#17 休憩
「・・・とにかく、姫様はだらしない生活をやめてですね・・・」
「折角あの時間に囚われる生活から抜け出したというのに・・・」
「そういう所ですよ!というか今までも十分怠慢生活してたでしょう!?」
「自らを売り物にしていた頃とは違うんじゃよ」
「頃って言っても昨日の今日ですからね!?」
「でもほんとに生活リズムは整えてくださいね?任務に支障きたしますよ?」
「そうは言ってものう空間少女、自由な生活を味わいたくて」
「どういう動機でウチ入ってるんですか・・・」
「・・・あー、1つお尋ねしても?」
「ふむ?」
「あ?」
「はい?」
「なんでお前らは俺のベッドの上にいるんだ・・・?」
「「「何となく」」」
うん、小説とかである「なんでそこにいるのか分からない」みたいな状況には読んでて首を傾げていたが、まさか自分自身が体験することになるとは思わなかった。
・・・いや、部屋が近いわけでもないのに何でいるんだよ。
「修学旅行かッ!!!夜になってとりあえず他の部屋に行って話して帰るめんどくさいタイプの生徒みたいなことしてんじゃねえ!」
言っても通じないことは分かっていながらもつい言ってしまう。
現在は先ほどの連番勝負から約1時間ほど、場所はなぜか俺の部屋。
「そもそもカリンは自分の部屋支給されてんだろ!ミズキもそっち行け!」
「まあごもっともな意見じゃな」
「いや、なんで姫様笑ってんですか・・・」
「で、ルイラはなんでいんの?」
「洗濯物の回収ついでに寄ってみました」
俺の部屋パーキングエリアだっけ、と頭の片隅で考える。そしてどうにもならないことを認識して思考を放棄。
「で、ミズキはどうした」
「姫様の護衛だからそばにいるのは当たり前だろ?」
うん、なるほど。確かにそれもそうだ。でもその姫様が勝手に他人の部屋に侵入してるんだったら自分も行くんじゃなくて連れ戻すべきじゃないの?
そんなことを考えたけど行っても無駄だろうから「はぁ」でスルー。
「・・・あれ?そういえばミズキって・・・結局どうなったの?」
「一応ここの所属扱いにして貰ったがメンバー扱いは嫌らしくてな。私の所有物扱いにしておいた」
「俺はこんなとこ所属しないからな!いつか絶対に姫様を連れ戻してお前を倒して帰るからな!」
「いや、それは別にいいんだけど・・・お前ルリアさんに刀折られたじゃん」
指を指して挑発をしてきたミズキはその一言で意気消沈してしまった。
うなだれているミズキを横目にカリンが小声で事情を説明してくれる。
(言うてやるなヒサメ、あの刀には思い入れがあったらしくてその分結構落ち込んでるのじゃ)
(えぇ・・・何それ・・・というかアレ折ったのルリアさんでしょ?あの人ならどうにかしてくれるんじゃ・・・)
(どうやら無一文で出てきたらしくてな・・・ここなら修理してくれる技術を持っている者はいるかもしれんがそれをする金が無いのじゃ)
(いや、だったらなおさら働かせればいいと思いますけど!?)
「・・・まあそういう訳じゃ、コツコツ金を溜めて刀を修繕すればよい」
「・・・俺、刀無かったら戦闘任務何もできないんですけど・・・」
確かに使い慣れてない武器を使ってた俺に負けたくらいだ。刀が無かったら本当に普通の青年なのかもしれない。
「じゃからあれほど体術と武術はやっておけと・・・」
「だって型とかめんどくさいじゃないですか・・・」
いや違うなこれ、ただ面倒くさがりなだけだな。むしろ剣術の方がそういうの厳しいのになぜ出来た。・・・まあコイツの性格からして「格好良さそうだから」みたいな理由なんだろうなあ、と勝手に想像してしまう。実際に合ってそうだから困る。
「刀の修繕ってどれくらいかかりそうなんだ・・・?」
「ざっと見積もっても20万くらいはするじゃろうな」
「20万・・・20万!?嘘だろ!?」
大型任務4回分くらいの金額。しかも大型任務は不定期で回数制限がある。何回も行けるわけでは無い。
「そりゃあ大変そうだな・・・大型任務って今やってたっけ・・・」
ギルドのロビーから見て右側にある宿舎には部屋ごとにポストがあり、毎週ごとに任務一覧が記された紙(緊急任務とかもその都度)が投函されるらしい。
「今日の分見てなかったからな・・・・・・えーっと・・・無いな」
「・・・・・・俺もう何を頼りに生きればいいんだ・・・」
あそこまで落ち込んでいると流石に同情もしたくなる。俺だとスマホがバキバキに割れるくらいの・・・いや、元の世界の話だ。俺の今のこのスマホがバキバキになったら一大事。
