#14 客人
「なんか武器は手に入れたけど・・・これ・・・重い」
ハンマー部分はそんなに大きくない。それでも金属製だからか重量感ずっしり。
亜人種補正で筋力補正もあるだろうから、現世だったら間違いなく持ててないだろう。
「まあ使う機会が無いといいけど・・・そういえば魔術式が入ってるって」
魔術式の説明を受けてないが、要するに魔法だろう。振ったら魔法が発動するハンマー。
「物理攻撃付きのステッキと思えば・・・いや思えるか?」
用途が分からない剣よりかはマシ。振ったら攻撃できる、簡単かつ高威力が打撃武器の強みだ。
ハンマーを持ちながら工房を出てロビーに出る。_すると。
「・・・んあ?なんか揉めてる」
後ろ姿だがあのぼさっとした赤い髪、給仕服を切りこみ入れて動きやすくした服。どう考えてもルリアだ。揉めてるというか、ロビーの椅子で誰かと話してる。
(良く分かんないけど避けとこ・・・トラブル関わりたくないし・・・)
昔から学校などの学級問題はなるべく巻き込まれないように避けてきた。
その頃の癖と言うかなんというか、とにかく余計な事には首は突っ込みたくない。
「お主、何をこそこそしておるのじゃ」
工房側から宿舎側に渡る際、ロビーを見ていたのが悪かった。正面を見ていなかったことが大きな失態。
声がした正面にぎこちなく首を回すとカラフルな和服。歴史の教科書で見るような女性の貴族服だ。確か十二単とか・・・いや、十二単にしては厚みが無い。見た感じ三枚くらいな気がする。
透き通るように艶やかな銀色の髪、気分で揺れる耳と尻尾はいつ見ても視線を向けざるを得ない。
「・・・びっくりした・・・あ、えっと・・・カリンさんでしたっけ」
「名前はいい。・・・あれは何をしておる?」
「いや、俺もよく・・・そちらは心当たりは?」
「揉めてる反対側の奴が見慣れた服装と言うこと以外は何も」
「服装?・・・・・・・・あっ」
ルリアの陰でよく見えていなかった。確かに先日侵入した国でよく見た和服。
「どういう意図で来てるかは知らんが・・・亡命かの」
「亡命とかあるんですかあの国・・・?」
「時折。逃げようとしたものは技術を国外に持ち出される前に絞める」
平然とした顔で言うその言葉にはどこか重く、どこか冷たく。
(絞めるってそんな簡単に言えることだっけ・・・?)
それとは全く関係ないが、一番気になる疑問が浮かんできた。
「・・・あれ?ところでカリンさんどうやってあの国出てきたんですか?」
「いや、ルリアとやらに連れてこられて・・・」
「・・・もしかしてあっちの国でカリンさんが亡命扱いに・・・」
「・・・なっておるかもな」
「・・・じゃあの人は・・・」
「・・・妾、何か嫌な予感がしてきたのだが部屋に戻ってよいか?」
「・・・なんか俺もそんな気がしてきました」
そうと決まればさっさと帰ろう、意見が一致してロビーの隅を移動する際。
「あーーーーーっ!!!いた!いたっ!!!」
「あっバレた!クソッこのタイミングで!」
急に叫ぶ和服の男性とそれに舌打ちするルリアを横目で見て、二人同時に溜め息を出してしまう。そんな気はしてた。そしてやっぱりそうだった。
「姫様!今我が国は姫様がいなくなってしまって大混乱です!なぜこのような場所に!」
和服の男性はこちらに走ってくるなりカリンの前で熱心に話し始めた。
「えーっと、カリンさん・・・この人知り合いですか?」
「知り合い・・・うむ、言い直すと部下。警邏の中でも直属の部隊にいた奴なのだが・・・まさか生きておったとは」
「そりゃあ当たり前でしょう!我が『神椥流』、主を守れずに死んでたまるものですか!政府が隠していた武器も切り伏せましたよ!」
政府が隠していた武器、ということは銃のことだろうか。
斬り伏せた、と言う表現、袴を穿いて腰によく見た刀を付けている。
言い表すならば、イメージ通りと言わんばかりの『侍』そのもの。
「さあ国に帰りましょう!政治が傾いている今、民衆はあなた様を求めています!」
「あー、そう腕を引っ張るな『ミズキ』、私はここが妙に居心地が良くってな」
「そんな!?一体こんな所の何が良いのですか!?」
「お主も食べたらわかる、カウンターで注文できる『きつねうどん』をな・・・」
あ、やっぱり狐ってお揚げが好きなんだな、とさりげなく理解。
「・・・どうしたらいいんだろうね・・・」
横から渋い顔で頭を掻きながら聞いてくる。
「ルリアさん、俺ルリアさんがそんな困り顔してるの初めて見ました」
