#18 次の任務
「・・・なんか・・・頭がぼーっとしてる・・・」
疲れだろうか。立ちくらみは結構頻繁に起きる方だが寝ている状態で視界がぼやけるなんて状態異常はなったことが無い。
ともなれば亜人種になったからこその状態異常だろうか。そうだとしたら原因が分からない以上対策出来ない。が、そんな状態異常になった覚えも無い。
とにかく時間がどうなっているのかを確認するために重たい体を足で反動をつけて起こす。
「おや、起きたか。先ほどルイラが来ておったぞ」
「・・・まだいたのか・・・ってか何時?」
「まだいたのかとは失礼な・・・寝てから3時間程度じゃな」
周期を言っても昼夜があまり関係ないのだから言っても無駄じゃろう、と付け加えられる。
「3時間か・・・それで、ルイラが来たってのは?」
「ああ、なんか任務があると言っておったぞ。詳しくは・・・」
「それ結構重要な奴だったんじゃないの!?俺呑気に寝てて良かったの!?」
「落ち着け、そんなに緊急ならあの娘の性格的に叩き起こしとるじゃろ」
でも、と言おうとして口が止まる。・・・確かにルイラなら「任務ですよーっ!!!」とか言いながら腹に肘打ちを入れてきそうだ。
「でも急ぎ用だったら申し訳ないな・・・話聞いてくるか」
スマホをベッドから拾い上げて慣れた手つきでポケットに突っ込み、ドアを開けて飛び出す。
「・・・あ、部屋出るんだったら鍵締めてロビー外通路のロッカー206に入れといてくれ」
「ええのか?妾だったら何するかわからんぞ~?」
ああ、これは何かするとか脅しておきながらこっちの反応を楽しんでるパターンだな、と脳内で勝手に解釈。多分合ってると信じよう。
「盗られるようなものは置いてないし、何かあったらルイラが壁抜けして入ってくるからな。キセルは使うんだったら窓を開けて使って、帰る時には閉めてくれ。それじゃ」
「つまらんのう・・・ほいほい」
何かそっけなく対処してしまった気がするがそれが自然。というか異性との話し方なんてロクに経験も無いんだ、しくじってたら許してくれ。少なくとも俺は分からない。
(それよりもなんで俺に任務・・・?わざわざ俺が指名されてるのか?それとも消去法?)
階段を駆け下りてロビーのドアを開けた先にいたのは。
「お、いたいた」
「あ、ジルオさん。・・・もしかして俺が呼ばれた任務ってまさかジルオさんが?」
「その通りだ。まあその内容なんだが・・・これだな」
そう言いながらジルオがロビーのテーブルに置いたのは黒い塊。
「・・・これもしかして俺が依頼してた?」
「『星の欠片』とやらだな。いろいろ試してみて材質は判明した」
「本当ですか!?」
「どうやらコイツの主成分は『水銀』らしい。それに金属が混じってる」
「ってことは・・・合金なんですか?」
「正式名称は『アマルガム』だな。で、実は問題点があってだな・・・」
急にジルオの顔が暗くなる。壁にぶつかった時のような苦難の顔だ。
「アマルガムなことは分かったが、『何の』アマルガムかが分からない」
「そんな沢山あるんですかそれ」
「基本的に水銀と金属が混合したら全部アマルガムだ。水銀は他金属との合金が作りやすい性質があって、まあアマルガム自体は珍しくないんだが・・・こいつが珍しい」
ジルオは中身が詰まった黒い塊に手を置いて溜息を吐きながら言葉を続ける。
「アマルガムってのは基本的に『柔らかい』。詳しくは知らないが名前の語源もそんな感じの意味らしく、常温で液体なアマルガムも多くある」
「・・・つまり要約すると・・・」
「『常温なのに固体で、なおかつこんなに硬いアマルガムは見た事ない』ってのが鑑定結果だ」
「なるほど・・・・・・えっ、じゃあこれどうなるんですか?」
「そこで私の出番だね!」
気配も無く背後にいつの間にか立っていたルリア。ポーズまで決めている。
「私も見せてもらったけどさすがにその金属はウチの工房の技術力じゃ無理ってことが分かってね」
未知の材料って事とあまり量が無いってことであまり実験できてないのもあるけどね、とルリアは付け加える。
「と、いう訳でこれ!連絡は届いてた?」
ルリアが堂々と持ってきた任務の詳細用紙。・・・まあ読めないのだが。
「まあ読めないだろうから予め言うと『国外調査』。君はこれで2回目だね!」
「えっ俺行くの確定なんですか!?・・・あれっ、俺行く目的は?」
「今回の任務で行く国の優れた鍛冶屋さんにこの金属を製錬してもらおう!って感じかな」
「・・・そんな鍛冶屋さん心当たりあるんですか?というかどんな国なんですか?」
下を向いていたジルオがボソっと呟く。
「・・・・・・俺が住んでた国だ」
「えっ」
「今回の任務で行く国は『バルバロス』、ジルオの生まれ故郷でドワーフの国だよ!」
ああなるほど、ドワーフの国。そりゃあ優れた鍛冶屋がいそうだ。
・・・そういえばドワーフって武器精練系の仕事が多いイメージがあるのだがどうしてだろうか。まあ、考えた所でそこまで意味も無いのだが。
「そんなわけで国外調査任務は今から30分後出発だよ!」
「さすがに速すぎません!?」
「大丈夫大丈夫!カガミマチの少し向こうでそんな距離ないし日帰りだし!行くメンバーは私とジルオとヒサメ君と・・・」
「ルリアさんも行くんですか!?」
「当たり前じゃない!?各国との貿易ルート開通の為にも直接面会しておいた方が良いじゃない?」
自信満々で言うルリアをよそにジルオが小声で教えてくれる。
(許してやれ、アイツ生まれて以来初めての国外任務で結構テンション高いんだ)
(ああなるほど・・・ギルドリーダーが離れてていいんですかね?)
