#15 喧嘩
金属と魔力の塊がぶつかる。刀が薙ぎ払うような形で振り、それを魔力刀(それっぽく名付けた)が右わきに構えて弾き、弾かれた衝撃で体制が崩れそうになる個所を徹底的に攻める。
それをお互いに続ける。どんな武道であっても、攻撃のモーションは攻撃のモーションなのだ。攻撃しながら防御するということはかなりの難易度。攻守一体なんて不可能なものもある。
つまり、攻撃している時が一番攻撃されやすいということ。自分が危険になっている時、それは相手を危険にさせることが出来るチャンスなのだ。
攻撃をして、その反撃を防ぎ、その反撃に対して反撃する。目の前で行われている試合はまさにそういうもの。
刀と刀が弾き合い、最終的に相手に弾かれなくなったら勝ち。それが剣道。
(まあ、こっちの世界で剣道は無いだろうけど。あの侍っぽい人、刀の振り方がバラバラだし)
だがここまでKOが決まらないのは、あの侍っぽい人の足捌きが理由だろう。
刀を振るというよりは「刀が来る場所に体を動かして刀を当ててる」と言う感じ。
ロビーで言っていた・・・『神椥流』とやら。その流派は足捌きを重視するとこなのだろう。
刀の動き方はまちまちだが体の動かし方にキレがある。そのせいで攻撃を綺麗に躱していて、なかなか決着がつかない。
「ヒッくんはどっちが勝つと思いますか?」
カウンター席の先ほどまでカリンが座っていた席にルイラが座って聞いてきた。
「ん、俺?俺はー・・・・・・カリンさんが勝つと思うな」
「・・・昨日負けたの根に持ってるんですか?」
「いやそうじゃなくてだな・・・・・・いや、そうとも言えるか」
「そうとも言えるんですか!?」
「だってよく考えてみろ。『剣だけで勝つ必要はない』んだぜ?」
「「せいッ!!」」
上からと下からの刀の打ち合い。お互いに弾き、刀の方が少し先に相手に向かう。
それを真正面から受け止め、右側に剣先を勢いよくずらす。
「まさかここまでとは・・・でも、この勝負は貰いますよ!」
ずらされた剣先を合わせるために右斜め前に八艘跳びして体を剣に寄せることによって補正し、次の攻撃の隙が出来る前に剣先を相手に突きつけて前に踏み込む。
「『真剣勝負』はな。じゃが『この勝負』は渡す気になれそうもなさそうじゃ」
「へぶっ・・・!?」
次の攻撃の隙が出来る前に剣先を相手に突きつけて前に踏み―――込めなかった。
空中に浮いた人型らしき紙の束が突如、顔の前に飛び出してきたのだ。
「くっ、次は!」
「『次があるから油断する』。ずっと教えてきたじゃろうに」
「ほごっ!?」
体勢を直すためにバックステップで後ろに数歩下がる。
_そして下がった瞬間、顔面に何かがぶつかった。いや、何かを叩きつけられた。
「『衝』」
どこからか聞こえた詠唱は、衝撃でうまく回らない頭には理解できなかった。
「剣ばっかりやっとる奴に敵うわけなかろう。勝負は手段で勝敗が決まるのじゃ」
「挑戦者側、場外負け!第一回戦ギルド側勝利~~~!!!」
ルリアの元気で嬉しそうな声。その後の歓声が空間で反響する。
まあ満足と言った感じの笑みを浮かべてカリンはカウンター席へ帰ってくる。
・・・まあ、椅子はルイラに座られてしまったのだが。
「まったく、刀相手は疲れる・・・こりゃ寝て起きたら絶対筋肉痛じゃな」
「刀相手に簪で勝負って・・・しかも勝ってるし。てか最後の相手吹き飛ばしたやつってどうやったんだ?」
「む?これじゃろ?」
胸元から取り出したのは長方形の紙に赤い字で何かを書き込まれた紙。まあ要するに御札。
「これは便利でなー。魔力を込めて何かに貼りつけるだけですぐに効果が発動するのじゃ」
「まあ御札なら・・・・・・『便利』?オリジナルじゃないのか?」
「少し昔に国外から極秘裏に伝わって来たものでな。詳しいことはあまりわかっておらん。妾は一応呪文の書き込みが出来るが・・・どうやら紙のサイズが決まっておるらしくての。このサイズじゃないとうまく機能しないのじゃ」
色々教えて貰ったが、とりあえず「へー」と返しておこう。
