#106 集結
虚無。
心は無に至れるのだと自分自身で実感する時が来るとは。
「……………………」
「……ヒっくん、生きてます?」
「死にたい」
「いや、ちょっと前にカッコよく『死なないって言ってたじゃないですか……」
現在は午後の部が始まってから十分経過。控え室のような場所でプログラムのような謎の予定表を渡されて放心状態になっているところだ。
まさか、まさかだとは思っていた、いや、全員じゃないだけマシなのかもしれないがさすがに無理がある。
「…………なんで俺、七回も出番があるの?」
「人気ですね」
「どう考えてもちげーだろ!新参者でデカい面してる奴を徹底的にぶっ叩きたいだけだろこの人たち!なんで俺はマジヤバな人たちと七番勝負しなきゃならないんだよ!!!」
お見事だと笑いたくなるくらいにプログラムには同じ名前が七つ連続で縦に並べられている、これがおそらく俺の名前なのだろう。できれば俺はそう思いたくないのだが既に何名かに聞いて確証を得ている、逃げ場はない。
「どうして俺はこう……こう、なんだ……もういいや……」
「言葉になってませんよ、ヒっくん」
言葉にならないのも当たり前だ。戦闘という感じに文字を脳から完全に排除して脳内お花畑に生きてる俺に、そんな苦行を七回も押し付けるとは。
……実際は、戦闘は全てヴリトラに押し付ければいい、とも考えているのだが……問題はルールの最後の方にあった項目。『相手を殺した場合は負け』。
常識的に考えて、破滅を司る邪竜様が殺さない戦い方なんてあるわけが無かろう。
『愚問だな、生き血を啜るまでが戦いだ』
ほら、俺の心の声を聴いて見事に殺す気全開でいらっしゃる。こんなものを全国中継で堂々と見せられるわけがない。
『だが、それをしてしまえばお前さんはこの環境で生きてはいけなくなるだろう。我は有象無象の雑魚と違って後先を考えることが出来る。一度くらいは欲を抑えよう』
(……え、マジで?)
『だが一度きりだ。それ以上は本能に抗えなくなるぞ』
どうにかなったのは一枠のみか。後はどうするか、と言われてもそこまで俺の体が人の形をしていれば良い気がしてくる。
「……そういえば、代理システムは使わないんですか?」
ルイラの一言で俺の頭は絵本の背景のごとく単細胞化。開いたまま閉じなくなった口を顎を叩き込むように戻してようやくその概念に気が付く。そうだ、そんなものが説明時にあった。
「アレって何人分まで代理可能なんだ?」
「四半数切り上げだから……七人中五人は代理できますよ」
「よっしゃそれだ!!!もうそれに賭けるぞ!!!!!」
「えぇっ!?ちょ、ちょっと待ってください!それで代理の人が負けちゃったらヒっくんの負けになるんですよ!?」
「それでもいいよ!俺は!死にたくねぇ!!!」
今の一瞬でルイラの目がゴミを見るような目になった気がするけど今は放置だ。五人分代理ができる、つまり五人探せばよい。あのギルドで強そうな五人を呼ぶことなら―――。
「……ヒサメさん、なんでそんな慌ててるんですか?」
座っていた腰掛の近くにある窓から、なぜかシャルが顔を覗かせていた。
「うおおぉっ!?!?……シャル?どうしてここに……」
「くじ引きで選ばれたので」
「くじ引き?…………まさか」
即座に電話を起動して麗羅に電話。あらかじめ予測してあったかの如く一コールでつながる。
「おいレイラ!!!」
「代理用の五人は既にそっちに行ってるわよ。それじゃ」
ブチン、と有無を言わさずそのまま切れてしまった。
いろいろ申したいことはあるが、まあそれはそれで。この場合だったら「なんで五人呼ぼうとしてること知ってんだ」とか「メンバーをくじで決めてんだ」とか言うべきなのだろうが、これも一種の優しさ……いや、なんか他人をぞんざいにしてる感じが腹立つな。