(一応代理が何人かいるから大丈夫・・・だと思う)
(ジルオさんも分からないんですね・・・)
(ここの連中どいつもこいつも血の気が多いからな・・・)
「で、あと一人なんだけど・・・」
「この俺だッ!!!!!」
ロビーのドアを勢いよく開けて入って来て仁王立ちで堂々としているミズキが。
「落ち着けミズキ、刀を貰ったのは良いから落ち着け。ドアの蝶番壊れるぞ」
「おうヒサメ、今度は負けねェからな!ジルオさんに特注品で作ってもらったぜ!」
「わざわざ作ってもらったのか・・・」
「出世払いでな!これが俺の新しい刀『神鳴』!どうだ、格好いいだろ!」
自慢げにミズキが取り出した刀は透き通るように磨かれており、刀身に落雷を模したような線が入っていて、柄の部分には『雷刀』と刻まれている。
「ほう、ほほう、これは、これはまた・・・中々いいセンスしてんねぇ」
自分の戦闘スタイル的に刀は合わないし、恐らく使えないだろうけどゲームなどではよく使う。そういう面では格好良さもまた重要。
「だろ!?しかも魔力を通せるようになってるらしくてさ!」
「それ作るの結構面倒だったんだぞ・・・折ったら自費負担な」
「りょ、了解です!」
(あっコイツ今のセリフでちょっと戸惑ったな)
・・・にしても自分自身の刀か。それは一つのロマンで、それでいて自身の相棒とも言える物。そんなものがいつかできればいいのだが_。
「・・・どうした?お前もアマルガムで刀を作ってほしいのか?」
「いえ、俺は刀はちょっと・・・ただ作って貰いたいものはありまして。まあそれはその時に言いますよ」
「なるほど、そりゃ楽しみだ。期待に添えられるものを作れるよう望むさ」
「さて、準備はオッケー?そろそろ行くよー?」
「まだ30分経ってませんけど!?」
「良いからほら!塊よーし、メンバーよーし、金よーし!さあ行くよー!」
【いまさら解説】
レイラ(ギルドネーム『ルーラー・レイラ』)
属性:風 種族:純人間
筋力値 C
体力値 B
頭脳値 A-
魔力値 B
度胸値 B+
運命力 C
17歳の少女。アルゴノーツ内ではメンバー番号42番。
他国からの貿易車に妹のルイラと共に忍び込んで潜入。ルイラと同じく国籍が無い。
国籍が無いので魔導書はやはり不保持。自身の属性である風魔法「エアロ」しか使えない。
妹と違うのは属性が四大属性である事。発展性が高く、他属性と絡めて使うことも出来るため有用性が高い(ただし魔導書が無いので他の魔法が唱えられないので実質無意味)。
「魔力値」は低いが「魔法の才能」は十分にある。ギルド内でも風魔法のみで大多数のメンバーを圧倒できる。ただし魔力量は少ないので連戦は不向き。
ギルド内では地下の食堂兼カウンターを担当している。ルイラと同じく非戦闘要員扱いだが戦闘要員並みの実力あり。酒の勢いで喧嘩などを始めても特に止めはしないが、「建物などに被害が出る」と判断した場合は止めに入る。物理的に。
レイラは基本的に落ち着いて物事を聞いているタイプ。なのでリーダーシップは無い。妹と同じく『自身の行動が他人に影響を与えること』を嫌う傾向にある。
ちなみに、レイラは酒は嫌いだがアルコール耐性が結構ある。酔った時には「本気を出せばルリアさんだろうが倒せる」などと言い張ったりするとか。真偽は不明。




