#13 給料
ふと気になった事だ。別にそんな重大でもない。
皆さんは収集癖と言う物が存在するだろうか。
俺はするタイプ。使うわけでもないのに文房具とか欲しくなるタイプ。
「・・・自分の事だけどなんでそんなめんどくさい特性を・・・」
今は2週目の6時、現世なら朝の10時くらい。まあ、この世界だと2週目は24時間ずっと夜だから午前も午後も関係ないのだが。
今はギルドの場所から少し離れた路地にある古物商の店に来ている。
古めかしいものは需要は謎だが少しばかり欲を刺激してくるからつらい。
・・・ん?つい昨日のクジ引き戦はどうなったかって?
そりゃあ勿論負けましたよ。良く分からない白い紙の物量で何が何だか。
形式的には『式神』っぽくは見えたのだが・・・・・・。
「まずそもそも式神ってのがこの世界にあるのか分からないからな」
でも神様はいる。断言しよう。神はいる。となったら式神もいておかしくは無い。
九尾、それは妖怪の中でもトップクラスに強力で知名度が高い。
出てくる作品によってさまざまだが、大抵は変化か妖術のどちらか、または両方を極めてるパターンが多い。
昨日の人、カリンだっけか。あの人がどっち系統かは分からないが妖術を使うってのは分かった。とにかくフルボッコにされたけど。
「いやなんで描写も無しに負けてんだよ」とお思いでしょう。そりゃ驚きますよ。俺自身、燃えない紙なんて初めて見ましたよ。相手紙だしいけるかなーって思ってたら全然効かなくて。魔方陣出したらなんでか回り込まれていつの間にか負けていて。
まあ要するにアレですよ。「嫌なことは忘れるに限る」ってやつですよ。
「・・・言い訳もほどほどにするか。なんか言ってて悲しくなってきた」
そういえば、なんで古物商にいるのかなのだが・・・理由は一つ。
給料が出たのだ。
『あ、これ昨日の分の給料ね』
昨日の夜、体に纏わりついた紙を剥がしながらカウンター席に座った時に、隣にいたルリアから謎の封筒を渡されたのである。
『・・・給料?給料ってアレですか?金ですか?』
『そりゃもちろん金だよ?金以外の給料って何なのさ』
きょとんとした顔をしながらルリアが出してくる封筒を開いた口が塞がらないまま中身を確認。
金銭感覚がしっかりしていないので良く分からないが数字を見れば約4万。
これがどれくらいの価値なのか、よりも強い疑問が心に残っていた。
『ここのギルドって・・・給料出るんですか・・・!?』
『だってタダ働きは嫌でしょ?働いて貰った分ちゃんと払わなきゃ』
確かにそれはそうだが、と口から出そうになるがそれは押し込んで。
『俺、一日三食と衣食住揃っててその上給料出るんですか!?』
『あ、その分は一応引いてあるよ?さすがに食費は誤魔化しようがないし・・・』
今日の働きがどれくらいカウントされたのか分からないが時給いくらなんだろうと頭の片隅で考えようとする。でもこんな雰囲気なこともあってロクに頭が回らない。
『なあレイラ、これっていくらくらいなんだ・・・?』
『金銭感覚は他人に聞くんじゃなくて街を歩いて確かめるものよ?』
周囲にレイラ以外に聞けそうなまともな頭を持っている人は・・・いなさそうだ。
『マジ?・・・明日外歩いてみるか・・・』
そうして一眠りした後、街を歩いている時にこの古物屋が目に留まったわけだ。
金の単位は「E」と書いてある。読み方は良く分からないがそこかしこにある自販機は大体が「130E」くらい。1E=1円の認識でいいかもしれない。宴会時にグランツが言っていた「マルク」とは別単位の通貨なんだとか。
そう考えるといきなり4万は大金。学生生活では家が厳しかったせいでバイトもしていなかったので大金を持つことなど無く、こんな大金を所持したのが初めてなこともあって結構緊張している。
「・・・うん、やっぱり文字は読めねぇな」
結局文字は解読不可能。翻訳アプリのバージョンが上がれば自然と出来るようになるのだろうか。
「でもどんなものかはウィンドウで見えるから大体わかるな。・・・・・・効果は読めないけど」
効果が分からないので壺とかはマジで謎。見た目だけじゃ全然わからない物もある。
というかこういう壺とかってRPGとかで時々呪いがくっついてるやつだと思う。
迂闊に触ったらヤバいタイプ。装備から外せなくなりそう。
「でも俺の戦力的に火の玉だけってのも・・・なんか欲しいよな」
昨日わかった事。火の玉が効かない場合はお手上げなのだ。
格ゲーだと技が1つしかない感じ。それが防がれたら完全敗北。
「そうはなりたくないから何か欲しいんだけれど・・・」
「おや、そこの人。先ほどから何を探してるんだい?」
店主らしき老人が会計席から話しかけてきた。語りの遅さが老人らしい。
「何か武器になりそうなものを。魔法とか素材でもいいんですけれど・・・」
最悪素材でもいい。すっごい硬い石とかだったら写真化してぶつけるだけでかなりの威力のはずだ。
