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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 1.1 任務と狐と人狼《ルーガルー》
16/126

#12 新人

(人の顔面殴ってもあんまり手が痛くないのは亜人種補正なのかな・・・)

しみじみ思ってしまう。普通ならば何かを殴ったらその反動として自分の手も痛くなるはずだ。でも痛くない。皮膚の構造か材質が少しばかり変わったのだろうか?

「さて、どうしますかグランツさん?」

そんなことを思ってたらあっという間に囲まれて銃を向けられる始末。

「これ何人いるんですかね・・・?」

「音的に後続はいないっぽいが20人・・・めんどいな」

「勝手に巻き込まれた私の身にもなってくださいよー!」

少し気になったことがあるのでとりあえず手を上げてグランツに相談。

(グランツさん、相手の持ってるアレなんですか?)

(噂程度の情報しか持ってないが・・・魔力弾装填発射機構、通称『銃』と言う。魔力弾を標準を合わせて撃つために開発された武器だったはずだ)

(アレ中に入ってる魔力弾って何属性ですか?火だと一網打尽出来るんですけど)

(確か着火剤の意味も兼ねないといけないから今は火属性しかないはずだ。何か案が?)

(まあ見ていてくださいよ)

相談終了。一瞬で手を下して甚平のズボンのポケットに手を入れる。

相手が警戒してこちらに標準を合わせる前に魔方陣を取り出して魔力注入。

真正面から眼で捉えられないほどの速度で何かが飛んできたが魔方陣でブロック。

撃った兵士らしき男は少し驚いたような声を出したがその間に火の玉を取り出す。

とりあえず18人ということで3枚の写真に魔力注入。

「火属性だったのが運の尽きだな!『拡散』(スプレッド)!」

生み出した火の玉を一人一つで真正面から当てる。その結果_。

_いろいろ起こって部屋の中がカオス。

実は火属性の魔法(というか魔法道具)は別の火属性の魔法を受けると引火する。

命令していないタイミングで発動するのだ。・・・とルリアが言っていた。

そして火の玉を『銃』に当て、引火して誘爆を狙えないか、という結果。

どうやら残弾全てに引火したらしく、部屋全体が黒い煙で満たされていた。

火薬は使ってないのになぜ黒い煙が。黒色火薬でも中に入ってるのだろうか。窓ガラスが割れてる分、煙が晴れるのは案外早くて10秒ほどで視野が通った。

「うん、属性を利用するって大切っすね・・・あれ?俺仕留めたのは18人なんですけど・・・残りの2人は?」

「あ、私が落としました」

落としましたってどこへ、とルイラに聞きたいが大方予想は付いている。・・・帰る時にはここの下はあまり見ない方が良いかもしれない。

「・・・・・・どうするんですかこれ」

「・・・どうしたかったんだっけ」

「当初の目的とっくに破綻してるんだしこれでいいんじゃないですか?」

「う、うご・・・・・・侵入者め・・・!」

「「「あっ、生きてた」」」

重役らしい中年のおっさんが起き上がってきた。まさか生きてるとは。

「ならちょうどいいや。ルリアさん呼んでおこ」