「私もあまりしたことないよ・・・どうしよっか」
「こやつもここに入れてみてはどうじゃ?戦力としては優秀だぞ?」
「姫様そんなにここを離れたくないのですか!?」
うーん、としばしルリアが首を傾げる。
「・・・じゃあちょっと形式違うけど『いつもの』やろうか!」
「さすがに俺昨日やったから抽選対象じゃないですよね・・・?」
「そういうのないよ?」
「えっ」
「で、こうなったと。二日連続なんて聞いたことないわよ」
「俺もだよ・・・そんな入団試験なんて頻繁にやるものか?」
集められたアルゴノーツ総勢64名。昨日と同じく、地下食堂の中央のテーブルをどけてフィールドを作っている。
ブロンズハンマーをカウンター席の横に置いて、後ろを向いて眺めているわけだ。
「今回は特殊条件!挑戦者側はランダム抽選の3人と戦って2人に勝てば挑戦者側の勝利!それを阻止できればこっちの勝利!オッケー!?」
拡声器を持って叫ぶルリアに続く歓声。いつも通りの雰囲気だ。
「さーて、クジ引くよー!っせい!『66番』!」
「あっぶね、ギリギリだ・・・」
入団した順番から番号が振られていくらしい。俺の場合は『65』。
「・・・あれ?俺が65ってことは・・・」
「ほお、一回戦目から妾か。ふむ、腕が鳴る」
カウンター席の右端に座っていたカリンが椅子から立ち上がって、余裕の表情をしながらフィールドへ向かう。
「ルールは一発勝負、押し出し又はノックアウトの二つ!」
ルリアによるバトルルールの説明が入る。
「姫様・・・残念ながら、刀である以上手加減は出来ませんよ?」
「安心せいミズキ、私も手加減される気など毛頭ない」
「そうは言っても・・・紙である以上、刀は斬り易い故」
「・・・そこがダメなのじゃ。あの国は成長を知らんからな」
溜め息交じりに答えたカリンはくるりとカウンター側を向く。
「いいアイデアを貰ったのじゃ。のう、少年」
振り向いてドヤ顔で指を指すその先は_。
_間違ってなければ俺を指しているようなそんな気が。
「・・・え?俺?俺の武器スマホなのに?」
「その『すまほ』とやらがアイデアじゃ。あの国は成長を知らん。いや、知っているからこそ成長に染まるのが怖くて知らないふりをしておる」
前を向き直して、カリンは髪の毛を束ねていた簪を一本外す。
「生物として長く生きる術は・・・『学習すること』じゃ」
ニヤリと笑ったカリンは簪に魔力を一気に注入。
簪は魔力を帯び、そして先端に向かって薄いブレードを形成する。
水色の魔力は簪をオーラのように包み、溢れ出る魔力は先端から刃として放出されているのだろう。
それはまるで、少年たちが妄想として憧れる、かの有名な_。
「・・・ビームサーベル・・・!」
「さてミズキ、悪いが『私』も剣を持つのは久しぶりでな。手加減出来そうにない」
【いまさら解説】
ルリア(グロリアッサ・ルリア―ド:ギルドネーム無し)
属性:無 種族:純人間
筋力値 A+
体力値 B+
頭脳値 B
魔力値 C
度胸値 A
運命力 A
24歳、自衛ギルド『アルゴノーツ』発案者兼リーダー。
幼少期に亜人種に強い興味を持ち、そして自分のいる国の現実を目の当たりにした。
16歳の時に国外から来たジルオに出会い、それ以降に国に流れ着く亜人種を国に見つかる前に保護して自分が住んでいるアパートの廃墟に避難させた。
そして、ギルド『アルゴノーツ』を発足させ、どうにか味方を増やしながら王城に攻め入る時を窺っていた。
純人間なのに筋力が異常。相手が人型であれば正面から殴って吹き飛ばせるレベルの筋力。昔から(性格上)喧嘩が多く、その度に自分で撃退をしていたため利き手の皮膚は異様に硬い。筋力なので足の筋力も常人とかけ離れている。狼系亜人と競争して引き分けレベルに早い。
基本的には楽観的で騒がしい。真面目な時は任務の時とギルドに危機が迫ってる時くらい。
魔導書は愛用のバイク(らしきもの)に組み込んだ。その為魔法を使うには魔法が書かれた紙を毎回用意する必要あり。どうやって魔導書を組み込んだのかは不明。
以上の事からして、彼女の武器は『筋力』と『カリスマ性』。気に入らない奴は拳で鉄拳制裁、味方に出来そうな奴は説得してスカウト、というのが彼女のスタンス。
ここのコーナー需要ありそうですかね・・・?
皆さんも体調に気を付けてください。怠ると風邪の後に風邪という連鎖で2週間くらい動けなくなったりします(経験談)。