魔術的要素はハッキリ言って何も分からない。文字が読めないんだから当然と言えば当然。
元の世界に魔法があったわけでもない。・・・いや、ライトノベルとかで読んでたりするから知識はそこそこあったりするが。
まあ要するに、解説されても活用できないので意味無しということ。
「第二戦の抽選するよーっ!」
ルリアが大きな回転式抽選機を回す。・・・抽選ってあれでやってたのか。
「ところでレイラって何番なんだ?」
「私は42番。ルイラが43番よ」
「へー・・・やっぱり当たったら戦わなきゃダメなのか?」
「ヒッくん、お姉ちゃんは強いんですよ!?」
「まあ私、魔導書持ってないから仕方ないのよねー・・・」
この国で魔導書が貰えるのはちゃんと国に認められた以下略。
つまりはここの空間で持ってる奴の方が珍しいということだろう。
「せいっ!65番!」
「・・・・・・・・・・・・」
おお神よ、俺が貴方にどんな無礼を働いたというのですか。どこかで無礼を働いたというのならばお許しください。だとしても主よ、さすがに酷過ぎではなかろうか。
「・・・息しておるか?」
「今すぐにでも引き取りたい・・・」
そんな確率ってあるのか、うん、なるほどそうか。大体ここにいるのは60人だから昨日と今日で二日連続で当たる確率は・・・・・・やめよう、数学Aは得意じゃない。
とにかくかなりの低確率のはずだ。そんな運あるなら元の世界で生きてるうちにガチャ運にでも使いたかったものだ。
「ほれほれ、ミズキも準備できたようだしの。まあ安心せい、あいつは剣以外は素人じゃ」
「・・・あの侍っぽい人、ミズキって言うのか?」
「妾が呼んでるとこ聞いてなかったか?神薙流の使い手『瑞己』、カガミマチだと結構有名な奴じゃよ」
「なるほどなるほど、俺はそんな剣の達人とクソ重いハンマーでガチンコ勝負しなきゃならない訳ね」
剣は素早く動く武器。刀だとなおさら。それを重量級武器で相手するというのは。
「もはや自殺行為でしかねぇな・・・ルリアさーん、このハンマーって何が入ってるんですかー?」
ジルオは『ルリアに聞いたらわかる』と言っていた。なら聞くべき。手持ちの状況が分からない状況で勝負とか賭けにも程がある。
「え?・・・あれ私が依頼してた『究極採掘者』じゃん!ちょっとジルオー!?」
呼ばれたジルオは既に腹を押さえながら笑い転げていた。というかむせてる。
「で、真面目にこれ何が出来るんですか?」
「うーんと、金属を引きつける魔法が入ってるんだけど・・・」
「金属を・・・引きつける・・・」
ちらりとフィールドに目をやる。おそらく刀は金属。引き寄せられる。
「・・・・・・いや、引き寄せれるからなんだよ」
せめて弾くとかだったらもうちょっと使えてただろうに。
「それは採掘するときに金属類を見つけやすくするハンマーだからね・・・」
なんか・・・ここまで申し訳ないって感じのルリアの表情を見るのは初めてだ。
「まあどうにかしますよ。・・・どうにかなるかは分からないけど」
ハンマーよし、魔方陣よし、火の玉よし、靴紐よし、心の準備は良くない。
でも心の準備なんて周りの歓声にかき消されてどうでもよくなる。
どうにかして落ち着いたような顔をしてフィールドに入る。
「・・・お前が65番か。名前は?」
「アサカ・ヒサメ。16歳の少年だぜ」
「なるほど、俺はタカハマ・ミズキ。姫様を国に連れ戻すため、悪いがお前には負けてもらう!」
「へいへい、やってごらんなさいっての!こちとら人生負けっぱなしの負けず嫌いだぜ!」
・・・うん、今のは結構よく言えた気がする。相手を煽る事と自分を蔑むことが同時に出来て満足。
「ほれ少年、負けたら許さんぞ?勝ったら一つくらいは言うこと聞いてやってもよいぞ」
「・・・はい?」
「ヒュー!ヒッくん何顔赤くしちゃってんですか!このスケベー!」
ルイラの煽りによって周りのガヤも揃って煽ってくる。
「うっせ!こちとら絶賛思春期なんだよ!」
なんか、なんかこう・・・本当にそういう事想像しちゃったから腹立つ。実際に女性経験が全くなくてそういう対応に慣れてないのも我ながら腹立つ!