確かスマホとこの体は同期しているとかなんとか。つまり俺が怪我を負うとスマホに傷が入るということだろう。つまりは『スマホに傷が入っても俺が完治すれば治る』わけだが、『スマホが傷を負った場合は俺にもダメージが入る』と言うことでもある。それはそれで大変だが今は置いておこう。
「金額的に街の中での困り事解決だろうな・・・・・・なんだこれ」
任務一覧の紙の下に一枚別の紙が入っている。左手で取って裏から見たため新しいものだろう。
「えーっと・・・・・・そうだ、読めないんだった」
この紙は金額の詳細が書いてない。つまりは緊急任務だ。書いてないということは『活躍によって変わる』システムだろう。
「なあカリン、ちょっとこれ読んで・・・読める?」
「ふむ?・・・『国外調査の人員募集』?これがどうかしたか?」
「国外調査?じゃあ昨日のやつか?でも新しいってことは・・・依頼主は?」
「・・・・・・書いてないぞ?」
「じゃあギルドが元か・・・ミズキこれ行ってきたら?日帰りだぞ?」
「俺に・・・俺に武器をくれ・・・」
「ロビーの左側のドアの先に工房があるからジルオさんに聞け。なんか貸してくれるだろ」
「そうなのか!?行ってくる!!!」
すぐさま顔を上げてベッドから飛び降り、マップを見ながら部屋を飛び出す。
「・・・もうちょい静かに行ってくれないかなぁ」
「静かな雰囲気は苦手な奴じゃからの。言うだけ無駄じゃ」
「そして全然関係ないけどここの部屋換気しにくいから部屋の中でキセルはやめてくれ」
「妾の生活必需品に何を言うか」
「生活必需品なのはいいからここで吸うなっての」
しょうがないのう、と少しふてくされたようにカリンはつぶやく。
「・・・ところで誰もいなくなったけど何を?」
「自分で言ってて分かっておるじゃろうに。耳が赤くなっとるぞ」
「えっ、あっ」
「ほれほれ、まずは隣に座ってはどうじゃ?」
ニヤリとした顔でキセルを持つその姿はからかっているようで、それでいて妖艶で。
経験が無さ過ぎて何をすればいいかが分からない。とりあえず招かれた通りに隣に座る。
「さぁてお客様、本日はどのようなことをお望みで?」
右側から左肩を掴まれ、顔を近づけながら聞いてくる。さすが枕営業で生活してきただけある、的確に男としての欲求を刺激してくる!
「本来ならばそれなりの金額を要求するが・・・まあ今回はいい。さて、お主はどんなことをして欲しいのじゃ?」
耳元で囁かれる悪魔の声にも近い何か。人を駄目にしてしまう物は駄目になったら既にそれが駄目と気づけない訳で。まあなんかそれっぽいことが今この身に色々。
(ダメだ全然頭が回らない!なんか、なんかこう、どうにか―――!)
「・・・ひ、膝枕・・・とかで」
「・・・・・・お主も中々素直じゃないのう」
「っし、しょうがないだろ!そう言うの全然んっ!?」
恥ずかしさに赤くなる顔を気にしながら反論しようとして首をそっと掴まれ、どういう技かは知らないが背中から引き倒される。
「ほれ、そう逃げださんな。たかだか膝でそう慌てる事でもなかろう」
「・・・異性に全然慣れてなくてすいませんね」
下から見上げるとこれまた大きな双璧が立ち塞がっている。
「おや、上もご所望かの?金さえ積めば断りはせんぞ?」
「給料吹き飛びそうなくらい高そうなのでいいです・・・」
「むう、面白くない。もっと貢いでくれても良いのだぞ?」
「・・・というかこの生活ってあっちと変わってないんじゃ・・・」
「十分に変わっておる。妾は『売り物』から『人』になれた。それだけでも十分じゃ」
宙を見つめながら語るその言葉に他意は無いように思え、だからこそ重く。
「だから・・・・・・おや、寝てしもうたか。まああの金属の塊を振り回していたらそうもなるじゃろうな」
「・・・・・・何があったんですか?」
いつの間にかこっそり開いていたドアからルイラが眺めていた。
「さて、何があったと思う?本人に聞くかご想像にお任せしようかの」
「はわ、はわわわわ・・・!ヒっくんそんな大胆だったなんて・・・!」
いやむしろ逆なんじゃがな、とカリンは言おうと思ったが面白そうなのでやめることにした。誤解を生むにも解くにも時間なんて沢山あるのだ。
「・・・ところで空間少女、お主はなぜここに来たのじゃ?」
「先ほどヒッくんに任務があるってルリアさんが言ってたんで伝えに来たんですけど・・・起こさないほうが良さそうですね」
「急ぎでないのならそれが良かろう。睡眠を阻害するのは人としてもよろしくない」
緊急で指名が来たこの任務は、寝ぼけた頭を叩き起こすには十分すぎる知らせだった。
どうにか首の皮一枚で生きてます。
そういえばキーボードのテンキーが壊れました。テンキーって個人的にはあまり使わないのですがなんで壊れたんでしょうね。やはりキーボードにモン○ナこぼしたのが駄目だった説。