「許さん・・・許さんぞ・・・!」

「うげっ、護身用にアゾット剣持ってるのかよ!?」

詳しくは分からないが多分アゾット剣。ここの世界でそう呼ぶのかは知らないが多分あってると思う。

「とりあえず早く・・・あっルリアさん?あっ」

電話が繋がるなりいきなり切れてしまった。そしておっさんを見たら頭に血が上って剣持ってこっちに一直線。

「足掻くのもいい加減に・・・」

「あ、グランツさんいいです。ルイラ、配置」

「了解でーす」

そして突っ込んでくるおっさんは_。

メキョッ(何かが折れる音)。

「「「あっ」」」

ワープ穴から出てきた一本の腕によって逆側に吹き飛ばされる。

突如何かがワープから現れて、顔面を強打してガラスまで吹き飛ばされたのだ。

いい加減ガラスのもう半分もヒビが入って割れそうである。

「いやー、なんかすごいことになってるねここ・・・任務は達成できて・・・あれ?」

「ルリアえげつねぇ・・・俺達でさえ鼻の頭はやらなかったのに・・・」

「なんで女性の正拳突き一本で鼻の骨折れるんですか・・・?」

「メキョッって音しましたよ、メキョッて・・・」

「えっ?何?さっきの人結構重鎮だった?」

「「「重鎮と言うかトップです」」」

「いやなんでその人殴ってるのさ!私もだけど!」

ごもっともな意見です。と頭を下げるほかあるまい。平謝りしかないのがもどかしくすら感じてくる。

「えーっと・・・・・・理由は?」

「そこの人がなんかあのおっさんに連れて行かれそうになってたんで個人的に邪魔したくて殴りました」

「俺も同じく」

「私は特に何も・・・」

「ほんとに理由なのそれ・・・?えと、そこの人・・・」

グランツが指を指している方向にルリアは振り向く。狐の人はいろいろ起こり過ぎて頭が追いつかなくて放心状態のようだ。

「・・・・・・何この人!?狐の亜人種?ねえ狐の亜人種!?」

「あー・・・うん、はい」

この人ならなぜか良く分からないが喜ぶだろうなと言う予感はしてた。

なにせ亜人種と呼ぶには少し形態が違いすぎる。率直に言うならば『妖怪』。

亜人種は何かの種族と人間の中間にいて初めて成立するものだが、妖怪はそうではない。初めから人型っぽいものや全然そうならないタイプもいるのだ。

そもそも狐の亜人種ならば尻尾は分裂しない。・・・多分。

「ところでなんでこの人気絶してるの?」

「一瞬でいろいろあったからじゃないですかね・・・」

「起きてー!起きてーっ!」

無駄にテンションが高いルリアが何回か頬を軽くはたく。

「はうぅあっ!?!?!?」

「あっ起きた!あなた名前は!?ここの人!?」

「ちょっとルリアさん落ち着きましょう!相手の思考が追いついてないです!」

どう見ても相手の頭の上に疑問符が浮かんでる感じ。

「あなたも亜人種なんでしょ?私はルリア、あなたは『何に悩んでた人?』」

情況を整理できたような顔を見るなら立ち上がって語る。

(・・・グランツさん、この質問何の意味があるんですか)

(意味しかないぞ。この人が勧誘するときはいつもこんな感じだ)

(・・・今更なんですけどグランツさんルリアさんよりも圧倒的に年上なのに従ってるんですか?)

(多分いつか分かるよ・・・そう遠くないうちにな・・・)