そう思いながら前を向き直すと_。
「・・・お」
「お?」
「お前は姫様の何者なんだテメェえええええええええええええええああああ!!!俺ですらそんなことなかったのに昨日の今日でで何があったああああああ!!!!!」
一瞬の出来事で頭がフリーズ。そして冷静さを取り戻して状況を理解。なるほど、こいつはそういう奴なのか。一旦深呼吸。
「知るかああああああああ!!!こっちが聞きてェよ!そもそもお前んとこの姫様どうなってんだ!勝手に人様の住居群に入ってきて思いっきしくつろいでそれでいてこの有様だからな!?テメー御付なんだろ!?じゃあもうちょっと制御しろや!」
「ぬぁあああああああああああ!?!?!?」
「オッケー二人共ストップ!始めるよー!」
ルリアの制止でフィールド端に連れて行かれる。
「頭キタ、お前は徹底的にブチのめす!」
「やってみろや侍野郎、天下の竜種ナメんじゃねえぞ!」
煽りつつも冷静に相手は刀、真正面から食らえば死ぬ。冷静に、どうにかして勝つ方法を模索する。・・・『煽りつつ冷静に』なんて矛盾しかない単語を使う時が来るとは。
「レディー!・・・ファイッッッ!」
【いまさら解説】
ルイラ(ギルドネーム『ウォーカー・ルイラ』)
属性:特殊(空間) 種族:純人間
筋力値 C-
体力値 B
頭脳値 B
魔力値 A-
度胸値 B-
運命力 C
15歳の少女。アルゴノーツ内ではメンバー番号43番。
他国からの貿易車に姉のレイラと共に忍び込んで潜入。街でとあるピンチに遭遇するもルリアによって救助。国籍が無い理由はこの国の生まれではないため。
魔導書を所持していないが生まれながら空間魔法の使用が可能。むしろそれ以外は向いていないに等しい(一応魔法が書かれた紙があれば唱えることは出来るがコントロールが出来るとは言い難い)。
ギルド内では主に非戦闘要員として全般的な雑用を姉のルイラと共に担当している。
時折、窓の鍵を閉めるために魔法で部屋に入ってきたりもする。彼女の前ではいくら鍵を掛けようと無意味。
金髪でテンションが低いのがレイラ、銀髪でテンションが高いのがルイラ。本当にテンションが高い時は連続ワープで煽ってきたりもする。
基本的に他人の意見にすぐ流されるタイプなのでリーダーシップはあまり無い。『自身の行動が他人に影響を与えること』を嫌うので運命力は低い。
家事は大抵できるが料理だけは壊滅的。本人も「お姉ちゃんに任せっきりです」と認めている。
今の所アンチコメントが来てないから大丈夫・・・かな?
あと作品キーワードとあらすじを少し改良してみました。これで「最近の異世界小説は無双系ばっかでクソ!」って思っている方々に届けばいいなと思ってます。
・・・届いた所でこれを良いと思っていただけるかは別ですが。




