようじゃギルドリーダーは務まらないよね!」
「る、ルリアさん・・・人間性・・・人間性を保ってください・・・」
「あそこまでパワフルな女性ってどうなんだろうな・・・とりま外出ようぜ」
檻のこじ開けた空間から、肩慣らしをしながら出て行くルリア。
「さて、少々手荒になっちゃうかもだけど武器製造技術か武器の交渉権が欲しいの。くださる?」
赤点は無かったです・・・結構ギリギリだけど。
毎日を外気温とカフェイン中毒に追われながら生きてます。皆様も防寒とインフル対策、それとエナジードリンクの飲み過ぎにはご注意ください。飲み過ぎると意識が飛びますよ。




