#19 火山
「じゃあ私帰りますんで、それじゃ!」
「ありがとね!帰りはその都度連絡するから!」
日が暮れた国外でルイラが敬礼のポーズをさらっとした後に帰る。
「さて、じゃあ行こうか!ショートカットできたし!」
「・・・?ところで今回って国の方から外出許可取りました?」
「いや?だってアレ申請してから三日くらいかかるんだもん」
「それ普通に法に触れますけど!?」
「今更だよ、自衛ギルドなんて基本無法者なんだから」
確かに、ギルドは団体内では守ってくれるが国からは守ってくれる保証はない。
つまるところ、ギルドってのは現実で言う暴力団と同じなのだ。
自分たちが正しいと思ったことはやる。但しそれが世間から正しいと認識してもらえるかは違う。そう云う物なのだろう。
「なんてとこに所属してんだ俺・・・」
さて、少し遅れてしまったが現在の状況でも。
今回の遠征の目的地『バルバロス』は火山の国。カガミマチの正門からさらに山脈側へ歩いて4時間ほど。・・・つまり、カガミマチに行く時にあった、遠近感が狂いそうなほどデカかった山。どうやらあの付近にあるらしい。
そこでルイラのワープ。ルイラは『目視圏内』または『行った事のある場所』のワープが可能(無論、距離が遠くなればなるほど魔力消費は大きい)。
なので「ルイラはカガミマチ行ったんだからカガミマチの正面までワープで送ってもらえばいいじゃん!関所通過できるし一石二鳥!」というのがルリアの考え。
・・・こちらとしては「関所に引っ掛かった場合はどうしていたのか」が気になるが、気にするだけ野暮だろう。どうせ筋肉的解決だ。
「ところでなんでその国と交易を?」
「我が国は武器製造の術がないからね。まあつまるところ技術が欲しいの」
「で、ドワーフの国に鍛冶系統の技術ですか」
「あそこ、どいつもこいつも頑固だからそんな流してくれるとは思えねえんだけどな・・・」
「アルゴノーツの武器製造の技術もジルオが勝手に金属集めて作ったやつだからね!」
「勘で作ったからいつ壊れてもおかしくないんだが・・・まあ長い事動いてるな」
なぜ勘でそんなものが作れるのか、という点についてはスルー。
「とにかくあの山に向かって歩く!以上!」
「これ目視圏内だからルイラに頼めたんじゃ・・・」
「ま、まあ何度もこき使うのは良くないし!」
そして言葉通りに歩いて4時間。
「・・・デカい山だな・・・」
「確かにデカい・・・山というか山脈?」
首を直角に傾けなければならないほどに傾斜がある。
しかし、付近には街らしきものは何一つとして見えない。
「・・・国って一体どこに・・・」
「・・・・・・ルリア、こいつらに言ってないのか?」
「何か言う事ってあったっけ?」
酷い顰め顔をして顔を抑えた後にジルオが説明する。
「あの国は地下にあるんだ。まあ地下と言うか山の中なんだが」
「山の中!?山くり抜いて国作ってるんですか!?」
「正確には大昔のマグマだまりが空洞化した物らしいが・・・まあ意味はほとんど同じだな」
「カガミマチの昔話にもそんなのがあったが、まさか隣にあるとは・・・」
「ここの入り口がややこしいらしくて、本当は別の国を予定してたんだけど・・・」
「元国民として国の出入り口はさすがに知ってるからな」
ジルオが溜め息をつきながら指差すのは山の起伏部にある洞窟。
「・・・・・・また結構遠いですけど・・・ほんとに日帰りできるんですか?」
「できるよ!だってあと30時間くらいはあるからね!」
・・・忘れてた、72時間=1日だった。
(思ってたより全然ハードだ・・・)
「フゥー!おいヒサメ、バテるのが早すぎるぜ!」
「ミズキなんでそんな元気なんだよ・・・てか寝てんのか?」
「非常時のためにいつでも起きれるようにしてあるからな!」
まあ、確かに刀は振ったら人が死ぬ武器。油断してたら死ぬから非常時にはすぐに起きるというのが大切なのだろう。
・・・いや、知りたいのは寝ているかどうかなのだが。
「だとしても・・・疲れてるんだよ・・・」
言わせて頂こう、生粋の元文化部に山登りはキツイ。
既にここまで歩いてきていて、さらに傾斜がキツくなるとは。
それに加えて背中のバッグに鉱物の塊を詰め込んでいる。
荷物を持って山登りなんてことをすることになるとは。軍隊の訓練らしさすらある。
でも今更後戻りできないよな、と登りつつ付近の岩場に腰を掛けて休憩。
「足が・・・しんどい・・・亜人種補正があってもこれか・・・」
今は純人間じゃなくなっているが、元は学校外周5回(約4km)で25分過ぎるような男だ。元から体力があると言えるわけない。
「ほらほら、早くしないと頂上に行けないよ?」
「いや火山なんだから頂上行っても意味ないでしょ・・・ん?」
呆れて溜め息を吐きながら首を後ろに。すると謎の洞窟が。