「で、あと四人は?」
「くじで選ばれたにしてはかなり強者ぞろいになってますよ!」
「おいシャル、なんで俺はギルドメンバーじゃねえのにあのくじに番号入ってるんだよ」
「僕が入れましたから」
割りとまんざらでもない顔してミズキが窓から顔を出した。
「どうでもいいけどお前らここ何階だと思ってんだよ……よじ登ってこれる高さじゃなくないか?」
「ブロックの隙間に指引っ掛けたら上ってこれましたよ」
「魔力で張り付くことを覚えた」
うーん、やっぱり常識って通用しないんだなぁ。なんでそんなス〇イダーマンみたいなことを楽々とできるのかよく分からないのだが来てくれただけありがたい。
「最初から地面に足をつけなければよいだけのことではないか」
「そうですよねー」
「魔力で空くらい飛べばいい」
ぞろぞろと窓から侵入する見慣れた面子。というか、ギルドは本当に俺が支援要請すると踏んであらかじめくじ回してたんだな。実力と行動を理解されているのは一種の信頼のようなものだからそれはそれで嬉しい……と自分に言い聞かせる。
「そんなわけで、ギルドナンバー77シャムシール、代理人として選ばれました」
「同じく仮定68番、ミズキ」
「同じく66番、カリンじゃ」
「29番イザベラ・アルデルツ。作業途中でしたけど来ました」
「1番代理、ルイエ・アンシェリアだ。席次持ちは代理として出れないそうなので代理の代理が私だ」
……本当に抽選してるのだろうか?一体どんなくじ運を使ったらここまで好戦的なチームが組めるというのか。
「この中だとシャルが一番落ち着いてそうだな……」
「任せてください!開発中の奴いくつか持ってきたんで試験運用ついでにボッコボコにしてやりますよ!」
失敬、落ち着いた奴なんていなかった。どいつもこいつもオラわくわくすっぞタイプの戦闘狂、ここは島津か?
「じゃあ誰がどこ出るかだな。俺一番強い奴と当たりたいんだけど」
「僕は最初でいいですよ」
「いや、シャルの銃火器系はこの刀の人はキツイんじゃないですか?」
「そうだな、この、この……アロエみたいな頭してる人でいいんじゃないか」
「あ、ルイエもやっぱり思ってました?」
「ミズキはこの第六席と当たれ。雷属性同士、腕を競ってこい」
「えー……まあこれはこれで面白そう。じゃあそれで」
「じゃあ私が第七席の人当たりますね。鉄糸の騎士って気になります」
「私は早く帰りたい、最初に出させてもらう」
「なら妾が余った第八席じゃな。少々不本意だが別によかろう」
「……あの、全員決まりました?」
「「「ヒサメが最後二人だな」」」「「ですね」」
なるべく強い人と当たりたくない、そう考えていた俺の頭の中は叶うことのない理想が砕ける音とともにアメリカ映画のごとく爆発した。
第一試合
ギルド無所属:絢爛の刀使「ハヅキ」
対
ギルド無所属:亡家の叡眼「ルイエ・アンシェリア」(代理:アサカヒサメ)
なかなか悪意の高いメンバー抽選だと思います。ルイラとルリアは席次の関係で代理参加不可能、レイラはは特殊事情の為に抜いた状態でいつもの回転式抽選機を回したと思ってください。
ここから戦闘描写の連続になるんですが、まぁなんともめんどくさいことこの上ない。ひねくれてるキャラばっかりな関係上描写がカオスになることは否めません。
初戦闘描写の人もいるし、まあ悪くはないんじゃないかなとは思います。面倒なのは本当だけど。
この間、ノベルゲーで泣きました。まさかゲームで泣くとは俺自身思ってもいなかったです、詳細は次とかそこらへんで。
今じゃ少なくなったけどノベルゲームはもっと増えてもいいと思います。あと月姫は、あの、リメイクまだですか?