「あなたが貫きたかったことは何?あなたが守りたかったことは何?あなたが今までにしてきたことは何?そして『その意味は何?』」

「・・・意味?」

「そう、意味。生きるためにする行動は『生きるために』する。そんな感じに全ての事には全ての意味がある。あなたは今までどんな意味がある事をしてきた?」

狐の人は言葉に困っている。そりゃそうだ、聞いててもはや哲学というか心理学。

『人生に意味のないことは存在しない』。たとえ偶然が起きたとしてもそれは自分から見た偶然なだけであって、他人が引き起こした『必然』だ。

この人が今までの生涯で何を見てきて、何に蔑まれ、何を感じたかは本人以外は誰にもわからない。

「私は『亜人種の差別と偏見を止めようとした』。それだけ!」

「それだけなんですか!?」

「本当にそれだけだよ?昔から亜人種の伝記を読み漁って、16歳の時にジルオに出会って、それから8年間ずっとこんな感じ。ガキの頃から何も変わってないわ」

自分で言ってて恥ずかしいね、とルリアはケラケラ笑う。

「さっき殴り飛ばした人があなたを繋ぎとめていたのならいい加減自由になってもいいんじゃない?私はそう思うよ」

「え、えっと・・・お主たちは・・・」

「・・・・・・あれ?名乗ってないの?」

「どちらかと言うと敵側だったんでこの人。侵入者だって叫んでましたし」

「うーん、まあいっか!私たちは人種混合自衛ギルド『アルゴノーツ』、ここの隣の国から来たわ。差別とかで迫害される亜人種を探して集めてるギルドよ」

「集めてんのかよ」と心で思ったが、同時に「集めてなけりゃあんな場所に約60人も揃うわけないか」と自己解決。

「あなたがこの国に思い入れがあって出たくないのならそれでいいわ。でも、ウチに来てくれたら少なくとも退屈はしないと思うよ?人間の方が少ないし」

退屈させる気あったのかよ、とグランツが小声でボヤくのが聞こえた気がした。

「さーて、帰ろうか!多分あっちは祝勝会ムードだし」

「祝勝会ムードって・・・勝ったんですか!?あの短時間で!?あと任務良いんですか!?」

「だってすごそうな人さっき殴り飛ばしちゃったから・・・いいんじゃない?ルイラ、ワープよろしく!」

「じゃあ途中で帰ってよかったじゃないですか・・・じゃあ帰りますよー」

ルイラがボヤきながらアープ穴を展開、グランツを襟首を掴んで入れ込む。

「ほらヒッくんも入ってほらほら」

「うおっ掴むなやめろバランス崩すぁぁぁぁあああああああ!!!」


静かになった部屋は嵐が過ぎ去ったかの如く大荒れだ。

窓ガラスはほとんど割れ、そこかしこに火傷を負った男たちが転がっている。

「・・・さて、これで一対一だね。初めまして、『鏡の花』花鈴さん」

「!?何で私の名前を・・・」

「どこの国にも情報屋はいるもので。偵察から聞いてたんだ。『隣の国には国の決め事すら操る狐の花魁がいる』ってね」

噂程度に信じてたんだけど会ってみたらすんごい綺麗な人なのね、と続ける。

「別に強制はしないけどウチに来てほしいなって勧誘の為だけにここにいるんだけどね」

「・・・そこに行って一体何があるのだ?どうせ・・・」

「『お前も人間だからわからないだろう』とでも言いたそうだね」

一瞬背筋が凍るように感じた。見事に思ってたことを当てられてしまった。

「まあその通り、私はただの人間。両親は共に人間だし、育て屋が亜人種だったわけでもない。純正な人間よ」

「ならなぜ・・・」

「・・・少し私の話をするわね。私はなぜか知らないけど人間基準で力が強かったの。理由は不明。でも確かに人間として見るには強力過ぎる筋力がある。当時は同い年の子たちから『化物』って言われていじめられたわ」

子供にとって自分より強いものは『ヒーロー』となるが強すぎるものは『化物』と認識する。自分自身がその脅威に脅かされるようになるからだろう。

「そんな時に私に話しかけてくれた人がいたの。随分と年を取っていたけれど優しくて、話を聞いてくれる静かなおじいちゃんだったわ」

「それが一体・・・」

「・・・それから2年後くらいの時に、同い年の子が私を亜人種呼ばわりし始めたの。確かに人間として呼ぶにはおかしかった。私のいた国は亜人種を徹底的に差別する国だったわ」