「・・・?何だこの洞窟・・・ジルオさんこれ入口ですか?」
「ふむ・・・あの国は基本的にどこ通っても行けるからこれもそうかもな」
「よっしゃ行ってくるーっ!!!」
「私も私もーっ!!!」
全力で走るミズキとルリア。今更止めても無駄そうだ。
「・・・なんであの人達元気なんだ・・・」
「ルリアはほぼ寝なくても無事な身体になってるからな・・・」
「いやどうやったら純人間がそんな体になるんですか!?過労死しますよ!?」
「亜人は昼型と夜型がいるから、それの相手してたらああなった。10日に1日くらい寝るけど一日中動かねえぞ」
いやそりゃそうじゃ、と言いつつ気づく。10日に1日ってことはほぼ一ヶ月寝ないということに。
「・・・人として生活サイクルブッ壊れてますけど・・・」
「本人はそれでも楽しいらしい。本人がやりたい事なんだからやらせとけ」
「ジルオさん何かと自由ですよね・・・もしかして」
「止めるのが面倒なだけだが?」
「ですよね・・・」
「「わーーーーーーーーっっっっっ!!!!!?????」」
洞窟の奥から先ほどまで聞いていた声が悲鳴となって聞こえる。
さすが洞窟、反響して何回も音が連続して聞こえるようだ。
「ちょっと今の結構マジな悲鳴でしたけど!?」
「さすがに行った方が良いか・・・おし行って来い」
「俺なんすね!?じゃあ行ってきます!・・・特に何も無かったら連れて戻ってくるんで!」
走りながら言っている時点でわかる。悲鳴がしてるのに何も無い訳がない。
こんなホラーゲームでいかにもありそうな展開のことにはなるべく関わりたくないのだが。
(多分行った方が良いんだろうn―)
頭の中で解決している最中―――、自身の身体が落ちているのを感じる。
沈んでいる?いや、液体のような感覚は無い。
浮いている?いや、宙に浮く技術など無い。
ということは―――重力。
「ぉおっあああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?」
傾斜が強い坂を重力の補正が強くなった体が転がる。そして止める術もなく全身を一定間隔で地面に打ち付けながら転がり落ちる。
(ヤバッ、これ、前が、見えなくて―――)
「なるほどなるほど、そしてここに落ちてきたと」
冷静にうなずきながら理解をするルリア。
「まあ確かに同じ道を辿ったらこうなるわけだ」
打ち付けたであろう腰をさすりながらミズキも話を聞く。
「・・・あの、二人とも言っていいかわからんけどさ」
スッと一瞬目を閉じて現状理解。そしてもう一度目を開けてやっぱり間違ってなかったと認識。
「なんで檻に入れられておいてそんな呑気なの?」
どう考えても四方八方を塞ぐのは金属の棒。その周りには老け顔のような人型に近い生物によってこの檻は囲まれている。
「「何事も元気が一番!!」」
ふと、ずっと昔から気になっていたことがある。
マンガやアニメなどで「絶望的な状況の時に『大丈夫だよ!』って明るく声をかけるキャラ」の明るさの根拠は一体どこなのだろうか。
この二人を見てるとその疑問が思い浮かぶ。そしておそらくだが、その疑問は一章自分自身では解決しないような気がした。
(うっわ現実見ないタイプの空回り気質二人じゃん、つら・・・ジルオさん助けて・・・)
【いまさら解説】
ジルオ(ギルドネーム『ドワーフ・ジルオ』)
属性:火 種族:亜人
筋力値 A
体力値 B
頭脳値 B
魔力値 B
度胸値 A
運命力 C
602歳(人間換算年齢不明)のドワーフ族のはぐれ者。アルゴノーツ内ではメンバー番号2番。最古参(アルゴノーツ創設期)の一人。
昔に国を追い出されて国外をふらつき、何とか飢えに耐えながらアズドラークに到達、やさぐれていたルリアに出会う。
ドワーフとは元来背丈が低いものとしての印象があるが彼は普通に高身長。そこそこ年を取っているはずだがヒサメの同じくらいには背が高い。「基本的にはドワーフはどいつもこいつも背が低い」と彼が言うらしいのでドワーフが背が低いことは確定らしい。
ドワーフ一族の特徴である高い鍛冶技術ははぐれ者となっても健在。一族の中でも特に優れた者は聖遺物を制作したりと、神に近しい部分もあったりする。
自分で作った武器はまず自分で使ってみてから考える、というポリシーが一族であったらしく、元々は魔力は無いに等しかったが、いろいろ試している間に勝手に身についたとの事。攻城戦の時に使用した『隕石叩き《メテオラ・ブレイク》』は「叩いた衝撃を強くする」『打撃』に「隕石の素材を利用して金属の加工幅を拡張する」『隕石』を混ぜ込んだもの。ハンマーを大きくするのには素材も重要だが、術者の魔力も当然必要となってくる。ルリアがこれを使えないのはルリアに魔力がほとんどないため。
ちなみに、ルリアが壊したギルド入り口のドアを修理した回数は26回。