「ふーむ・・・・・・おお、じゃあそこの『星の欠片』とかどうだい?」
老人が指差したのは壁一面にあるショーウィンドウの一番右上にある石。
「文字通り星の欠片さ。素材は分からないがとにかく硬くてね」
「・・・・・・硬いんですか?」
「そうとも。何かの鉱石が混じってるんだろうね、金槌で叩くと綺麗な火花が散るのさ。それでも石は砕けない。どうやら普通の製錬ではダメみたいでね。素材だけでも使えるのならおススメさ。どうだい?」
ハッキリ言って需要は薄い。だけれども。
「鉱石に秘められてる謎の物質」というワクワク感には勝てなかった。
「買ってしまった・・・しかも結構重い・・・」
お値段だいたい25000E。RPG感覚だと「素材は序盤に手に入るのに終盤あたりじゃないと貰えない設計図を使うタイプの素材」っぽい。
「とりあえず帰って誰かに鑑定してもらおう。鍛冶だと・・・ジルオさんかな?」
「・・・・・・『星の欠片』?」
「らしいです」
ギルドの宿舎棟の反対側、名前は作業室。一階と二階を全部くり抜いて大きな工房にしているようだ。謎の機械も多く並んでいる。その中で金床の前に座っていたジルオに素材を見てもらうことにした。
全体的に黒くてきらきら光る岩石をジルオはとりあえず眺めてみる。
「古物商・・・ああ、あの爺さんか。あの爺さんボケてきてニセモノ売ることもあるから気を付けろよ」
まあ買っちゃった時点で遅いんだけどな、と笑いながらジルオは石を眺める。
「・・・しかし不思議だな。ニセモノ・・・っぽくはないぞ」
「ほんとですか!?」
頭に固定する小型タイプの顕微鏡を外して、素材の石を金床に置く。
「普通どんなものも物質が固まってできている。ただの岩なら中身はスカスカなはずなんだが・・・この岩、密度が濃すぎる。多分爺さんの言ってたことは本当かもな」
「と言うと?」
「多分爺さん自身もコレをどうにかできないか試したんだ。だが異様に硬すぎる。恐らくこれはどこかの星の岩の中に鉱石が散りばめられた状態でこの星に落ちてきたんだろう」
元から鉱石が金属で落ちてくるわけないしな、とジルオは追記する。
「だが落ちてくるときに問題があったんだろう。どういう原理かは知らないが大気を通過する熱で『中の鉱石は溶けてしまって外壁の岩と一体化してしまった』・・・ってのが仮説だな」
「一体化して完全に別の物に変わった・・・ですかね?」
「かもな。そもそも爺さんは『金槌で叩いたら火花が出た』って言ってるんだろ?」
「綺麗な火花が出るって言ってましたね」
「爺さんの腕力でただの岩を金槌で叩いたら火花が出るか?」
「・・・それもそうですね」
「とにかくこれは工夫が必要だろうな・・・普通に溶かすだけじゃダメそうだ」
「ジルオさんすっごい硬い金属って心当たりないんですか?」
「硬い鉱物の代表格はアダマンタイトとかだが・・・そもそも惑星外の岩石と惑星外の鉱石の混ぜ物だ。新素材なのかもしれん」
「へえー・・・・・・」
「この岩石借りてもいいか?少し調べたい。その間何かあったらコイツを使っていい」
どこにあったっけな、とジルオが取り出したのは銅色のハンマー。一つの傷も無く、錆も無い、綺麗な反射光沢がある。見ただけでわかる、間違いなく新品だ。
「とある魔術式を内部に組み込んだものだ。手元に魔力を込めれば発動する仕組みになってる。・・・あ、それ本当に使う場合があるならルリアに言えよ。アイツの依頼品だから」
「なんで他人の依頼品貸しちゃうんですか!?!?!?」
「まあそんな心配すんなって、ブッ壊れたら修理してやるから」
心配する場所はそこなのか。言おうとする前にジルオは岩石を眺め始めてしまった。
・・・傷がついても完全に復元できるってコピー能力か何か?
【いまさら解説】
朝夏日鮫(アサカヒサメ:ギルドネーム『デミドラ・ヒサメ』)
属性:火? 種族:雑竜種
筋力値 B-→B
体力値 B→B+
頭脳値 B-→B
魔力値 ?→B
度胸値 C→B-
運命力 A
(矢印は転生時の種族変更後の数値)
C-~A+とSの10段階、成長により変更あり。
16歳の(元)高校二年生。神のうっかりミスで死亡&転生により名も分からぬ異世界に転生することに。
黒い角と亜人種設定はスキンデザインの時に雰囲気で付けた。その為本人も竜の亜人種であることは分かっているが、翼竜なのか大型竜なのか、それとも火竜なのかは分かっていない。
現代科学の結晶とも言えるスマホを持つ。神曰く「魔導書の代わりになる」と言っているように、注ぎ込んだ魔力でアプリによってさまざまな魔法を発動することが出来る。
ちなみに異世界なので、電波やGPSがあるはずがない。本人は「それが無かったらスマホの意味あんのか」とすら思っている。
両方ともライトニングな雄端子の(何にも使えない)不思議なケーブルが存在する。何時渡されたのかは不明。ついでに、首元には謎の充電コードを刺せる穴が存在する。こちらも何に使うかは不明。