その国にその老人はいるだけで差別の対象になっていたのだ。本来いるべきでない場所に何故いるのか。理由など知る由も無い。

「そのおじいちゃんは私を庇って私の身の潔白を証明するために王城に連れて行かれたわ」

「・・・そんなことが・・・」

「そうして私は生きている。私を亜人種呼ばわりした同級生を顔から殴って噴き出した返り血を浴びようとも私は生きている。結局差別なんてそんなものよ」

「・・・・・・」

「まあそんなことどうでもいいんだけどね!」

「!?」

突然のアップテンションに驚きを隠しきれない。今の重たい話はどこへ。

「その国は作りかえられたわ。なんたって昨日私たちのギルドが夜襲を仕掛けてボッコボコにしてきたからね!」

「昨日!?随分タイムリーな・・・」

「ウチのギルドはそんなとこよ。何があろうとも結局は『自衛』。動きたいように動いて、悪だと思ったことは徹底的に叩きのめす。差別なんて言語道断よ」

ドワーフとかウェアウルフとかいるし賑やかよ!と楽しそうに語る。

「だからあなたには入ってほしいの。『入りたいか』じゃなくて『入ってほしい』。きっとあなたのポテンシャルは活かせる場所があるわ。こばんだりはしない。追い出しもしない。同じ時を共にする同じ志の仲間。素敵でしょ?」

「・・・・・・仲間・・・」

「さて、そろそろ行くとするわ。それじゃあ最後に。どう?来てみない?」


「うえ・・・酔う・・・絶対酔った・・・」

ワープホールに変な体勢で入るのはやめておけ。三半規管がグチャグチャになる。

「上手くバランスとらないからですよ・・・」

「急に押し込まれてバランスもクソもねーだろ!見ろグランツさんを!真っ先にトイレに行ったぞ!」

この祝勝会ムードで視界が不安定なのは結構つらいものがある。

とりあえず頭がフラフラするがカウンター席に座る。

「あら、今日は随分と活躍したらしいじゃない」

「あぁレイラ。・・・ハッキリ言って国の中かき回して帰って来ただけだけどな」

「いいじゃない。こっちなんか鎧着た兵士の大群相手に魔力大放出よ」

魔力切れでブッ倒れるかと思った、とレイラは続ける。

「こっちはこっちで落下死するかと思ったんだぞ・・・ΣAXくれ、オレンジのやつで」

「あなたフルーティーなの好きなのね。はい」

ジョッキで出てくるのも二回目だと驚きは少ない。・・・飲み切れるかは分からないが。

「んっ・・・あああああぁぁぁぁぁ^~この炭酸だよ、これが疲れた体に・・・」

「・・・ねえ、あの人もしかして新入り?」

レイラが酒を飲みながら指を指す先には_。

「・・・あっ!?あの人今日の!?ルリアさん連れてきたのか!?」

「いや新人は別にいいんだけど・・・めんどくさいわよ?」

「めんどくさいって何が?自己紹介とか?」

「いや、あなたもやったでしょ?」

何かやったっけ、と少しばかり頭の中で回想。

そして思い当たるのことはすぐに出てきた。・・・もしかして。

「よっしゃ一名様御新規で~~~~す!!!!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「よしきた出番じゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「・・・・・・ね?めんどくさいって言ったでしょ?」

「・・・そう言えば俺もやったわ・・・つい先日だけど忘れてた・・・」

「これって対戦相手はクジで選ばれるのよね~私当たらないといいんだけど・・・」

「酒飲んだ状態とか結構ハンデなんじゃ・・・まあいっか」

後ろでクジを引く音を適当に聞き流しながらΣAXを喉に流し込む。

「・・・まあ、なんだかんだで平和だよな」

「あら、私が知る限りだと随分昔からこんな感じらしいわよ?」

「マジか・・・・・・今日は疲れたし早めに寝るかな・・・」

「65番!『デミドラ・ヒサメ』!どこ行った~!?」

「えっ」

「・・・・・・あなたもしかして不運なの?」

「・・・雷に直撃するくらいには」

どうやら今日はそう簡単には寝させてくれないらしい。

【PV400&ユニーク200人突破】

ほんわか伸びてます。理由は良く分かりませんが感謝でいっぱいです。

10/29の午後7時に妙に伸びていたのですが何があったんでしょうね・・・。

とにかく嬉しいです。私事の方で生活が苦しくなってますが頑張って行きます。




昔書いたオリジナルのものがアクセス数6だったのが懐かしいです。ここまで伸びたのも二番煎じの影響でしょうか・・・

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