↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 2.2 席と勲章と統合協議《グランド・レファー》
122/126

#118 第七試合

「ここにいれば次の相手が自然とやってくるだろう、しかしそれまで暇だな。ふむ―――ん?」

地に胡坐をかいて座るヴリトラはポケットに入っているスマホが再び揺れていることに気づく。聞いてみればここまで頻繁に揺れるものではないらしい。

『ルリアさんだな。暴走したんじゃないかって疑い絶対かかってるぞ』

「お前さんには前科があるからな」

脳内で言い訳をするように騒ぐヒサメを無視したまま応答と書かれた緑のボタンをタップ。

『そっち大丈夫!?えと―――一応聞くけどどちら様?』

「理解が早い。我が名はヴリトラ、次の試合のみという限定的な条件でこの身を借りている」

『…………知性がある!?』

「失敬な、元から存在しておる」

どうにもこの世界の人間は龍種の移植を信じられないほど高次元で禁忌の存在だと思い込んでいる節がある。実のところそこらの犬の雑種を捕まえて遺伝子解析、結合をするとの難易度に大差はない。

前例が無かったのは龍だからであろう。プライドの塊で闘争心と三大欲求しか残っていないあの獣を捕まえて人間と混ぜようなど並大抵の頭では思いつかないからだ。

「聞きたい話があれば適当に答えてやろう。次の試合が始まるまでだが」

『えっ、いいの!?あっ、待って、どうしよ聞きたいことって何があったっけあわわわ……』

端末越しに聞こえる女の声は切り替えが激しい。やる気のある時とない時で別人に思えてしまうほどだ。

『いろいろ後で聞きたいけど一つだけ!あなたは何に倒されたの?』

「一般歴史学で学ばなかったか、我ら龍種は神との争いに敗れた。我はその端くれだ」

『その歴史合ってるの!?ちょ、ちょっとこれは大発見かも……ひとまず、今は暴走しないと考えていいの?』

「もし暴走すればまた止めに来ればいいだろう。但し、この肉体は魔力・筋力共に以前の暴走より幾倍にも強化されている。備えておけ」

そう言い残して電話を切る。あの女がなぜ一番最初に歴史を聞いたのかは分からないが、あの者はおそらく戦いだけでなく学問や冒険など複数の楽しみを所持している。自らの知識を満たそうとするその心、龍の群れで持つ物は一匹たりともいなかった。とても興味深い。

『……なあ、もしかして本当に暴走するのか?』

「そんなわけが無かろう、無理に大魔法を使うならば話は別だが」

主が恐れているのは暴走した場合の肉体の長期活動停止の事だろう。あれは適性のない者に無理に力を流し込んだ代償のようなもの、もう起こることはあるまい。

「……さて、そろそろ来るか。壁越しにも分かる魔力のうねりが」

流天の魔眼は反対側の扉の先を指していた。流れる水のように滑らかで、濁流のような力強さが魔力の流れで見える。水属性の使い手、実力はかなりのものと見て取れる。

ゆっくりと扉が開き、最後の一人が決戦の地にやってくる。地毛なのか知らないがなんとも身体に悪そうな青色の髪、確か第四席の下町の賞金稼ぎであったか。

「こいつは驚いた、まさか本当に竜の力が使えるとはな。勝つためならば悪に染まることもお構いなしか」

『キールさんか、前から思ってたけどこの人感じ悪いよなー……常に皮肉を仕込んでるっていうか……ヴリトラ?』

なるほど、コイツは面白い。少しばかり会話を挟んでも良いだろう。

「ほう、悪に染まる、か。面白いな、なぜ貴様は『自分が正義だと断言できる』?」

「……なんだと?」

幼き者の間違いは年長者が正しく訂正してやらねばならん。その間違った常識をそのままにしてこの先恥をかかないためだ、何も間違ったことはしていない。

「正義と悪は視点の違いだ。戦争も語る視点で扱いが変わる、正義も悪もさして大差はない。勝った者が正義、負けた者が悪。そうだろう、敗戦国の貧乏人」

その一言でキールの表情から油断のようなものが消えた。

『敗戦国?あー……元ウェルギスの人って階級的には下なんだっけ、だから下町にいるのか』

(そういう事だ、育ちの関係で少々ひねくれた精神を持っているように見えたのでつついてやったが大当たりだ)

「……下町にいるのは俺の意思だ。実力で上下関係が構築される社会、素晴らしいじゃないか。お前もそう思うだろう、争いを生とした種族よ」

「我か?我は戦いは好まないが」

『えっ』

「は?」

その一瞬、映像中継本部や席次持ち特等席はおろか、国全体が静まり返った瞬間だった。

「…………は?」

「我は争いは好まん、そもそも無駄だろう」

キールは国全体が震える驚きの発言に表情筋が痙攣していた。それもそうだ、血と肉塊で着色されたような龍種の歴史を考えれば、争いを好まない龍がいるというのは天変地異レベルで不可思議なこと。

「我は黒龍の末裔、一族で最も高貴かつ叡智を宿すもの。そもそもそこの青髪ノッポ、なぜ龍種が滅んだかお前さんは知っているか」

「……聖戦に負けた、んじゃないのか?」

「その通りだ、数千年前の神との戦い、聖戦で竜種は敗れた。なぜ敗れたか?それはあの種族がプライドの塊だからだ」

今思い出しても溜め息が出る。実力差を理解し最適な行動をする、生存のための最も必要なことををあの種族は理解していなかった。

「しょうもないことで争いを生み、その果てに滅ぶのならば戦いなどしなければいい。その考えをあの一族は持っていなかった、故に滅んだ」

「……正直拍子抜けだ。竜種の亜人、しかもかの大戦の叙勲者だと聞いていたがこんなものだったとはな」

「ああ、それに関しては安心しろ。我は争いは好まないが―――」

頭部の角がパキパキと割れる音を立てながら魔力がゆっくりと溢れ出す。その魔力は首や肩、腕を通して背中に集中していき―――。

「―――『捕食』は大好物だ」

瞬間、黒色火薬の爆発にも引けを取らない魔力粉塵の炎が柱のように爆発しながら舞い上がる。黒い炎は紫色の塵を巻き上げながら周囲を火の粉のように飛び回り、映像中継本部に設置された魔力検出計はメーターを振り切って戻らなくなった。

「条件変更だ、主よ。力の上限を五厘から一分まで引き上げるぞ」

『はいはい、大して変わってねえけどな……』


第七試合

ギルド無所属:冷徹の蒼「キール」

対

ギルド『西』:邪竜「ヴリトラ=ヒサメ」

五厘は0.5%、一分は1%です。つまりヴリトラは結局のところ全力出す気は全くないってことですね。


キールは純粋な水魔法の使い手という設定ですが、属性魔法の純粋な使い手はここまでやってきて二人目(一人目はレイラ)。ネタ的には書きやすいはずなんですが、その分キャラに困るというのが本音です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。